2019年大会100マイル部門で優勝させていただきました。
久しぶりに開催される信越五岳です。
出場されるランナーの皆さんが納得のいくレースができる一助となれば幸いです。
目次
信越五岳レース経験

筆者は、信越五岳大会は110㎞(2018年3位)と100マイル(2019年1位)に1回ずつ出場しています。
何回も出場しているわけではありませんので、コースもおぼろげにしかおぼえていません。
しかし、今も覚えているところは印象に残った場面、コースですので、特に注意してレースに臨んでいただければと思います。
信越五岳コース、レース全体の印象とペース

「走れるコース」です。
UTMFよりもロード率が少ないです。
おんたけ100kmよりもガレた林道は少なく感じました。
信越五岳は、「シングルトラック主体の山を走るレース」と考えてよいと思います。
2019年大会は19時間25分でフィニッシュしました。
このタイムから、私のエイドで止まっていた30分(tomoさんのポッドキャスト情報より)を引きます。
すると純粋に行動していた時間は、18時間55分ということになります。
距離163㎞で割ると、6’57/kmということになります。
つまり1キロ6分57秒で163㎞走ったということになります。
コースのポイント(ペースが遅くなるところ)

コースで一番時間のかかったところが3か所あります。
- 一つ目は斑尾山への登り
- 二つ目は妙高自然の家を過ぎたスキー場の登り
- 三つ目は瑪瑙山の登り
すべて急登です。
この急登を含む区間の時間は8’00/kmほどでした。
同じキロ8分でも内容が違います。
斑尾山への登り
15㎞地点の斑尾山の登りは、
「あえてペースを抑えて、走れそうなところも走らずに我慢してパワーウォークにした8’00/km」。
まだ前半ですから、走れそうなところもあえて歩きました。
ここも曲者です。
がんばれば走れそうなのです。
しかも周りにはいつもレースで競い合うランナーがたくさんいます。
「あの選手がいったから私もついていかなきゃ」となりそうなところを我慢します。
ここでも後述する“心拍140しばり”をおぼえておき、130台で進みます。
妙高自然の家を過ぎたスキー場の登り
80㎞地点のスキー場の登りは、
「明らかに走れない登り。パワーウォークの方が確実に速いから歩いた8’00/km」
レースで最もパンチが効いている区間です。
まだ80㎞残っているのに、心を折られるような登りが目の前に立ちはだかります。
トップ集団は朝焼けを背に登ります。
まだ暗いので、ヘッデンの明かりが灯すのは坂だけです。
「コースで一番キツい」と覚悟しておくと心に余裕ができます。
ここでは、歴戦の強者ランナーたちが眠気や疲労、脚の痛みと苦闘しながら進んでいました。
いつも上位に名を連ねるメンバーで、この大会でもtop10に入賞した方々もいました。
その猛者たちが、止まりそうなスピードで登っているのです。
コース脇で体育座りをして、あしたのジョーのようにうつむいている方もいました。
あらゆるトラブルの芽が、この急登で吹き出すのかもしれません。
戦略としては、この急登前のエイドステーション(国立妙高青少年自然の家)でしっかり休み、補給することだと思います。
筆者は、このエイドで足底筋の痛みに耐えられず10分ほどセルフマッサージをしていました。
そこで
「この先、コースはどうですか?」
とエイドスタッフさんに聞いたところ、
「余裕だよ。平地だよ。」
と笑顔で答えてもらいました。
みなさん悪い笑顔をしていたので
「ホンマかいな!!」
と突っ込んでおきました。
ともかく、余裕をもったペースでここまで進んでいたのでよかったです。
キツい状態でこの急登にとりついたら、坂の途中で止まって呼吸を整える、などしなければならず大幅なタイムロスしていました。
エイドでは開き直って大休憩をしてもいいかもしれません。
その代わりコースでは止まらない、というメリハリをつけるのも戦略の一つかと思います。
(エイドでゆっくり足裏マッサージをしていても、この先の急登で5~6人抜くことができました。)
瑪瑙山の登り
瑪瑙山の登りは、
「タイムを削るためには走りたいけど、走れるほどの余裕がないため仕方なくパワーウォークで押した8’00/km」
です。
ここで走れる方は間違いなく勝者です。
残り15km、この登りで走っている人を見たことがありません(110㎞もマイルも)。
瑪瑙山の登りで走れる人は、完璧にレースマネジメントをこなしてきた人だと思います。
どなたか、チャンレンジしてください。
「山頂まで走れた」という方はぜひ教えてください。
本当にすごいです。
ここでは誰もがペースを落とします。
焦らないことです。
みんな苦しいです。
トップで登りに取りつきましたが、何度も後ろを振り向いて追いつかれていないか確認をしました。
登りが続くということは、進むのに時間がかかっているので、距離ではなく時間で補給をするとよいと思います。
「20分ごとグミ1つ」
「30分ごとジェル1つ」
という具合です。
この直前の戸隠スキー場エイドで、固形物の麺類(うどん?そば?)がおいてあります。
(筆者が通過するときはまだ食べられませんでした)。
しっかり食べることができれば、この登り中に消化吸収できるはずです。
瑪瑙山を登り切ってしまえば、もう急登はありません。
最後の登りだと思えば、精神的に励みになります。
ただし、出し切ってはいけません。
この先の林道が長いのです。
瑪瑙山の下りと林道、全部走れます。
スピードを上げて走れたらタイムを短縮できます。
瑪瑙山の登りと下りで脚を使い切らないこと、が大事です。
レース中、気をつけること①

スタートしてすぐ、スキー場のゲレンデを走ります。
ギャラリーが応援してくれるので、高揚感も相まって知らず知らずペースを上げてしまいます。
道もダブルトラック以上の幅があります。
これが曲者です。
ペースを上げようと思ったらいくらでも上げられてしまうのです。
「絶対やめてください!歩きましょう」
と声を大にして言います。
筆者の場合は、スタートしてすぐの登りは50位なのか100位なのかわからないくらい、たくさんのランナーが前に見えました(それでも優勝できました)。
焦ったらダメです。
自分の心拍数や呼吸音を確認して、
「本当に160㎞いけるのかどうか?」
を考えてペースを決めてください。
ちなみにこのスキー場登りで心拍数は毎分140回でした。
呼吸はギリギリ、
「スースーハーハーができる」
程度。
「140でこの呼吸なんだな」
とベンチマークにしてこれ以上、上げることはしないようにしました。
なぜこの強度をベンチマークとしたのかというと、これ以上、上げた状態で160㎞完走できるイメージができなかったからです。
逆に、心拍130台に下げると色付き音付きでフィニッシュを明確にイメージすることができたのです。
この「上限140」はラストスパートまで守り続けました。
レース中、気をつけること②

黒姫エイドを過ぎてからのダラダラ林道登りがコースのポイントの一つです。
約5kmだらだらとした登りが続きます。
ここで前述した心拍数140で走って登れるかどうかがポイントです。
筆者は、心拍数142~143ほどである程度のペースで走って登ることができました。
前年に出場した110㎞の部でも同じところを走りましたが、途中歩きました。
そこを走って登り切れたので後半に向けて手ごたえをつかみました。
この先は笹ヶ峰から大橋林道とフラットな道が続きます。
「黒姫後の登りで走れる=この先でも走れる、つまりゴールまで走れる(瑪瑙山以外)」
です。
仮にここでベンチマークとした心拍数で走れなかったとしても、無理して走る必要はないと思います。
ここで走るのは、上位進出を狙いたいとき、少しでもタイムを削りたいときです。
笹ヶ峰周辺や大橋林道まで来たら、もっとフラットで走りやすいコースになります。
そこで走ればいいと思います。
タイムを削るために重要なこと

タイムを削るには、
①エイド滞在時間を短縮する
②走れるところでいかにペースを上げて走る
③急な登りで脚を使わずにパワーウォークで“しのぐ”
ことが大切です。
エイド滞在時間を短縮する
2019大会では、①のエイド時間についてはこだわっていませんでした。
レース前から足底筋に痛みがあり、デポバックのある黒姫ではセルフマッサージをしてテーピングを巻き直すつもりでいました。
実際のレースでは、その2つ前の妙高エイドでも痛みに耐えられずマッサージをしました。
エイドタイムにこだわって、マッサージやテーピングを怠っていたら、途中で歩いたり止まってしまっていたりしたかもしれません。
エイドでは、補給・テーピング・マッサージなど“完走するためにやるべきことはやる”というスタンスでいくのもいいかもしれません
走れるところでいかにペースを上げて走る
これは走れるコースの信越五岳だからこそ効果があります。
走れる林道やシングルトラックがたくさんあります。
コースの60%以上は走れるのではないでしょうか。
ここをペースを上げて走れるかどうかでタイムが違います。
ただし、“がんばる”のは最終ウォーターエイドの飯綱林道入口からです。
前途の急登3か所以外は、ほぼ走れてしまうコースです。
林道は
「走っているけど、余裕しゃくしゃく」
くらいでいくとよいです。
“急登もがんばり所”“林道もタイムを削るためにがんばる”では100マイルもちません。
ちなみに登りでは心拍数140上限しばりですが、フラットな道だと120台で走れます。
平日の練習で行うjogと同じくらいです。
「フラットな道では、普段のjogと同じ負荷(きつさ)で走る」
というのもいいかもしれません。
※厳密に言うと荷物があるので、ペースは普段のjogより遅くなります。
林道のペースと普段のjogの「負荷」を同じにするイメージです。
急な登りで脚を使わずにパワーウォークで“しのぐ”
だからこそ、急登は、脚を節約して省エネで進むためにパワーウォークでしのぎます。
脚の筋を使わないように、腕と肩で太ももを押して進みます。
レース後は太もも前側が真っ赤になりますから、天狗バームやガーニーグーなどを太ももにも塗っておきましょう。
急登で脚を節約しておくと、走れるところでペースが保てます。
ペースから見えてくる信越五岳100マイル

1キロあたり6分57秒で163㎞走りました。
わかりやすく7’00/kmで走り切ったと考えます。
急登のある区間を7’00/kmで走ってしまうとすぐに脚が売り切れてしまいます。
「ペースの遅くなる急登のある区間は8’00/kmくらい」
と書きましたが、急登を登るスピードはもっと遅く10’00/kmくらいかけていいと思います。
登り切ってしまえば、下りでペースは相殺されます。
ですから登りで
「こんなペースでいいのかな?」
くらい余裕をもっていくことです。
相殺された結果、8’00/kmくらいになるということです。
そして走れる区間では、7’00/kmは余裕で切れます。
特に夜間に気温が下がって走りやすいコンディションとなったとき、フラットな林道ではキロ4分台の前半で走れます。
100マイルの部はスタートが夜なので、翌朝から気温が上がります。
前半でしかも夜間と同じイメージで走れるとは限りません。
「前半の夜間は余裕をもって走り、後半の昼間はその余裕分を使って走る」
というイメージです。
最後の飯綱林道ではぜひ最速ラップを刻んでください。
私は3’50くらいでした。
(スントの最高ペースは3’09/kmとありましたが、これはさすがにないと思います)
全体のペースが結果的に7’00/kmとなりました。
これは、偶然ですがハセツネと同じペースです。
ハセツネを72㎞として504分、つまり8時間24分です。
これは私のハセツネの結果とほぼ同じです。
ハセツネに出場されたことのある方は、ハセツネの平均ペースを信越五岳に見立ててみてもいいかもしれません。
筆者のスントデータより

- 合計行動時間19時26分30秒
- 距離162.2km
- 平均ペース7’11/km
- 最高ペース3’09/km
- 平均心拍数125bpm
- 最大心拍数144bpm(胸ベルト装着)
- 累積上昇6008m
- 累積下降5802m
- 上昇時間11時間12分
- 下降時間6時間51分
- 最高高度1735m
- 最低高度250m
- カロリー7334
- 歩数19万1030
- 気温23度
まとめ

いつも最後までお読みいただきありがとうございます。
ご質問ありましたらインナーファクトのページやフェイスブックで問い合わせ下さい。
では、最高の100マイルレースを楽しんでください。
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