100mileレースでの靴下の考え方と、靴下の種類

100mileレースでのという切り口になってますが、ここでは100mile限定という意味ではなくウルトラトレイルでの靴下の考え方という切り口で解説していきます。

UTMF(ULTRA-TORAIL Mt.FUJI)ART(阿蘇ラウンドトレイル)とウルトラトレイルの大会開催が近づくに伴い、よく靴下について質問されるのでまとめていきます。

メーカー目線で解説しても情報が偏るので、なるべく選手の意見による統計と客観的な目線で中立に解説します。

100mileレースで発生する足のトラブル

100mileレースをはじめとするウルトラトレイルのレースでは、今までのミドルレースでは発生しなかった足のトラブルを経験する選手が多いです。
その代表的なトラブルは「マメ」と「ふやけ」です。

それぞれの原因と対策を見ていきます。

-マメの原因-
シューズ内で足が擦れ、「摩擦」によって炎症が起こりマメとなります。

「摩擦」が原因となるので、基本的には擦れがおきにくければ足のマメは軽減できます。
では、どういう時に足が擦れ、摩擦が生じるのか考える必要があります。

足が擦れるのは主に足と地面の接地の瞬間です。
基本的に同じスピードで走り続けるロードランと違って、トレイルランは不整地を走るのでアップダウンではペースが変わり、足に伝わるエネルギーも一定ではありません。
急な降りではブレーキをかけたり、急登ではつま先だけで登る選手もいます。

こういったシチュエーションではシューズ内では足への摩擦は大きくなります。
特に靴下をはじめとする衣類は汗や雨などの水分を含んで濡れることで摩擦係数が大きくなり、足のマメができる可能性は高くなります。

ですので、理論的には靴下がドライな環境が保てると足のマメのリスクは軽減できると言われています。

-ふやけの原因-
長時間シューズや靴下が濡れている環境が続くと、
足裏の皮膚がふやけてしまいます。

レース中終始雨が降り続けたり、当日は晴れていても前日の雨がコースに残っている時。
暑い季節では滝汗が滴り靴下を濡らすこともあれば、猛暑になると頭から水を被り足元が濡れるなどもあります。

このように足が濡れた状態で長時間走り続けると、お風呂に長時間使った時のように足の皮膚がふやけてしまいます。
また、ふやけで一番怖いのはふやけることで足裏に「シワ」が発生し、シワができている状態で長時間走り続けるとシワが足裏に食い込んで裂傷になり激痛を引き起こすことも。

マメ、ふやけいずれも要因の大部分は足が「濡れる」ことにあります。
ですので足をドライに保つ事が出来れば足のトラブルを大きく軽減できるといっても過言ではありません。
100mileレースのようなウルトラトレイルを経験しているトレイルランナーになるほど、靴下にドライ感を求める傾向が高くなります。

靴下に何を求めるか?

靴下のドライ感の大切さを最初に述べましたが、まず最初に今までの自身の経験から「靴下に何を求めるか」を明確にすることが大切だと思います。
色んな靴下メーカーがあり、色んな選手が色んな靴下をお勧めしていたり、何を基準に選ぶのかは自分の軸が必要になってきます。

ウルトラトレイルに挑戦する選手の多くは経験値も高いので、靴下へのこだわりを持っている人も多いと思います。
ここでは今まで靴下にそんなにこだわってこなかった方を対象に解説していきます。

正直「今までどんなレースに出ても足のトラブルやストレスを感じたことはないよ」という方は、ある程度どんな靴下を選んでも問題ないと思っています。
足が丈夫なのか、走り方が綺麗なのか統計はとってないですが、「どんな靴下を履いてもドラブルが起こったことがない」という方にも過去数名お会いしたことがあります。

ただ、そういった方は本当にごく少数で、多くの選手は距離が伸びるほど足裏になんらかのトラブルが発生しています。
そんなトラブルの対策の一つとして、インナーファクトでは靴下もギアの一つとして提案しています。

まずは靴下の種類とそれぞれのメリットデメリットを見ていきます。

滑り止め、アーチサポート付き靴下のメリットとデメリット

登山からトレイルランに入った選手にはあまり履いている方は多くないように思いますが、ロードランからトレイルランに入った選手の多くは履いたことがあると思います。

-滑り止めの目的-
シューズ内での足の滑りを抑制。
トレイルランでの降りではグリップ性を高めるときに有効。

-アーチサポートの目的-
内側縦アーチと呼ばれる土踏まずのアーチの落ち込みをサポート。
まれに捻挫防止で踵から足首にかけての安定性を高めるサポートをつけている物もある。
※内側縦アーチの効果
クッションの効果があるため、足への疲労軽減。

トレイルランにおいて、とりわけウルトラトレイルになると滑り止めやアーチサポートの靴下を愛用している人は少ないように感じます。
特にトップ選手になるほど少なくなるように感じます。

自社調べですがUTMB2018、UTMF2019をはじめとするウルトラトレイルのレースでスタートから1kmほど先のポイントで足元を定点撮影してほぼ全選手靴下を調査しました。
この作業だけで数日要する苦行です。。。

全ての選手の着用メーカーはわかりませんでしたが、確認出来た選手の中で滑り止めとサポートがついている靴下を着用していた選手は7%程でした。
着用率の少ない理由として、選手から聞く声の多くは以下でした。

  • 滑り止め:長い距離を走ると足裏の異物感がストレスになり、マメなどのトラブルを誘発する。
  • 滑り止め:降りでグリップしすぎて指と指の間に靴下が食い込み痛くなる。
  • アーチサポート:後半の脚が浮腫んできたときに、サポートの圧迫感がきつくなる。
  • アーチサポート:アーチサポート部分の生地がスレて足のトラブルに繋がる。

長年滑り止めやアーチサポートの靴下を履いて走り続け慣れており、上記に挙げたようなトラブルが出たことない人はそのまま着用し続けても問題ないと思います。

防水ソックスのメリットとデメリット

一般的にはそこまで知られていませんが、登山からトレイルランニ入った人やアウトドアアクティビティが好きな方は知っている方も多い防水ソックス。
2020年KOUMI100の時のように前日から大会中も強い雨が降り続けたレースのような時に「防水ソックスはどうなのか?」と質問されることが多いです。

結論から言ってしまうとあそこまでぐちょぐちょなレースになってしまうと、どんなに高機能ソックスを履いても足にトラブルは出てしまいます。

2020年のKOUMI100に選手として参加したりサポートに入っていた方はご存知でしょうが、あのレースは「足が濡れる」というレベルではなく、「泥に足を突っ込む」という状態でした。

多くの泥がシューズ内に侵入し靴下を泥だらけにしていくと、靴下の繊維の隙間に微粒の砂が入り込み、靴下の本来の機能は発揮出来ないと考えます。

インナーファクトとしてはドライを売りにしているメーカーなので「うちの靴下を履いてるだけで少しは違いますよ!」と言いたいですが、あのレベルでは機能性もクソもないです。
靴下を履いているのか、靴下型の泥を履いているのかわからないほどのレースでしたので。

前置きが長くなりましたが、防水ソックスの目的を解説します。

高い防水性能で靴下内への水分の浸透を大幅に抑制できる。
透湿性の高い生地で足のムレも軽減。
3層構造で厚めの生地なので、
冬場や雪のシチュエーションでの保温効果の信頼感は圧倒的に高い。

上記のような特徴がある中で、個人的には防水性能の高さは名前からわかるものの、本当の効果は雪が降ってくるシチュエーションでの安心感にあると思います。

今年の12〜1月は地元広島でも久しぶりに多くの雪が降り、雪山が楽しめました。
購入してからなかなか使うシーンに恵まれなかった防水ソックスを引っ張り出して15〜30cm前後の積雪の山で5時間ほどスノートレイルを楽しんだ際に、足指の冷えがほとんど感じませんでした。
また、シューズについた雪が体温で溶けても靴下への浸透は全く無く安心して雪山で遊べました。

雪が積もっていたり、振ることがわかっている時の防水ソックスは防水防寒対策として信頼できると思います。

では、なぜウルトラトレイルで使っている人が少ないのか。
先ほど挙げた過去のレース統計で防水ソックスを履いている人は、確認出来ませんでした。
理由としては以下の声を多く聞きました。

  • 生地が分厚くごわつくのでフィット感が大きく軽減する。
  • 生地の厚さからシューズサイズが変わるので使いにくい。
  • ウルトラトレイルのような長時間レースでは雨で長時間濡れてしまうと浸水してくる。

特に最後の長時間の雨では防水ソックスであっても雨が浸透してしまい、一度濡れて浸透すると他の靴下よりも水分の「抜け」が悪いという声は多かったです。

防水ソックスを愛用している選手にも話を聞けましたが、「登山や雪山では使うけどレースで使った事はない」という回答でした。

しかしながら、雪山や寒さ対策、短時間の防水対策では非常に優秀なので使い所を選定していくと信頼度の高いギアになるはずです。

厚手ソックスのメリットとデメリット

厚手や中厚手のソックスを履いている人は多いと思います。
特に冬場では活躍してくれるソックスです。

トレイルランにおいてはロングレースでの「クッション性」を意識して選ぶ方も多いのではないかと思います。
特にメリノウールソックスは今までの「ウールは蒸れる」というネガティブなイメージを大きく改善できている商品だと思います。

保温効果が高く、足指の冷えを軽減出来る。
クッション性が期待でき、ロングトレイルの足の疲労軽減に繋がる。
メリノウールに関しては消臭効果と、ドライ感も維持できる。

現状のトレイルランソックス市場においては中厚手のメリノウールソックスが高く支持されていると思います。

そんな支持率の高い中厚手のソックスですが、中には好まない人もいるのでその声もご紹介しておきます。

  • 水を吸うとドライ感が失われて足のトラブルに繋がる。
  • 厚みがあるのでシューズが窮屈に感じる。
  • ダイレクトに地面の感覚を掴みたいので薄手の靴下が好み。

ロングトレイルになると足裏のトラブルはタイムに直結し、最悪DNFに繋がってしまいます。
スタート時からレース終盤まで雨予報であったり、当日は雨が止んでいても前日の雨がトレイルに残っている可能性が大きい場合などは、厚手の靴下は水分を補水しやすいので足のふやけを促進してしまう事も。

ケースバイケースで靴下を選ぶ事が完走率とタイム短縮に繋がるので、たかが靴下とあなどるなかれ。

薄手の靴下のメリットとデメリット

トレイルランで薄手の靴下はまだ少数派ではありますが、少しづつ愛用者が拡大しているように感じています。
その理由の多くは「ドライ感」を感じやすい点にあると思っています。

先にあげた厚手のソックスと真逆に位置する靴下なので、メリットデメリットがそのまま入れ替わります。
ですので、薄手の靴下の特徴はこんな感じ。

シューズとのフィット感が高い。
地面の感覚がダイレクトに感じやすい。
高いドライ感を感じられる。

生地が薄くなる分クッション性は損なわれますが、その分地面の感覚が掴みやすくなります。
また、生地が薄い分水分の補水率も少ないため、多少濡れても体温で比較的早く乾いてくれるのでドライ感の感じ方はわかりやすいです。

その反面もちろんデメリットもあるので、薄手の靴下が苦手な選手の声も紹介します。

  • ロングトレイルにはクッション性が欲しい。
  • 指先や母指球などに穴が空きやすい。
  • 普段厚手の靴下を履いているとシューズサイズが合わなくなる。

特に登山からトレイルランに入った選手はクッション性を求める傾向が高い感じがしています。
薄手には薄手の、厚手には厚手のメリットがあるのでどちらかしか履いた事ない方は、両方試してみることで選択肢の幅も広がるので是非チャレンジしてみて欲しいところです。

指の形の種類

靴下には一般的に「五本指」「ラウンド型(ボックス型)」の2種類があります。
他にもインナーファクトでは人気の足袋(たび)型や、中には親指と小指が独立した三又のソックスなんかもあります。

三又ソックスは競技用というよりも、足指の修正目的で日常履きとして治療院で販売されていることが多いです。

今回は五本指、足袋型、ラウンド型3種類それぞれのメリットデメリットも上げていきたいと思います。

五本指靴下のメリットとデメリット

今では五本指靴下は多くの支持を集めています。
ドライ感を感じやすく、五本指ソックスにしてからマメができなくなったという声を聞いたことある人は多いのでは?
五本指靴下を履くと期待できる効果は以下です。

指一本一本生地に包まれるので足指の間のムレやスレが感じにくい。
足指の意識がしやすい。
外反母趾や内反小趾などの足指が重なっている人には補正力が期待できる。

五本指ソックスは特にドライ感を感じやすいので、長い距離を走った際の足のトラブルが減ったという人は多いと思います。

ただ、もちろん五本指靴下が合わない人もいます。
そういった方の声もご紹介します。

  • 指の間に生地が挟まる分足指が開いてシューズ感覚がキツく感じる。
  • 後半足が浮腫んだ際に指部分に圧迫感を感じる。
  • 履きにくいので積極的に使いにくい。

数年前に五本指靴下を履くと「開張足になりやすくなる」や「体感のバランスが悪くなる(前屈した際の可動域が小さくなる)」などを言われる事がありました。

この件に関しては色々と論文を探したり、足や体の専門家にお話を伺ったところ明確なエビデンスはなかったので感覚的な部分が大きいのでは?と思っています。
むしろ五本指靴下を履いた時の優位性を示す論文が多く、ネガティブ要素が実証された論文は探す事ができませんでした。
過去にこの件に触れた記事もありますのでご紹介しておきます。

また、五本指靴下を履くとシューズがキツくなるという意見は靴下の厚みが原因になるので、薄い五本指ソックスを選ぶとよほどジャストサイズのシューズでない限り圧迫感は感じないかと思います。

ただし、履きにくさ(特に足が濡れている状態)は出てしまうので雨の日のデポバックに五本指靴下を準備するときは履き替えるのに時間を要するかと思います。

また、ロングレースの後半の足のむくみによる指先の圧迫感も感じる人もいるので、靴下の生地の種類やフィット感の高さなど事前の練習で検証が必要になります。

足袋型靴下のメリットとデメリット

足袋(たび)型の靴下は親指だけ独立している靴下です。
あまり作っているメーカーは多くはないですが、インナーファクトでは人気の商品になります。
足袋型靴下を履いて期待出来る効果は以下です。

親指が独立しているのでラウンド方よりも足指を意識しやすい。
五本指よりも履きやすく、同等のドライ感を感じられるい。
体幹の向上が期待出来る。

足袋型でソックスは特に体幹の向上に関して期待が持たれています。
親指と人差し指の間で何かを掴む動作をすると体幹が内に締まり、左右へのグラつきが少なくなるという論文もありました。

工事現場などの高所作業をされる鳶職の人たちが、足袋型の靴を使うのにはそういった裏付けがあるという話も。

足袋型靴下のユーザー自体がそこまで多くないので一概には言えませんが、現時点ではネガティブな声を聞いた事がないので非常にバランスの良い使いやすい靴下なのでは?と思っています。

ラウンド型靴下のメリットとデメリット

ラウンド型は一般的によくある足指が分かれていない形状の靴下を指します。
もっとも履きやすく、日常では特にこのタイプの靴下を履いている方が圧倒的に多いと思います。

ラウンド型靴下の特徴はこんな感じです。

着脱しやすい。
ロングレースなどの後半で足が浮腫んでも指先の圧迫感を感じにくい。
寒い環境下では暖かい。

五本指ソックスや、足袋型ソックスは指が独立している部分の保温効果が低く、寒い環境下では指先の冷えを感じやすいです。
その反面、ラウンド型ソックスのように指全体が包まれていた方が保温効果が高いので、気温が極端に低いレースではラウンド型の方が足指の冷えを感じにくいです。

また、着脱のしやすさは大きな武器で、ロングレースのデポバックの着替えに入れておけば交換のピット時間短縮にも直結します。

その反面ラウンド型が苦手という方の声はこんな感じです。

  • ドライ感を感じにくい。
  • 足指の感覚が掴みにくい。
  • 足指のトラブルにつながりやすい。

特に多い声は足指の間のスレなどはやはり五本指と比べてトラブルが発生しやすいです。
足指のトラブルやストレスを感じた事がない人には、ラウンド型は履きやすくストレスも少ないのでお勧めと言えます。

結論:結局どの靴下がいいの?

結論として100mileレースではどんな靴下が良いのか?
最初にも話しましたが「ドライ感」は必須の機能だと考えています。
ドライ感プラスアルファでどのような機能性が必要なのか、という点で探すことをお勧めします。

まずは過去のレースや練習から自分の足のトラブルを把握して、その要因を考え、普段の練習で靴下を試してみて検証が必要です。
100mileレースのようなウルトラトレイルでは「考える力」が一番大事だと思っています。
当日の気温や天候、コースの路面状況、当日履く予定のシューズとの相性など環境やシチュエーションによって考え、選択する事が大切です。

特に初めて100mileレースを走る人は、どのような環境やシチュエーションでは、どの靴下がストレスを感じなかったかを普段の練習の時にも意識して感じ取ってもらいたいと思っています。

あえて雨の日や気温が低い時に練習することで、どういう靴下がどういう違和感を感じるのかわかると共に、そういう環境下で練習を積んだ経験がレースで心の余裕を産むことに繋がると思います。

インナーファクトでは靴下の「試し履き」もオンラインで受け付けています。
五本指靴下しか使ったことない、ラウンド型しか使ったことない、という方は天気予報を見ながら「この日天候悪くなるからこの靴下で練習してみよう」などの計画に是非今まではいたことない靴下も選んで試してみてください。

試し履き靴下のご注文はコチラから。

靴下で少しでも足元の不安要素を軽減出来ると非常に嬉しいです。
何か質問や悩みなどありましたらお気軽にご連絡ください。

    INNER-FACT 代表INNER-FACT 代表

    INNER-FACT 代表

    INNER-FACT代表の首藤(シュトウ)。 一部関西ではくびふじと呼ばれます。 基本的にはトレイルやランはソロでしかやらず、イベントや大会ではエイドなどスタッフ側で参加しています。

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