目次
地図記号で想像できる!ルートの景観やランドマーク
たくさんの地図記号…全て覚える必要はありません
2020年現在、日本で使用されている国土地理院が定めた地図記号は約160種類。
古戦場や牧場などかつては存在したものの現在は使用されていない地図記号もあれば、風車(2006年)や自然災害伝承碑(2019年)など新しく生まれた地図記号もあります。
全て覚えるのはとても無理…そんな心配は無用!官公庁・学校や道路・線路などを除けば、山やその周辺で使用される地図記号はごく限られたものです。
今回は登山やランで役立つ地図記号に絞り込んで、その実例をご紹介します。
山中の植生を表現する地図記号
針葉樹林・広葉樹林
まずはいわゆる「森林」を構成する背の高い植物からご紹介。
針葉樹林は杉や檜などの人工林、トウヒやコメツガなどの自然林が該当します。カラマツ(落葉松)を除いてほぼ全ての針葉樹は“常緑樹”。冬でも緑の葉が生い茂っています。日射しの強い日は木陰を提供してくれますが、こうした場所では展望はあまり期待できません。
広葉樹林はブナやカエデ、クヌギなどのドングリ類、高山であればナナカマドやダケカンバが該当します。秋には葉が赤や黄色に色づき紅葉に染まるのがこれらの木々。冬には落葉し、翌春は新緑が芽吹くと言うように、季節によって衣替えする姿を楽しめます。
植生の豊かな日本の山は、針葉樹と広葉樹が混在している森林が大半。針葉樹だけが生育しているのは大抵が植林された人工林で、日当たりの良い南斜面や東斜面によく見られます。
荒地
荒地…と聞くと荒涼とした場所を思い浮かべてしまいますが、実際は背の低い草木が生い茂った場所。
草原・夏のスキー場・カヤト(ススキ)の群生する河川敷・そして高山植物のお花畑も、この記号で示されているのです。
次に紹介する千畳敷カールの地形図に記された荒地の地図記号も、実際はこんなお花畑なんですよ。
ハイマツ地
TJARの舞台となる日本アルプスをはじめ、標高の高い山岳地帯は冬の厳しい気象によって針葉樹林・広葉樹林などの森林が生育する事ができません。この境界線は“森林限界”と呼ばれ、緯度の高い北海道は標高800〜1000m前後、日本アルプスや八ヶ岳で標高2500〜2700m前後に位置します。
この森林限界より上に生育する代表的な植物がハイマツ。地を這うように低く広がるため、展望は大変良い場所です。その代わり、直射日光や風雨の影響は受けやすく、発雷時なども注意が必要。頭上を遮る高木がないと言う条件を考慮に入れて行動しましょう。
山麓の農地を表現する地図記号
山国である日本には、山と人々の生活の場が密接している「里山」と言う概念があります。登山口となる山麓周辺に広がる様々な農地を表現する地図記号も、景観を想像するヒントや、登山口を探すランドマークに。
田・畑がその代表ですが、比較的温暖な地域に多い茶畑や果樹園も実際の景観そのものに特徴があるので覚えておくと便利ですよ。
山肌の状態を表現する地図記号
ここでご紹介するのは、日本アルプスをはじめ森林限界を越えた高山で頻出する地図記号。低山中心で活動されるランナーの皆様はスルーして頂いてもOKです。
まずは岩がけ。ここで例示した北アルプス・焼岳周辺の地形図では火口湖周辺の斜面に多用されていますが、槍・穂高連峰や剱岳などの険しい岩峰の稜線付近は大抵この地図記号で覆い尽くされています。
岩は、その中でも突出して屹立した岩石に使用されることが多い地図記号。
続いて土がけ。斜面を指で抉りとったような形の通り、火山活動や豪雨による火砕流・土石流によって斜面が抉り取られた場所です。
そして山肌の状態や等高線と同じ茶色で粒子状に示されているのが、砂れき地。高山であれば直径数m〜数十cmの岩が累積する「ガレ場」、河川の中流であれば直径数cmの丸石が累積する「河原」、海岸であれば直径数mmの砂で構成される「砂浜」まで、全て同じ地図記号で表現されています。
水に関する地図記号
水に関する地図記号は青色で表現されるケースが大半です。
湿地は青い短線の地図記号で表現。河川は流路・川幅が、湖沼は大きさ・形がそのまま青色で記されていますね。
ミズバショウで有名な尾瀬ヶ原は広大な湿原に湖沼や河川が点在するため、地形図全体が青みを帯びています。
人工物を表現する地図記号
基本的に自然豊かな山の中。だからこそ、人工物があると目立ちます。その山や地域の歴史や伝承を刻んだ石碑などの「記念碑」がその代表格。
また「送電線」は現在地を知るための重要なランドマークに。登山道を歩いていて送電線を潜る場所は、地形図で登山道と送電線が交差している場所とピッタリ一致します。
この他にも山頂や稜線に多い「電波塔」は規模も大きくランドマークになりやすい人工物。
「独立建物」もランドマークになりますが、上記のように説明を付けないとその建物が何であるかはわからないものが大半です。
道の様子を表現する地図記号
初めにお伝えしておくと…登山道という地図記号はありません。
上の写真のような、The・登山道という道は「徒歩道」という地図記号で表現される、文字通り徒歩でしか通行できない道です。
標高の高い山の登山道は大抵「徒歩道(道幅1.5m未満)」で記されていますが、標高の低い山やそのアプローチには「軽車道(道幅1.5〜3m)」「1車線の道路(道幅3〜5.5m)」が登山道として使用されている場合も多々あります。
1本の実線で示される「軽車道」は道幅が狭く、未舗装であったり路面が荒れているケースが大半。四輪駆動車などでないと通行できない道路も多く、一般的に“林道”と呼ばれている道が該当します。
2本の実線で示される「道路」は基本的に舗装されており、車両も通行できる道。実線の間隔で「2車線の道路」「4車線以上の道路」「真副道路」と道幅が広くなっていきます。
また最近の地形図では、都道府県道は黄色・国道は赤色・高速道路は緑色と道路に色が塗られるようになりました。
破線で示された「徒歩道」は前述の通り、基本的には人間だけが歩ける道。低山であれば土の道ですし、森林限界を越える高山ではガレ道になっていることもあります。
間違いやすいのが、破線と点で構成される行政区界。上の図では2つの点と実線が連なる「郡市の区界」が示されていますが、1つの点と実線が連なる「町村・政令市の区界)で示される行政区界もあります。
日本の場合、山の稜線が県や市町村の境目になっている場所も多く、「徒歩道」と行政区界の地図記号が並行して描かれているケースも多数。記号としてはとてもよく似ているので、間違えないようにしましょう。
地図記号で山の風景を想像してみよう!
いかがでしたか。特に植生や水に関する地図記号は、その山の風景まで想像することができ、登山やランの前でも地形図を眺めながら楽しむことができます。
実はこのように事前に地図を見て山をイメージする「机上登山」は、安全な行動のためにもとても重要。
もし今回ご紹介した以外の地図記号に出会ったら、下記のサイトをご覧下さい。
Vol.3では、山を立体的にイメージするための等高線の読み方について、ご紹介します。
お楽しみに!
コメント