2022年もBackyard ultra が全国各地で開催されましたね。
昨年三瓶大会に出場した私アフターサウナ前田ですが、今年も同じ会場でリベンジするべく出場しました。
昨年とは全く違う景色の発見。学びの連続。
ウルトラランナーとの異種格闘技戦の白熱っぷり。
サポートのありがたみ…
限界は何度でも超えられるもの…
55時間もの間Lapを刻み続け、LastSamuraiとなることができました。
最後の一人になれたことで気付けたこと、そしてこの競技の奥深さをたくさんの人に知ってもらいたいと思いブログを書きました。
競技時間の長さ、走行距離から過酷なイメージを持たれているかもしれませんが、こんなに人との繋がりを感じられるレースを僕は知りません。
この記事を見てひとりでも多くの人がこの競技に興味を持っていただけたら嬉しいです。
目次
Backyard ultraとは?
昨年参加した際に寄稿したブログがあるので詳しくは以下のリンクをご覧ください。
詳細なルールと、前回どのようにしてレースに臨んだのかが書かれています。
こちらを読んでからの方がより今年の成長が見て取れるかと思いますし、Backyard ultraのコツみたいなものが見えてくるかと。
一応ものすごく簡単にルールを説明すると…
①1時間の間に約6.7㎞の指定されたコースを走る ②走り終えたあとの時間は自由に使ってよい ③1時間に1度必ずスタートを切る ④時間内に走り切れない、もしくはスタートできなかった時点でDNF ⑤これを最後の一人になるまで続ける
言わばサバイバルレースですね。
ちなみにサポートを2名までつけることができます。
前回筆者はノンサポートで参加しましたが、今年は2人の方にお願いしてサポートしてもらいました。
いつ終わるか分からない長丁場…本当に感謝感謝です😢
レースの詳細は公式サイトをご確認ください♪
Backyard Ultra Last Samurai Standing公式サイト: https://backyardultra.jp/
コースについて
日本で行われているBackyardultraは、現時点で7会場。
今回は6会場(北海道、福島、東京、群馬、京都、島根)と別日程で熊本で開催されています。
参加する会場を選ぶ際に、自宅からの近さもそうですが、コースも重要な要素の一つ。
三瓶会場はクロカンコースを使ったオール芝生のコース。
アップダウンは大きなところで2回、細かな個所は何カ所もあります。
ウルトラランナーと走っていて感じたのは、トレイルランナーよりも走る箇所が多いこと。
代わりにトレイルランナーは歩きが速い、という印象でした。
手元の時計で1周当たりの累積が120m程度。地味に登っていますね。
ただ嫌な登りではなく、つづらになっていて通常走る分にはかなりイージーなコースです。(元気であればの話ですがw)
コースの全体像はこちら。
コースの眺め、朝日や夕日から感じられる爽快感、エモさは随一。
これだけでも三瓶会場を選ぶ価値ありです。
個人的にはトレイルランナー向けのコース設定なんじゃないかなと思っています。
向き不向きはありますが、少なくともアスファルトの突き上げで嫌になることは絶対にありませんし、
日頃から不整地ランを習慣としている方であれば、三瓶がおススメです。
ただ純粋な難易度で言えば舗装路よりも高いとのこと。
これはサテライト大会で群馬会場を走った田中さん曰くになりますが、同じ出力でも三瓶だと3~5分遅くなるとのことでした。
ロードを得意とするか否かもありますが、判断材料にはなるかと思います。
今後参加を検討される際は参考までに(^^♪
STRAVAの履歴はこちらから確認できます♪:backyard ultra三瓶大会 | ランニング | Strava
レースの雑感
レースの振り返りですが時系列ごとに感じたことを書き連ねていきます。
個人の主観が大きく含まれます。
ここに関しては共感できないと思う方も多いでしょうが、あくまでも様々な選手がどこかでこういった状況に直面しているんだというぐらいに考えてください。
筆者の場合は限界が顔をのぞかせた瞬間が1度、いや2度ありました。
どのようにして乗り越えたのか。それは各自やり方は違うと思いますが、筆者なりの考えをまとめてみました。
スタート~24時間
まずは最初の24時間で区切ってみます。
24時間の理由は、ここで100mileを迎える事。そして多くの選手にとって一つの区切りになるからです。
筆者は去年の反省から、ここからがスタートと決めて参加していました。
最初の24時間はアップ。25時間目が1周目。
体の感覚的には走っていても足は置いているだけで筋肉を使わない。
特に登りでパワーを使うことを極端に嫌いながら走ったり、歩いたりしていました。
1周を47分~50分程度のペースで回していました。
おかげで足のだるさはあるものの、ほぼノーダメージ。
去年はこの時点で足首が壊れていたので大きな成長です。
逆に出力が弱すぎて一晩目から睡魔が酷く、眠さがずっとついて回る結果に。
カフェイン抜きをしていたのでレッドブルや、カフェインピルが効くかなと思ったのですが、全く効果なしw
ここは気合で乗り切りましたが、かなり不安を感じたことを覚えています。
周りの選手はやはり少なからず何かしらのアクシデントを抱えながら走っている様子でした。
24時間という節目を迎えるために必死に走る。
ランナー同士でそれを引っ張り支えていく。
運営側、サポートからの応援が個人ではなく全ランナーに変わっていく感覚が心地よかったですね。
25時間~41時間
24時間を終えて区切りだからと辞める方もいれば、限界を迎えて力を使い果たして辞める方も。
この辺りから一気に脱落者が増えます。
20名でスタートしたレースが、気が付けば30時間を超えた時には7名に。
このあたりで筆者も全身に疲労感を感じるように。
ただ脚はまだまだ残していました。どうにもならないのが眠気。
35時間ぐらいから前のランナーのお尻につく事しかできなくなっており、とにかく眠い。
歩きのポイントがあれば寝ながら登る。それ以外は意識が飛んで少し離され、ダッシュで追いつくというのを繰り返していました。
眠さのピークは39周目。最後の下りであまりの眠さにめまいと、吐き気。一瞬止まってしまう。
なんとか周回を終えるもデポジットエリアでは寝られず。
ギリギリのまま次の周回へ。
このときサポートに、帰ってこれないかもしれません、と弱音を吐いたことは覚えているのですが、やめようとは思っていなった。気持ちは切れていなかったんですね。
結果的には40周目で前のランナーに仕掛けられ、大きく間をあけられた時我に返る瞬間がありました。
トリガーはただの負けず嫌いだと思います。(まだまだ青いなと反省してます…)
この先の事を考えて温存して、この周回を完遂できないなんてダサすぎる。
脚が終わってもいいから、出し切ろう。負けたくない。
そう思ってスピードを一気に上げました。
手元の時計で平地は5’00/km程度のスピード。これまでBackyardultraでは出したことのないスピードです。
結果的にこの周回は40分で帰ってくることに。
おかげで全身ホカホカに温まり、心地よい疲労感に…
補給は一切取らず、即ベッドへ!
ここで今回初めて寝落ちすることに成功。たかだか10分程度の睡眠でしたが、めちゃくちゃスッキリ!
加えて血流が良くなったおかげか脚の疲労も全く感じない状態に。
「これが真のエンペラータイムか…」
しょうもないことを考える余裕も出てきて、笑顔で次の周回をスタート。
ペースは落ち着かせつつも、走れる喜びを感じながらジョギング気分。
本当に1周目に戻ったんじゃないかというぐらい脚の疲労感が皆無でした。
これが一回目の限界を超えた瞬間。
42時間~55時間
42時間目に入り、ウルトラ界隈の強者、黒木さんが脱落。
足抜けによる脱落ということで最後までご一緒できなかったのが残念でならない。
ということで昨年と同じ顔合わせに。筆者と、サテライト大会で52時間という記録を出された田中さんとの一騎打ち。
去年は二人きりになって、早々に筆者の心が折れたことによる幕引き。
今回は状況が全く違うとはいえ、田中さんの底知れなさに怯えてDNFというのは無しと決めていました。
レースに絶対はない。どんなに元気な選手でも、急に落ち込む瞬間があります。(自身含めてw)
どの選手もそんな浮き沈みを経験しているはず。だから耐えていればいつか勝ち筋が見えてくるだろうと思っていました。
実際の所、田中さんの強さは本物で、二人きりになってから当分の間全く終わる気配がなかったですw
48時間、200mileが近づいてきたときに、群馬大会がダブルノックアウトで終了し、残るは我々だけだと知ります。
こっちはこっちで終わる気配なし。雰囲気的にこっちもダブルノックアウトになるんじゃ…
そんな話も出ましたが、2024年のサテライト大会への出場権が確実ではないということをRDから聞いたのが47周目終了直後。
48周目は二人でお通夜のような雰囲気で走り始めました。
サテライト出場権が確実ならやめても良かった。これは本心です。
田中さんに勝ちたいという気持ちではなく、サテライトを一緒に戦えるのならそれが一番楽しそうだから。
しかし、代表選手の選考条件上ここでダブルノックアウトとなると、可能性は高いものの運に身を任せることに。
お互い自分たちのやってきたことに嘘は付けないですし、相手のこともリスペクトしているからこそ、白黒はっきりつけようと前を向けました。
結果的にこの判断をして良かった思っています。
自分が勝ったからではなく、田中さんと一緒に周回数を伸ばそうと決めて進んだことで、
意図せずBig Dogs(アメリカで行われる世界個人選手権)の選抜基準を二人とも満たすことができたためです。
余談ですがレースの創始者”ラズ”が我々のLapを見て、
「二人はライバルではなくチームメイトだ!」とSNSで発言していたようで、
よくそこまで見抜いたなと感心しましたw
49周目以降、田中さんと互いを引っ張りながら60時間を目指しました。
1時間の長さは決して変わることがないはずですが、徐々に圧縮された時間感覚に。
二人でどこまでも走っていけそうな、そんな感覚。
痛み、眠さ、倦怠感、疲労感、どれも心地よく、愛おしい…
けれどそんな時間は長くは続きません。
最初の変化は僕の方で、眠気からくる幻覚が頻発。
田中さんと目を見て話しているのに、会話の内容を一つも覚えていない…
またしてもふらつき始め、これはまずいと思い田中さんには申し訳ないけれどペースを上げさせてもらって、
先に行かせてもらい睡眠をとることに。
これが2時間続きました。あまりの睡魔に途中平地でも歩きかける始末。
なんとか意識を保ちつつ周回を終え睡眠をとるとまたしても復活。
これが2回目の限界を超えた瞬間でした。
田中さんからみると筆者の行動はだいぶヤバかったかと…
奇声は上げる、蛇行走行、急に泣きそうになる、正気ではないですね…
ただ個人的な感覚ですが感情は押し殺して隠すよりも、前面に出したほうがスッキリします。
ダサくても、気持ち悪くても、これまでかけてきた時間、努力に嘘をつくよりはマシですから。
感情の制御を放棄したことで気持ちと走りに余裕ができた感覚はありました。
やり方は人それぞれですが参考までに。
そして54周目。筆者も田中さんもペースが上がらずゆっくりペースで走っていました。
半分手前で25分。このままだとギリギリのペース…
田中さんにここからは自分が引っ張るから、ついてきて欲しいと伝えて、ペースアップ。
二人でこの周回も50分前後で終えられそうだと確信した時に、田中さんから先に行って欲しいと申し出が。
一緒に行こうと打診するも、拒まれるので先に行かせてもらうことに。
そして周回を終え、休んでいると田中さんからDNFの申し出が。
「勝てる気がしない」
去年、筆者が田中さんに感じた畏敬の念。
光栄だったし、嬉しかった。しかし手放しで喜べない。
言葉が出てこなくて、抱擁して想いを伝えました。
喜びも束の間、最終ラップを走り切ってようやくLastSamuraiになれます。
田中さんもまだ走ろうと思えば何周かは走れたはず。
それを諦めさせた男の走りは偉大でなければいけないと、奮起します。
そして最後の1周でこのレースは心のコントロールが肝だな再認識。
360㎞走ってきた体が不思議と軽い。終わりが見えると人は元気になれますw
最後は最速ラップの35分でフィニッシュ。
54時間35分18秒 368㎞のレースが幕を閉じました。
サポート内容について
ここでは今年サポートを受けてありがたみを感じたことを記載します。
先に申し上げておきますが、筆者は胃腸が強くこれまでにトラブルになったことがないの、胃腸トラブル関係のサポート情報は期待できませんのご了承ください…
選手のサポートで何をすればよいか分からないという声も聞きますので、これらの内容をもとに選手と打合せするとやるべき内容が明確になるかと☺
マッサージ
今回24時間までほぼ疲労もなく走れたのは間違いなくマッサージのおかげです。
ゆっくりペースでも足のだるさはどこかしらに出てくるはずですが、こまめにマッサージガン等で疲労感を散らしてくれたおかげでフレッシュな状態を維持できました。
食事の準備
時間短縮で言えばこれが一番ありがたいですね。温かいものを帰ってすぐ食べられますし、自分で考えて手配する必要がないというのは本当に助かりました。
出発前に次帰ってきたらこれを食べる、など伝えておいて準備してもらっていました。
後半は何を食べたいか思考することも怪しくなってきますw
その際は食べたくないモノだけ聞いて、用意してあげると選手は喜ぶかと(^^♪
睡眠から起こす
一番重要かもしれません(笑)
筆者は3分前の笛で起こしてもらっていました。
スタートを寝過ごしたら終わりですからね…
一人の場合スマホのアラームなどを使うのですが熟睡は難しくなります…
装備の準備・着替えの補助
レース中は気温の変化や、夜間のライト準備など、装備を細かく変更する必要があります。
サポートの方に次の周回からライトを使うから準備をしといて、充電しておいて、など一言で済むのは気が楽ですね。
疲れてくるとちょっとした動作も億劫になるので、それらを頭から離しておけるのはありがたいです。
もちろんこれ以外にサポートの方は選手が帰ってくるまでに様々な準備、気遣いをされています。
直接的に選手と関わる部分では上記のような内容ですが、選手を励ますというのが一番の役割かもしれません。
強い選手でも弱音は吐いてます。それを受け止めつつ、次の周回を走り切ってもらう送り出し方ができれば、選手が文句を言うことはないでしょう。
あまり難しく考えず、他のサポートや、運営の方々と交流を楽しむ。それがBackyardultraのサポートの醍醐味だと思います。
Backyardultraを最後まで走るには?
最後に筆者が考える攻略法。まとめになります。
数字での目標を決めない
筆者は今回のレースの目標を「最後の一人になるまで走る」に設定していました。
これが48時間や300㎞走るのような数字の目標だと、達成したら満足感から必ず気持ちが落ちていきます。
このレースの勝者は最後の一人だけ。何周走るか分からない。ここにロマンがあるんですねw
最後の一人になる。そこだけを目標にして走ることが大事かと。
念の為書きますが24時間や200㎞を目標に走ることが悪いとは思っていません。
そこには個人によって目標とすべき到達点は違いますので、上記の内容は
あくまでもこのレースの勝者になるために必要な目標設定という意味ですので。
変化を恐れない
セオリーでは一定のペースで上げ下げしない方が勝てると言われていますが、例外があってもいいのかなと思っています。
めちゃくちゃ眠い時間帯にゆっくりペースで走っていると本当に気絶しそうで、眠気覚ましにペースを上げて速く走ることで睡眠時間も確保でき、一気に回復した経験に裏打ちされています。
一見、ペースを上げることで足を使いすぎたから、命を削っているようなものと感じるかもしれませんが、結果が示す通りそんなこともないのかなと。
もちろん個人の走力に大きく起因するところではありますが、無理にスローペースを順守する必要はなく、状況によってはペースを上げるのも作戦としてはありだと学びました。
確固たる自信をつける
これはメンタルの強さに結び付く部分かと思います。
最後の一人になるという気持ちがあったとしても、周りが月間1000㎞走ってます、本州縦断してますとか言われると自信を無くしますよねwww
他人と比較するなと言えばそうなんですが、自信を持って勝っていると言い切れるものを胸に秘めておくことが大事だと思っています。
筆者の場合このBackyardultraにかけてきた時間というのは、他の誰にも負けていないという自信でした。
それは練習だけではなく、Backyard ultraを想う時間も含めて…(叶わぬ片思いです…)
去年アシストで終了したことで奮起して、色々と考えてBackyardultraで勝つにはどんな能力が必要か試行錯誤してきました。
最終的にそこに捧げた時間、想いが自信となり、辛い時間帯も乗り越えさせてくれたのかなと感じています。
Backyard ultraの魅力
去年のブログでも同じ項目を書いていましたが、言語化できていませんでしたw
今年は少しは言語化できたかなと。
それが「真剣に向き合えば自分の限界と出会うことができるし、超えることもできる。」
という点ですかね。
真剣にというのが大事ですかね。
55時間走らせてもらいましたが、自分の弱さと否応なく向き合わされます。
そこから逃げずに真っ向から向き合うことでしか限界は超えられないと思っています。
ただ孤独感がないのもこのレースならでは。1時間に1回サポートや運営の方々と顔を合わせる。
そこでたくさんパワーをもらい自分だけでは超えられなかった壁も超えられるかもしれません。
筆者の尊敬するTJAR戦士に話を伺った時、
辛い時は仲間や応援してくれる人の顔を思い出して、ゴールした時にどんな反応をしてくれるか想像する。
という言葉が印象に残っていて、今回辛い時はそうして乗り越えていました。
応援してくれている人たちのヒーローになりたい!
単純な理由ですが自分を奮い立たせるには十分な理由でした(*^^*)
なんやかんやと書きましたがBackyardultraは最高です。
唯一無二の魅力と、ランナーとしても人としても成長させてくれるレースです。
前回書いたブログを読んで、今回のレースに参加を決めた方がいたと聞いて、とても嬉しくなりました。
今や世界中でレースが開催されているこのBackyard ultra。
日本でももっと盛り上がっていくレースになることを祈っています。
筆者もこのレースに魅了された一人として、その一助になれたら嬉しいです。
P.S. 今回も終了時刻が夜中ということでノーサウナでフィニッシュ…
アフターサウナとかいう割に全然サウナいかんやん。というツッコミはご容赦を…
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