【東京の難攻不落100マイルレース】TOKYO GRAND TRAIL完走ガイド


 TOKYO GRAND TRAIL100マイル(以下TGT100)走ってきました。
 去年、彩の国100マイルを完走し、100マイルレースに対するモチベーションが低下気味だったのですが、彩の国よりもコース難易度が高いとの悪評判(!?)を聞いてエントリーしました。

チーム【インナーファクト】左→小田選手、中央→私、右→ぶっちぎりで優勝した板垣選手

TGT100の概要、特徴

 レース開催日 2024年5月24日16時~5月26日16時(48時間制限)
 距離158km、累積獲得標高11000m、最高高度1400m(奥多摩の御前山)
 筆者の完走時のGPSデータ 距離167km、累積獲得標高11531m(1.5kmほどロストしています)

 名前の通り、東京の広大な山域(奥多摩、青梅、武蔵五日市、高尾)が舞台です。普段東京の山を走っている私から見ると、「こうやって繋ぐと100マイルレースができるのか!」と感心するようなコース設定です。

広大すぎてよくわからないコースマップ(北は奥多摩、南は高尾)


 ハセツネ、青梅高水国際トレイルラン、TOKYO八峰マウンテントレイルなどのレースとコースの一部が被っています。私が発案した高尾トラサルというトレーニングルートも一部組み込まれていました。
 ループ区間もありますが、山岳要素が高く、山域が広いために旅感は強いです。

 レース後にレースプロデューサー、ディレクターと話す機会があったのですが、「16時スタートで二晩を経験させる」「ストックがほぼ全域で使用可能」など、随所でUTMBを意識しているとのことでした。国内レースでは珍しい状況やレギュレーションですが、UTMBに応用できるので良い仮想練習になります。

TGT100を完走するには

 コースの難易度が高く、西のTAMBA、東のTGTと評しているトップ選手もいるほどです。
 今年、30時間を切ったのはトップの板垣選手のみでした。それだけでコースの壮絶さが分かると思います。
 ただし、制限時間は48時間とゆるいため、彩の国100マイルと比べると完走は易しいです。コーススペックに圧倒されないように目の前のエイドにたどり着くことだけを考えましょう。
 私は、終盤130km付近まで10位~15位ほどで順調に進んでいたのですが、トラブルにより長時間停滞し、ボリュームゾーンで完走しました。おかげでボリュームゾーンの選手がどのように進んだのか、実際に一緒に走りながら詳しく話を聞くことができました。今考えるとこういった記事を書くにあたって怪我の功名になったと思います。

ストックをフル活用

 スタート約1.5km過ぎから全域使えます。脚の負荷が軽減するため、絶対に使いましょう。完走はストックに掛かっているといっても過言ではないです。完走後もまるで脚の疲労の度合いが違います。
 この大会は次世代ストックとして注目されているニューカーブが協賛していてレンタルもできます。私もニューカーブを持っていてよく使用しています。有効な使い方を書いた記事がありますので参考にしてください。

 私は今回、悩んだ末にシャークシステムのLEKIを使いましたが、それでも問題はありませんでした。攻めるならLEKIのほうがいいと感じます。ガシガシ登り、下りではあっという間に畳んで収納できるのでメリハリある走りができます。しかしニューカーブより明らかに疲労感があります。負荷が減るニューカーブは完走狙いなら安定の選択肢です。

暑さ対策

 5月下旬なので猛暑になる可能性も高いです。最低限、暑熱順化は完了させておきましょう。
 今回のレースは初日29度の真夏日で、普通に歩いて登っているだけで閾値心拍数に達していました。そのためか、序盤に体調を崩してそのままリタイアした選手が多かったです。私も抑えめに入ったのにも関わらず早々に食欲がなくなり、翌日に涼しくなるまで固形物が食べられなくなりました。

ゆるい制限時間

 ゆっくり潰れないように進みましょう。諦めなければ完走できます。ただし、A3-佐野川(87km)の関門まではそこそこタイトです。ここまでの制限時間は25時間なので、どの程度で到達できるかペースの把握は大事です。できれば試走し、できなくてもどの程度のアベレージで進めばいいのか計算しておくべきです。ここを越えればまず完走できます。具体的に数字を出すと104人が通過し、94人はフィニッシュしています。

コンビニをフル活用する

 序盤のエイド1-御岳からCP2は約30km以上離れているのに、ここでは水とお湯しか補給できません。しかしCP2付近は街中のため、コンビニが二軒あります。有効に使いましょう。
 私がコーラを買って飲んでいたら、日本を代表するトップ選手である、いいのわたる選手が飛び込んできました。「いいのさんレベルの選手でもコンビニ使うの!?」と驚きました。トップ選手はエイドの補給だけで済ませるという思い込みがあったからです。
 TGT100はコンビニの有効活用という特殊スキルがいると痛感しました。コンビニで食べやすいものの当たりをつけておくとか電子マネーをすぐに使えるようにするなど準備しておきましょう。

眠気対策

 スタートが16時と遅いので早い選手でも二晩かかります。
 私は130km付近まで順調に進んでいたのですが、あまりの睡魔で何度も崖から落ちそうになり、道端で仮眠を繰り返し、エイドに着くなり6時間も寝てしまいました。レース中とは思えない睡眠時間で、もはや後泊といっても過言ではなく、完全にレースが終わってしまいました(約7時間後に出発し、完走しました……)。100マイルレースは10回以上出場していますが、こんなことは初めての経験でした。
 あまりに眠いとカフェインピルも効かなくなってきます。自分に合った眠気対策をしておきましょう。しかし、二晩寝ずにトレーニングするというのは現実的ではありません。これはレースに出て実際に体験するしかないと思います。そう言った意味でこのレースはやはり模擬UTMBになりえると思います。

意外な難区間

 終盤134km付近のエイド6-十里木→152kmのエイド7-都民の森までの険しい山岳パート(標高200mから御前山1400mまで高度を上げる)を核心と捉えるひとが多いと思いますが、私はそのひとつ手前のエイド5-和田峠→エイド6-十里木が一番辛い区間でした。下り基調なのですが、激下りが多く、更に夜間で視界が悪いためにとにかく走りにくいです。二晩目になり、嫌でも眠気に襲われます。この区間はペースが落ちても焦らずに通過して、エイドでしっかり補給して休息し、あと25km先のゴールへと向かいましょう。

完走してみてのレース分析、まとめ

・93名/163名(完走率57%)
・聞いていた通り、彩の国100マイルよりきついコースだと感じた。
・楽に距離を稼げるボーナス区間がほとんどない。あえて挙げるなら、山から山へのつなぎのロード(すぐに終わってしまうが)と高尾山域の日影林道、小下沢林道。レイクビワ、UTMFのような山域と山域を繋ぐ長いロードはあまりない。
・COROSでの実測168km累積標高11500m。距離は+10km、累積標高は+1000m多く見積もっておいたほうが良い。
・コースの難易度は国内レースだと、TAMBA>TGT100、レイクビワ>彩の国の順。
・彩の国100マイル+3時間くらい、レイクビワ+1時間がフィニッシュ時間目安。
・トップの板垣選手のみサブ30(29時間台)。サブ35は10人しかいない。
・初100マイルで完走している選手は少なくとも3人確認している。

番外編 エイド食

 この大会はエイド食を売りのひとつにしています。
 正直に打ち明けると、大会に出る目的の4割くらいは、エイド1-御岳で出る本格的なスパイスカレーでした。
 真夏日の暑さで食欲が落ちているのに秒速で完食してしまうほど美味しかったです。

カレーエイド
エイド1のスパイスカレー


 各エイドにはそれぞれ看板メニューがありました。
 固形物が受け付けなくなっていたのでエイド3-佐野川のラーメンは食べられずに残念でしたが、エイド4-富士見茶屋のそうめんは3杯もおかわりしてしまいました。特に出汁の豆乳割りが身体に沁み渡りました。
 エイド2、エイド7-十里木では、お茶漬けは3杯以上、ミネストローネは5杯以上食べてしまいました。ミネストローネはパンを浸して食べると最高です。
 是非、潰れないペースで進み、エイド食を堪能してください。

対策装備

インナーファクト ソフトフラスコ ストロータイプ
https://shop.inner-fact.co.jp/?pid=169531568

 ストックを使っていると、手が塞がっているので水分の補給がおざなりになりがちですが、その対策としてストロータイプのフラスコを使っていました。首を横に動かすだけでストローを吸えるので便利です。

ひゃっほいタンク(試作品)


 初日は真夏日だったので、試作品のひゃっほいタンク(関西のカリスマランナーひゃっほい太郎氏監修のタンクトップ)を着ていました。涼しく、丈も絶妙で、ザックを背負っていてもショルダーの擦れはなく快適でした。この製品は生地を更にバージョンアップして販売する予定です。

インナーパンツ

https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2651562&csid=4

ラミーソックス(5本指ミドル丈)

https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2431131&csid=0

ガーニーグー

https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2422129&csid=0

 100マイルレースの皆勤賞になっているインナーパンツ、ラミーソックスは今回も快適で、マメも擦れも一切ありませんでした。もちろんレース前日寝る前とレース前にガーニーグーを塗り込んでいます。

レース装備

ザック:ANSWER4 / FOCUS Light + Salomon / Custom Quiver
ストック:LEKI / ウルトラトレイル FX.ONE スーパーライト
ヘッドウェア:Ciele / BKTHat、SUUNTO / BUFF
防寒:インナーファクト / ネックゲイター
ハイドレーション:インナーファクト / ソフトフラスコストロータイプ
シャツ:インナーファクト / ひゃっほいタンクプロトタイプ、Polartec PowerDry Tシャツ
インナーパンツ:インナーファクト / インナーパンツ
パンツ:インナーファクト / Primeflex Water-repellent ランニングパンツ
シューズ:BROOKS / CALDERA 6
ソックス:インナーファクト / ラミーソックス(5本指ミドル丈)
レインウェア:THE NORTH FACE / Strike Trail Hoodie
レインパンツ:OMM / Halo Pants
ライト:NEO 10R(頭)、Ultraspire / Lumen600(腰)
テーピング:インナーファクト / キネシオテープ
ウォッチ:COROS / VERTIX 2
ゼッケンベルト:ゴム紐xホチキス
ワセリン:ガーニーグー

クーポンコード

 今回のレースで使用した下記のインナーファクト製品を5%オフで購入できます。
 コードを使っていただくと一部筆者の収入になります。ぜひご利用ください。

クーポンコード:enishi-tgt2024
割引率:5%off
使用期限:2024年7月31日まで

対象商品
ソフトフラスコ ストロータイプ https://shop.inner-fact.co.jp/?pid=169531568
Polartec PowerDry Tシャツ https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2651562&csid=7…
シームレスインナーパンツ https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2651562&csid=4…
ラミーソックス https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2431131&csid=0
Primeflex Water-repellent ランニングパンツ https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2651562&csid=10
ネックゲイター https://shop.inner-fact.co.jp/?pid=178996838
テーピング https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2843801&csid=0…

江西 祥都江西 祥都

江西 祥都

ゲームやCMの脚本家、小説家、ライターです。 引き籠もって執筆中にあまりのストレスで山に逃走。山でも走り続け、後にこれがトレイルランニングだと知る。 現実逃避をし続け、今ではフルマラソンサブ3、100マイルトレイルレース上位5%のリザルトに……。沢登りやクライミングもします。 出張ランニングサービス-RUNKUR-(ランクル)の代表をしています。

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