五本指靴下を履くと身体のバランスが悪くなるのか?開張足の関係性と併せて調べてみた

昨今、五本指靴下が「開張足」を促すのではないか、という疑問を投げかけられることが多いため色々と論文をあさって調べてみました。
また、「五本指靴下を履いて前屈をすると可動域が小さくなる」と言う意見を稀に耳にするため、その根拠も併せて調べてみました。

結論から言うと、その根拠が乏しいなぁと感じています。

五本指靴下が開張足の要因となるという論文や実証データが少な過ぎ、正直のところ明確な解答はまだ出来ないと言う感じです。
個人ブログのエビデンスの無い感覚的な意見はいくつかありましたが、ここでは確実な情報を共有したいのでそれらは参考意見程度に留めあえて紹介はしないでおきます。
ですので、ここでは論文から注釈した考えと足指の働きを専門に取り組んでこられたトレーナーの方々の意見をご紹介していきます。

題名にもある通り、五本指靴下が身体に与える影響を考えるにはまず足と足指の働きについて理解しないといけません。
足指の働きは指単体ではなく、足そのものの構造を理解する必要があります。
ですので、まずは足の構造を簡単にご説明していきます。

3つの足のアーチ

人にの足には3つのアーチがあります。
この3つのアーチが足のクッション性やバランス感覚に大きな影響を与えます。
また、アーチがあることで足指の働きも促進されるのでまずは足の3つのアーチについて解説していきます。

まず3つのアーチの名前は以下です。

  • 内側(ないそく)縦アーチ
  • 外側(がいそく)縦アーチ
  • 横アーチ

それぞれのアーチの役割はこんな感じ。

-内側縦アーチ-
一般的によく言われる「アーチ」とはこの部分で、土踏まず部分。
 このアーチは「横揺れ」に対して制御が働くアーチです。

内側縦アーチがしっかりと構築されていると、身体の横揺れがしっかり制御されるので、体幹バランスが高まります。
特に不整地を走るトレイルランニングにおいて体幹バランスが高いと、しっかり揺れを制御できるのでエネルギー効率は高まり腰や膝などの関節やその周りの大きな筋肉の疲労や故障の軽減が期待できます。

-外側縦アーチ-
このアーチはあまり知られてませんが小指側からかかとにかけてある小さなアーチです。
このアーチは「捻れ」に対して制御が働くアーチになります。

外側縦アーチは捻れに対して制御が働くので、足の捻挫予防や方向転換を行う際の反応が高まる効果が期待できます。
特に捻挫癖がある方や捻挫が不安な方は外側縦アーチをしっかり構築することが大切です。

-横アーチ-
このアーチは中足骨と呼ばれる部分に位置するアーチです。
このアーチは「前後の揺れ」に対して制御が働くアーチ。
ちなみに今回の開張足に関してはこの横アーチのお話になります。

横アーチは身体の前後の揺れに対して制御が働くので、このアーチを構築できると姿勢が整いやすく猫背や反り腰による腰痛軽減が期待できます。
また、横のアーチは足指の動きに大きく影響を及ぼすので、今回のテーマはこの横のアーチに焦点を絞って解説していきます。

開張足とは?

開張足とはざっくりと言うと横のアーチが潰れてしまうことです。
「開帳足」と書くので足指が開いているという意味を想像しがちですが、足指を動かすために必要な横アーチ部分の筋肉が衰え、横アーチが潰れている状態を意味します。

普段あまり意識することの無い部分のアーチなので、自分の足の横のアーチがあるのか無いのかわからない人も多いと思います。
簡単な判別方法として足指のグーパーがしっかり出来るか、足指をしっかり動かすことができるかでわかります。
足指がほとんど動かない人や、グーパー出来ない人は横のアーチはかなり衰え潰れてしまってきています。

この開張足になる理由を調べてみると大きく以下の要因が確認されているようです。

  • 前足部に荷重がかかりやすいハイヒールやパンプスを多用して履く
  • ぺたぺた歩き
  • 加齢による筋力の衰え

まず、ハイヒールなど前足部が窮屈な履物を履くと足指が窮屈になりバランスを取るたまに働く足指や足の裏の筋肉が使えず、バランスを取るため膝が曲がりふくらはぎや太ももの筋肉で体を支えているように感じます。
この結果横のアーチが使えず、横アーチ形成に必要な筋肉が衰え開帳足に繋がるといわれています。

ペタペタ歩きとは、シューズの踵を踏んで履いていたり、スリッポンのサンダルなど踵がついていない履き物を日常的に履くことでぺたぺたと足音がなる歩き方の事です。
踵がついていない履き物は、踵がついている履き物と同様の足運びをすると履き物が脱げそうになります。
病院で履くスリッパなどをイメージすると脱げやすく、歩きにくく、パタパタ足音を立てて歩く人が多いのは想像できるのでは無いでしょうか?
この様な脱げやすい履き物は、脚のストライドを意識的に小さくして踵を擦って歩いたり、ベタ足で接地させることで履き物が脱げないように歩くことになります。
この結果、前足部を使うことが日常的に減ってしまい横アーチ形成に必要な筋肉が衰え開帳足に繋がるといわれています。

ただ、今あげた2点に関しての開帳足の要因は医学的根拠があると言うよりかは、これが要因の一つだろう言われておりまだ研究段階の様です。
ただ、医学的には開張足になる要因は「背側骨間筋(はいそくこっかんきん)」と呼ばれる、足指を広げたり曲げたりする際に働く筋肉が関係すると言われています。

この背側骨間筋はそれぞれの指の間に位置する筋肉で、お互いの指と指を引き合うように働き横のアーチを形成しています。
したがって、背側骨間筋が衰えてくると指と指の引き合う力が緩み開張足へと繋がります。
ですので先に挙げた、履き物や歩き方によって前足部を日常的に使わなくなることは、横アーチの形成に必要な背側骨間筋に刺激が入らないため医学的にも間違った見解では無いと思っています。

開張足になるとどうなるのか

開張足とは足の横アーチが潰れる事なので、前後のバランス制御が悪くなります。
すると、横アーチで吸収できていた揺れを身体の別の部位で補わないといけないので、身体のバランスが悪くなります。

本来は足の横アーチがしっかりと働いていたら前後の揺れは最小限の揺れで吸収できます。
しかし、横のアーチがしっかり働かない場合その揺れは吸収出来ないので足首から脚へと揺れが大きく伝わり、その制御のためにふくらはぎや太もも、腰といった部位で揺れを吸収する必要が出てきます。
こういった大きな筋肉はエネルギーも大きく消費するので、エネルギー効率も悪くなります。

トレイルランの様に不整地に対して身体のバランスを取る際は、距離が長くなるほどその負担が蓄積されていきます。
ウルトラトレイルのような長時間にわたるレースを想定する場合は、足のアーチを自分で作っていくことは足腰の負担を減らすことに有効と言えるのではないでしょうか?

開張足の対策

前途のように、前足部の筋力の低下が開帳足の要因と考えられているので、前足部の筋力向上が開帳足の予防、ひいては横アーチを整える事になると思います。
足指を鍛えようにもそもそも全く動かない人もいるので、まずは足指のストレッチから始めましょう。

個人的にオススメなのが「ひろのば体操」。

インナーファクトでは日々の足指やアーチのケア、トレーニングのためにコジコジボールGRIP DROP-足半(あしなか)-の使用をお勧めしています。
日々のケアとトレーニングで足指を鍛えて開張足にならないように気をつけましょう。

五本指ソックスと開張足の関係性は?

長々と開張足の要因を解説してきましたが、結論の五本指ソックスを履く事で開張足の要因になるのか?身体のバランスが悪くなるのか?について解説していきます。
冒頭にも書いた「五本指靴下を履いて前屈をすると可動域が小さくなる」と言う意見は、五本指ソックスを履くことで横アーチの働きを阻害するのでは?と言う解釈になると思います。

色々と五本指ソックスを履くことによって開張足になる(身体のバランスが悪くなる)因果関係に関して調べましたが、その根拠は見つけられませんでした。
どちらかというと五本指靴下を研究されたいくつかの論文にはこういった研究結果の記述がありました。

足関節安定化の補助に関与し、下腿( -かたい-膝と足首との間の部分)後方への傾斜を抑制しバランスを保持するように作用すると考えられる。

「5本指ソックス着用がジャンプ着地時に筋活動に及ぼす影響」より

足趾が開く事で抹消血流循環が改善する事、足趾それぞれの独立した運動を引き出しやすくする事でバランスが取りやすくなる。

「5本指ソックスが足底圧分布と足底荷重面積に与える影響について」より

五本指ソックスの着用が前足部への刺激量を増加させ、結果的に体性感覚情報を増加させる事が示唆された。

「前足部への「刺激が立位安定性に及ぼす影響」より

日常生活を五本指ソックスで送ることにより、前足部の筋活動量が増大し、静的バランス・動的バランスの両者において向上している事が考えられ、五本指ソックスの着用は転倒リスクの軽減に効果があることが示唆された。

「5本指ソックスの継続的着用におけるバランス能力の検討」より

ポジティブ要素だけ拾った訳ではなく、幅広い論文を見ましたが五本指靴下に対するネガティブ要素はほとんど見受けられませんでした。

ただ、五本指靴下でもお勧めしたくないものもあります。
それは生地の分厚い靴下です。
生地が分厚いと不自然に指が広がりすぎ足指の動きを阻害するため、これは開張足を促す要因になり得ると思います。

「ひろのば体操」のように意図的に足指を広げ背側骨間筋に刺激を与えるのではなく、靴下のように長時間履き続けるのに不自然に足指が広がりすぎる分厚い靴下はお勧めできないです。

結論

冒頭にも結論を述べましたが、五本指靴下が開帳足や体幹バランス悪化の要因となるという考え方は根拠に乏しいと思います。
勘違いして頂きたく無いのは、根拠が乏しいという意見であってその考え方や発想が間違っているとは思っていません。

人の足の特徴や身体バランスは千差万別なので、個々によって靴下やシューズ、インソールによって体幹バランスが変わってくる事実は理解していますし実際に目にもしています。

また、人は先入観や思い込みでも身体に及ぼす作用が大きく変化する事が医学的にも認められているので(プラセボ効果)、結局のところ気に入ってる靴下を履くことが一番かと。
ただし、先にあげた生地の分厚い五本指靴下はやめておきましょう。

五本指靴下はどうも好きになれないと言う人はそれでいいと思いますし、試してみたい人は試してみればいい。
こうでないといけない!という頭でっかちな考え方や、その根拠をネットや他人に求めるよりは、自分なりの経験と理論があるのならばそれを元に検証する事が大切だと思ってます。

情報過多の時代なので一方的な情報に流されず、取捨選択出来る自分の「物差し」を作っていくことが大事だと考えます。

最後に、今回この記事をまとめるために拾ってきた情報は2019年以前のものです。
医学的な解釈やその効果は解析方法や観察方法によって変わってくる為、常にアップデートしていくことは必要だと思っています。
ですので2021年3月現在に改めて情報をアップデートしてリライトしてみました。

ちなみに、インナーファクトでは五本指、足袋型、ラウンド型それぞれ作ってますのでどんな人にも対応できます。
生地の厚みも比較的薄いので不自然に足指が広がりすぎることもないですし、気になる方はさらに極薄タイプの靴下もあります。

靴下や足指についてお悩みなどありましたらお気軽にご連絡ください。

    INNER-FACT 代表INNER-FACT 代表

    INNER-FACT 代表

    INNER-FACT代表の首藤(シュトウ)。 一部関西ではくびふじと呼ばれます。 基本的にはトレイルやランはソロでしかやらず、イベントや大会ではエイドなどスタッフ側で参加しています。

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