奥三河パワートレイル攻略法

年が明けると毎年4月のビッグレースである奥三河パワートレイルへの準備をされるランナーの方も多いと思いますが、2023年大会は10月1日に開催されることとなり、例年とは違うスケジュールを計画される方もいらっしゃることでしょう。

このレースには4回出場させてもらいすべて完走することができました。
走る度に難易度の高いレースだと感じます。
長期間の準備をして臨むにふさわしい大会だと思います。

2023年大会に出場を計画される方は、この大会を一年の締めくくりレースに位置付けるかもしれません。
ランナーの皆さんが納得のいくレースができる一助となれば幸いです。

筆者の奥三河パワートレイル実績

  • 第1回(2015)第2位 7時間41分
  • 第3回(2017)第8位 8時間14分
  • 第4回(2018)第1位 7時間42分
  • 第5回(2019)第2位 7時間33分

コース攻略法

スタート茶臼山高原~cp1つぐ高原グリーンパーク(15㎞)

スタートしてしばらくロードが続きます。
シングルトラックに入る前にロードを設定して渋滞緩和の意味合いもあるのでしょう。

早朝スタートのため、夜間大会指定のバス移動の方も多くいるのではないでしょうか。

体がまだ起きていないうちにペースを上げると負担がかかるのでゆっくり目に入ります。
普段のジョギングくらいのペースです。
筆者は4分30秒/kmより早くならないように意識します。

大会のスタートはテンション上がりますし、位置取りを重視するとペースも上がりがちになりますが、そこは他のミドル~ロングレース同様に抑えます。

必携品、食料と水と背中に背負っている中で、スタート後に攻めたペースで走るのはリスクが大きいです。

「少し遅いかな」くらいでちょうどよいです。
筆者は1,2位だったレースでもこのロードでは30位前後を走っていました。

ロードが終わると茶臼山のピークを目指します。
登りのシングルトラック。
時々広くなります。

脚がまだフレッシュなので走ろうと思ったら走れますが、あと70㎞あると思って歩きます。
茶臼山手前で上ったらグンと下り、また茶臼山ピークに向かって200m上り、グンと下ります。

この下りが曲者。
木の階段の下りですが、段差が大きく、浮石がゴロゴロしていて足首をグネりやすいです。

周りのランナーはガンガン下っていくので、知らず知らず攻めのペースに巻き込まれますが、下りも慎重に行きたいものです。
理由は、中盤のアップダウンが繰り返されるギザギザポイントでタイムがかなり変わってくるからです。

奥三河パワートレイルの序盤にがんばって5分、10分タイムを稼いだとしても、中盤~後半にかけてのアップダウンで脚が止まってしまうと、その貯金は一気に吐き出されてしまいます。

茶臼山以降、落ち着いたペースでcp1つぐ高原グリーンパークまで下っていきます。

cp1つぐ高原グリーンパーク~cp2碁盤石山登山口(24㎞)

ここでレースも落ち着いていきます。
スタートのテンションが落ち着き、巡航ペースが見えてきます。

ここでは調子のチェックをします。
ダラダラとした緩い上りのロードでがんばらない程度のペースで走ってみて、自然と進んでいく感じであれば調子は良い方です。
そのまま進みます。

逆に戻される感じがしたり、がんばってないとペースが落ちてしまう感じがしたりしたら、「調子が悪い日なんだな」と割り切ってあえてペースを落とします。
あえてペースを落としても、最終盤になって元気になってくることもあります。

要は、その時の調子にあったペースで進むことが大切です。
他のランナーに抜かされても抜き返さず、絶えず自分の体と相談しながら最適ペースで進みましょう。

コースは、気持ちよく走れてしまうので、補給を忘れがちです。
「30分おきに摂る」など時間を決めてジェルや塩分を補給しましょう。
補給(ジェル、塩タブレット)は30分に1回、水は15分に1回喉が潤う程度、がちょうどよいと思います。

cp2碁盤石山登山口~cp3小松(38㎞)

cp2からcp3小松まで約10km「これでもか」というほどダラダラ下ります。
第1回大会では砂利道でしたが、整備が進み今ではほとんどがアスファルト舗装されています。
筆者は4分20秒~4分00秒/kmで下っていきます。

目安は、スタート直後のロードより下り傾斜がある分、少し速くなる程度です。
ここもペースを上げようと思ったら上げられます。
自然に上がってしまう方は、この先の小松~四谷のアップダウンや最終盤の鳳来寺山手間のいくつも出てくる偽ピークをイメージするといいです。

「あのキツい区間のために、今はタメておこう」と言い聞かせながら進みます。

下り切ってから平地に入ると急にズンッと体が重く感じられることがあります。
下りの衝撃によって体(脚筋や内臓)がダメージを受けている証拠です。
こんな時は、この先のcp3小松でしっかり休憩することが必要です。

cp3小松手前で、山から視界の開けた集落に下りてきて、同時に直射日光も受けることになります。
帽子など日光を遮るもので疲労を抑えるのもいいでしょう。

cp3小松エイドは地元の方々が大歓迎してくれます。
このエイドを楽しみに前半を走るのもいいかもしれません。

cp3小松~cp4四谷千枚田(47km)

小松から四谷まで小刻みなアップダウンが続きます。
シングルトラック、時々階段がある筋力的に厳しいコースです。

小松から四谷で9kmだけですが、ペースの上がらない山道100%なので、思った以上に時間はかかります。
ペースを上げようと思ってもコースがハード過ぎて上がりません。

しかし、ペースを落としてしまうと、どこまででも落ちてしまいます。
階段の上り下りでは、太ももの内側が攣りそうになります。

気持ちのいいシングルトラックに入っても脚がやられてスピードが出ません。
小松手前の10㎞下り(“これでもか”という下り)の影響です。

「あんなに走れていたのに、なんでこんなペースが落ちるの?」と気持ちも焦ります。

普段、練習で10㎞の下りのロードをすることなんてありませんし、ましてやそのロードの後に山道を走る練習というのは、よっぽど意識していないとやりません。

経験したことのないことをすると、体は耐えられません。

筆者は第1回大会では、人生初のハムストリングス&内もも全攣りを経験しました。
この脚攣りもあり、優勝に3分届かなかった悔しい記憶があります。

この区間はとにかく凌ぎます
ペースが落ちてきても、その落ちを最小限に凌ぐ、攣りそうになってもストレッチやセルフマッサージで凌ぐ、とにかく凌ぎましょう。

場合によっては、奥の手としてザックに忍ばせておいたOS1ゼリーや、予備の塩分タブレットや痛み止めを摂取する必要もあると思います。
ゴールを考えたらまだ遠く、リタイヤしたい気持ちが出てくる魔のポイントです。
せっかく出走したレースの完走のため、あの手この手を繰り出しましょう。

この先の棚山高原まで行ってしまえば「あと10kmだからがんばろう」と思えます。

この四谷前後の区間を乗り切るかどうか、がこのレース攻略の重要ポイントとなります

cp4四谷に着いたときに「まだ四谷ぁ?」と感じるとこの先が苦しく感じます。
第1回大会、脚を攣りながら四谷に入り、その先が地獄でした。

四谷を過ぎると、勝負のポイントとして自分の残りエネルギーを全投入すべきラスト20㎞です。
「四谷だ。さぁ、ここからが勝負だ!」と思えるレースプランを計画し、ペース配分を行い、気持ちの準備をしておきましょう。

四谷エイドも小松エイド同様、大歓迎してくれます。
心も体も折れてしまっていても、エイドで癒されることで復活するかもしれません。
エイドのパワーもこの奥三河の魅力です。

cp4四谷~cp5棚山高原(54㎞)

「ここから勝負だ」という気持ちを作って四谷を過ぎたら、勝負の残り23㎞です。
四谷を出ると2㎞のロードの後、400mアップの上りです。

気持ちを準備した状態でこの上りに挑むと順位を上げることができるのでモチベーションも保てます。

苦しい状態だとしたら「耐える」の一言です。
ただ一つ救いなのは、「全員苦しい」ということです。
この区間を楽に走れる人はまずいないと思います。

見渡すランナーみんなが苦しいので「このツラさは自分だけじゃない、みんな一緒だ」と自分を励ましながら進みましょう。

そして偽ピークが何度も現れます。
「このピークを過ぎたら下れる」と期待してはいけません。
またすぐに上りになるからです。

期待が外れて精神的ダメージを受けると心も削られます。
そうならないように淡々と、一つひとつ偽ピークを攻略していきましょう

棚山高原が近づいてくると東海自然歩道の標識が出てきます。
「棚山高原〇km」の数字が減っていくことで自分の進み具合を確認することができます。
コースもなだらかになり、走れるようになってきます。

cp5棚山高原~フィニッシュ(70㎞)

最終エイド棚山高原の前後は走れるコースです。

エイドを出てから少し行くと、一気に250m下り、その250mを鳳来寺山まで上り返します。
250m下っているときには、「次は上り、次は上り」と言い聞かせて気持ちの準備をします。
また大股ではなく小股でステップを刻み、脚の筋肉にこれ以上のダメージが加わらないようにします。

上りに入ったら、「最後の上り、最後の上り」と言い聞かせて最後の力を絞り出します。
ここでがんばることでフィニッシュタイムが大きく変わってくるでしょう。

ただし、上りの脚は使い切ってもいいですが、下り用のエネルギーと脚を残しておくことが大切です。
上りをがんばったがために、鳳来寺山のピークで全身攣ってしまった、なんてことになるとフィニッシュまでの下りを走ることができません。

鳳来寺山を過ぎるとあとはフィニッシュまで下り基調になります。
ここまで走ってきたことや厳しい関門をクリアしてきたことをいっしょに走るランナーと称え合えるといいですね。

荘厳な雰囲気な鳳来寺の石畳や階段を通過し、フィニッシュの旧門谷小学校となります。

ペースとトレーニングについて

筆者が出走した2019年大会まではフィニッシュが湯谷温泉でしたので、現コースより少し長く75kmほどありました。

ざっくり75㎞を7時間半、つまり1kmあたりのペースは6分。

下りメインの前半と上りメインの後半でペースを考えると、前半35㎞は5’00/km、後半35㎞は7’00/kmと言えます。

35㎞をロードで走り切る練習だけ、あるいは山道だけ走る練習では対策としては不十分です。
理想は、ロードを速いペースで走る練習をしてから、アップダウンのある山道を長時間走る練習です。

10~20㎞走+2~3時間山道走(累積標高1000~1500m)などできるとしっかり準備できたと言えます。

しかし時間的にも練習環境的にもロード(トラック)と山を組み合わせた練習を毎週行うことは厳しいです。
しっかり練習できる日が週に2日の場合は、1日を平地やトラックで20㎞ほどを速めのペースで走る練習を行い、もう1日を山で練習して脚作りを行うとよいと思います。

土日に集中して練習する方でもバックtoバック(続けざま)の要領で、土曜日ロード+日曜日トレイル(またはこの逆)を取り入れてもいいと思います。

要は奥三河パワートレイルのレース中におこりそうなキツさを前もって体験できるような練習をすればいいということです。

関門をどう考えるか

cp間の距離と関門時間を見ると、コースの特徴が見えてきます。
「cp3までは走ってね。cp4~5はほぼ歩き。ラストまた走れます。」わかりやすいですね。

  • cp1つぐグリーンパーク(15㎞) 15㎞で2時間  8’00/km
  • cp2碁盤石山登山口(24㎞)   9kmで1時間半 9’00/km
  • cp3小松長江老人憩いの家(38㎞)14㎞で2時間  8’34/km
  • cp4四谷千枚田(47km)     9kmで3時間  20’00/km
  • cp5棚山高原(54㎞)      7㎞で2時間  17’08/km
  • フィニッシュ(70㎞)       16㎞で2時間  7’30/km

走りが得意なロードランナー系の方は、cp3までである程度の貯金が必要です。
cp4~5で止まらない程度に早歩きでタイムロスを最小限にする作戦でいきましょう。

走るより山(トレイル)が得意な方にとっては、前半の下りをいかに上手く走り下るかがポイントになります。
トレーニングの段階で長い下りを走る峠走などを取り入れ、克服してレースに臨むのもアリです。

ロードを走ることが苦手なまま、ぶっつけ本番で10㎞の長い下りを走ったら、きっと脚が売り切れてしまいます。
すると、せっかく得意な山岳区間にたどり着いたとしても快調に進めません。

「ロードは苦手だけど山岳は得意なんだよなぁ」という方は、ロードの距離走やトラック練習、峠走を取り入れて苦手を克服するチャンスにしてみてはいかがでしょうか。

10月開催の奥三河パワートレイル

10月初めの開催となり、暑さが残る中でのレースです。
残暑の9月で疲労を抜きつつ、10月のレースに備えることが大切です。

8月に比べてだんだん涼しくなる9月は、がんばれてしまう時期です。
距離も踏めてしまいます。
疲れた状態で臨んでしまうと、70㎞のレースは心も折れやすくなってしまいます。

9月後半は思い切って練習を制限してもいいでしょう。
例えば、週2回しっかり練習するのは9月1週までにして、2周目以降は土曜日だけしっかり練習して、あとは軽くジョギングする程度か思い切って休むことに充てます。

レースを入れている人もいるでしょう。
9月にレースを走り、奥三河パワートレイルに参加する場合は、全力を出すのはレースだけにしておいて、練習はほどほどにしておくようにしましょう。

9月のレースと奥三河パワートレイルの間に何をしようか迷った場合、練習はジョギング以外しなくていいと思います。
9月のレースで筋肉に刺激は入っていますので、回復に集中しましょう。
奥三河パワートレイルの後のレースを予定される方は、疲労回復期間を多めにとっておくことが賢明です。

このレースは、下りのダメージを抱えたまま後半のトレイルをがっつり35㎞攻めなければならないタフなコース設定です。
いつものトレイルレースより1週間、10日多めに回復期間をとってもいいと思います。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。

東海地区で開催されるトレイルレースとしてはビッグレースとなる奥三河パワートレイルです。
多くの時間をかけて準備し、チャレンジする甲斐があります。

この記事を書いているのは2022年末ですが、これから2023年10月の奥三河パワートレイルに向けて準備を開始してもいいと思います。

これを読んだ多くの方が、笑顔で奥三河のトレイルを走り、充実した大会になることを願っています。

ご質問などありましたらインナーファクトのページやフェイスブックで問い合わせ下さい。
では、最高の100マイルレースを楽しんでください。

末脚トレイルランナー末脚トレイルランナー

末脚トレイルランナー

末脚トレイルランナーです。できるだけ細かくトレイルランニングレースの攻略法を紹介していけたらと思います。 主な戦績:2019信越五岳100マイル優勝 2019UTMF8位 2018奥三河パワートレイル優勝 2018比叡山トレイルランニングレース50㎞の部優勝 ハセツネCUP7位(2015,2018)6位(2016)

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