ロングレース(UTMFやARTなど)に向けて練習されている方も多いのではないでしょうか。
「このままでよいのだろうか?」
「練習量は大丈夫だろうか?」
「方法はあっているのかな?」
など、不安になる時期でもあります。
そこで私が8位になったUTMF2019の1月から大会までの練習内容を解説します。
役に立ちそうなところは参考にしていただき、失敗は反面教師にしていただければと思います。
目次
UTMF2019前、4か月の練習 数値のみ
12月 走行距離150㎞ 累積標高ほとんど0m
1月 走行距離680㎞ 山での練習は計5日 累積標高10250m
2月 走行距離486㎞ 山での練習は計4日 累積標高11206m
3月 走行距離392㎞ 山での練習は計4日 累積標高18900m
4月第1週 走行距離113㎞ 累積標高2500m
4月第2週 走行距離35㎞ 累積標高0m
4月第3週 走行距離43㎞ 累積標高652m
4月第4週 UTMF
トレーニング解説 12月
疲労がたまっていないフレッシュな状態で100マイルのトレーニングを開始するために、強度と量を落としました。「1月になったらやるぞ」という気持ちで、思い切って休むことに集中しました。
1年間の疲労を抜いておくことも必要です。
結果的に1月からの100マイル練習が継続できたので、12月のうちに休んでおいてよかったと思います。
- 平日の12㎞のjogを8~10㎞のjogに変更。
- トラックやロードでのスピードを上げたポイント練習はなし。
- その代わり、jogの後に流し100m×5を入れるなどして筋肉に刺激だけ入れる。
- 月間走行距離150km程度。
- 月の後半2週間は本格的にオフ。
- “走りたい”という気持ちを蓄える。
トレーニング解説 1月前半
本格的に100マイルレースに向けてのトレーニングを開始しました。
まず、「長時間、山で動き続けたら体はどうなるのか?」をチェックしてみないことには、今後のトレーニングの方針が決まりません。
そこで、成人の日を含む3連休でバックトゥバック(セット練習)を行うことに決め、それまでの11日間をセット練習に耐えられる体づくりに集中しました。
- 休日 am15kmjog pm15㎞jog ペース5’00/km 計30㎞
- 平日 夜10~12㎞jog ペース5’00/km
- ポイント練習 トラック16000m ペース3’45/km
この16kmトラック練習をした時の動きが悪くなかったので、「これで山のロング練習ができる」と手ごたえをつかみました。
Jogの量を増やしましたが、ペースは上げていません。
質も量も追い求めるとケガのリスクが高まるためです。
セット練習…☆山ロング練習→☆トラック12000m→☆登りバーチカル練習
山ロング練習
養老山脈トレイルレースで使用される、多度山周辺の林道メインのコースです。
理由は、ここしか雪がつかずに練習できるところがなかったためです。
本当はもっとアップダウンの激しいコースがいいのですが仕方ありません。
「8時間は動き続けよう」と決めて走り始め、途中で固形物の補給(カップ麺、パン、バナナ)をしてエネルギー切れにならないようにしました。
カップ麺など、車に戻ってきて補給しました。
行動10時間、累積標高3000m、距離80㎞、ペース7’29/㎞。
案外走れたのも、これまでに、jogとポイント練習で体を作っておいたからだと思います。
ただし、後半は筋肉痛が激しくなり、登りでは走ることができませんでした。
- 筋肉痛に慣れないと100マイル完走できない
- ここからさらに80㎞走るためには、ペースを維持し続ける体を作ることが必要
- つまり、強度に耐える体ではなく、継続して動き続けられる体にすることが必要
pmトラック12000m ペース3’50/㎞ 心拍数150前後 (am10㎞jog)
前日の80㎞の筋肉痛が残る中で、どれだけ走れるか?をテーマにトレーニングしました。
量を確保したいので、maxまで追い込むことなく、心拍150前後をターゲットにしました。
ダニエルズのランニングフォーミュラでいう、Mペース(マラソンペース)くらいです。
午前中にほぐしのためのjogで体を温めておいたことで、夕方のトラック練習にうまく入れました。
シューズはズームフライフライニットです。
厚底シューズのおかげで、最小限の労力でペースを上げられた感がありました。
- 筋肉痛バリバリでも、厚底シューズをはけば山練習の翌日でも走れる
登りバーチカル練習
累積標高を稼ぎ、登りの筋力をつけようとしましたが、明らかに体が動かず、累積1800mほどでギブアップ。
ふくらはぎからアキレス腱にかけて痛みが出たので、これからの練習では、ふくらはぎとアキレス腱のテーピングをするようにしました。
- 3日間はもたないけど、2日間ならいける
- 山→トラック(ロード)、トラック(ロード)→山、ならできる
- 山→山は、飽きが来て練習効率が悪そう
トレーニング解説 1月中旬~2月下旬
2月中旬にふどうの森トレイル(20㎞)に出場するので、練習量が落ちます。
それまでに量を確保しようと毎週末、
土曜日:山ロング
日曜日:ロードorトラック
を繰り返しました。
2日連続で山に入らないのは、「昨日がんばったから、今日はいいだろう」という言い訳を作らないためです。
トラックだと入場料金を払っていますし、他のランナーもいることで刺激になります。
また、トラックだと「1時間だけがんばれば終われる」という心理的ハードルも下がるので日曜日はトラックをメインの練習にしました。
平日は10~20㎞ゆっくりjogのみ、または完全休養を適宜入れています。
土曜日と日曜日の練習パターン①
土曜日 山ロング走7時間 計62㎞ 平均ペース7’00/km 累積標高2150m
日曜日 トラックの外周450mで20㎞走 平均ペース4’32/km
土曜日と日曜日の練習パターン②
土曜日 山ロング走8時間 計71㎞ 平均ペース7’24/km 累積標高2770m
日曜日 トラック16000m 平均ペース3’51/km
土曜日と日曜日の練習パターン③
土曜日 山ロング走50㎞ 平均ペース7’40/km 累積標高1500m
日曜日 坂のあるロード3.6㎞を8周 平均ペース4’47/km
プラス1周全力を2本rest3分 1本目ペース3’34/km 2本目ペース3’32/km
土曜日と日曜日の練習パターン④
土曜日 山ロング走8時間 計62㎞ 平均ペース8’00/km 累積標高3000m
日曜日 平坦ロード12㎞ 平均ペース3’57/km
このように、練習パターンやコースを固定することで、自分の体の状態を知ることができました。
例えば、
「先週よりも楽に走れている→距離への耐性がついてきた」
「これまでと同じペースで走れない→回復が間に合っておらず、疲労がたまりつつある」
などです。
練習で思ったより走れても、思ったより走れなくても、淡々と継続していくことが重要です。
特に思ったより走れないときは、「ああ、こんな風に走れなくなるんだな」という経験値となります。
これが100マイルの苦しいときの予行練習になります。
また、疲労で練習できなくなるくらいの強度と時間を知ることができますので、レース前の調整で「やったらいけないライン」を知ることができます。
トレーニング解説 3月
ここでUTMFまでの日程を確認したところ、
3月第4週OSJ新城ダブル
4月第1週奥三河パワートレイル
4月第4週UTMF
でした。
つまり、レース以外で練習できるのは3月上旬までということです。
そこで、
①レースの半分までは経験しておきたい
②走れないような上り坂を練習しておきたい
という2点より雪解けしつつある鈴鹿山脈入道ヶ岳で12時間練習をすることに決めました。
入道ヶ岳12時間練習① 計9本 12時間37分 計49㎞ 累積標高6200m
ただひたすら、同じ山を登って下っての繰り返しです。
冬の山なので、道迷いの危険がなく、すぐに駐車場に置いてある車で体を温めることができるということで選びました。
結果、「12時間動いても大丈夫」ということが分かったので、100マイルへの自信がつきました。
ここで欲をかいてしまい、この4日後に雨のトラックで12000mを3’45/kmでやり、さらに翌土曜日にもう一度同じ12時間練習を入道ヶ岳でやろうとしました。
入道ヶ岳12時間練習② 計7本 10時間08分 計39㎞ 累積標高4900m
結果、7本でギブアップ。
4本目くらいから風邪をひき始めてしまい、7本目が終わる頃には明らかに風邪症状がひどくなっていました。
欲をかいたのが失敗の原因です。
「質も量も追い求めるとダメ」とわかっていたのにやってしまいました。
これまでの練習がうまくいっていたので、「もっとやればもっと強くなる」と過信してしまいました。
今、思えば、12時間練習で十分に負荷はかかっているので、疲労を抜くべきでした。
3月第4週OSJ新城ダブルへ出場 64㎞ 9時間38分 5位
風邪は治ってはいましたが万全とは言えず、慎重にレースを進めました。
終始安全に走って64㎞を9時間38分で走って順位は5位でした。
あくまでUTMFを照準に定め、「全開では走らない」を念頭に走り、1周目と変わらないタイムで2周目を走れたことが収穫でした。
トレーニング解説 4月
平日のjogは量を減らし、5~8㎞ほどにしました。
その分、スーパー銭湯へ行ったり、針治療を行ったりと疲労を回復させることに時間をつかいました。
朝3㎞走っただけで、あとは思い切って休み、という日もたくさんとりました。
ここまで来たら、これまでやってきたことを信じてジタバタせずにいました。
何かやっていないと落ち着かないので、エイドの食べ物を書き出してみたり、レースのタイムスケジュールを考えたりと、トレーニング以外のことをするようにしました。
4月第1週(utmf3週間前)奥三河パワートレイルへ出場 70㎞ 7時間32分 2位
OSJ新城ダブルから2週間で奥三河パワートレイルです。
OSJ新城より幾分か調子が戻りつつありましたので、その調子の確認しつつ走りました。
このレースは前半に長い下りがありますが、中盤から後半にかけても脚は動いていたので、練習の成果を実感しました。
「全開では走らない」つもりでしたが、がんばってしまいました。
4月第2週(utmf2週間前)平坦ロード30㎞走 平均ペース4’00/km
ずっと山ばかり走っていたので、スピードを上げた練習を入れようと思いました。
また、OSJ新城ダブルと奥三河PTで山の刺激は十分に入っていたと判断しました。
レースの疲労と暑さが影響して、冬のトラックで走っていたような1キロ4分を切るようなペースでは走れませんでした。
ここで冬のトレーニングでは経験したことのない、「暑さ」というキーワードが出てきました。
この頃には、UTMF本番は「無理をせず、マイペースで走る」というイメージをもっていました。
4月第3週(utmf1週間前)入道ヶ岳1本 計71分 計5km 累積標高652m
どのレースでも1週間前は入道ヶ岳1本を刺激として入れています。
UTMFと同じ装備、同じ服装で最終チェックを兼ねて行いました。
トレーニング解説 まとめ
冬だからこそできた練習だったと思います。
これと同じメニューを夏にはできません。
逆に夏なら、冬では雪で入れない低酸素の高地の山に行けるメリットもあります。
その季節にあった練習を考えて行っていくことが大切かと思います。
高校、大学と陸上競技でまったく通用しなかった私が、トレイルラン100マイルレースであればトップ選手と争うことができます。
トレーニングの継続と、少しの工夫で上位に食い込んでいくことができます。
身体能力だけで順位が決せず、レースまでの戦略やレースでの戦術で大きく順位が変わることが魅力なのかもしれません。
そんな魅力を感じて100マイルレースにチャレンジされる方々の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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