比叡山 International Trail Run 優勝者が解説する攻略法と練習方

2015年の第一回大会から参加している比叡山 International Trail Run
わたしが参加したカテゴリーはすべて50㎞の部で、結果は第1回の2015年が3位、2016年が15位くらい、2017年は5位か6位、2018年は1位でした。
このレースをわたしなりのレース攻略法を紹介させていただきます。

比叡山 International Trail Runとは

滋賀県琵琶湖西岸の山域で、50kmの部(累積標高3700m)、50マイルの部(5000m)、23kmの部(1400m)に分かれて行われるトレイルレース。
制限時間は、23km9時間50分、50㎞11時間、50マイル11時間30分(50km地点での制限時間は7時間30分)。
スタート/ゴールは比叡山延暦寺、関西地区でも大規模な大会です。
細かい大会詳細は大会公式サイトをご確認ください。


第1エイド(11㎞地点・ロテルド比叡)~第2エイド(20㎞地点・スタート/ゴール地点)

第1エイドから近江坂本にある日吉東照宮まで6㎞で500㎞下ります。
テクニカルな下りはありませんがオーバーペースに注意。

特に第1エイドで補給をしっかりした人は胃が揺らされて気持ち悪くなることもあるので、体の上下動を少なく胃を労わるように走るとよいでしょう。
胃に優しい走り方をしていると自然にオーバーペースを防げるので意識するといいです。

下りきった先には坂本のロードがあり交差点を左折した後は、ロードを上ります。
ここのロードで調子の良し悪しがチェックできます。
私の場合レース前半戦の走れる林道やロードの上りで無理なく脚が転がっていくように前に出ていたら調子は良いと判断しています。
逆に調子が悪いと脚がバタバタして心拍数も高め、ハアハアという息づかいも荒く聞こえます。
調子が良くてもあえてペースを維持して進み、悪いときは水やジェルを補給して気持ちを切り替えられるようにします。

ここまでの下りは激下りではなく時折走りやすいシングルトラックや林道を含むコースなので、楽しすぎてついつい補給を忘れがちに。
水や補給食をちびちびと摂取をすることも忘れてはいけません。

5月のレースではジェルは40分に1個、塩分タブレットを1時間に1個、水は10分ごとにゴクリと一杯摂っていました。
レースになるとテンションが上がり消耗も多くなるので、12月開催でも同じくらい摂ってもよいと思います。

日吉東照宮の石階段を登り、比叡山高校の隣を過ぎると私設エイドステーションがあります。
2018年大会ではミ〇スカポリスのコスプレで迎えてくれた私設エイドですが、今回はどのような趣向になるか楽しみですね。

ここから登りが長いのでジェル以外の固形物で補給できることは貴重です。
下りよりも登りのほうがゆっくり行動している分、胃腸への負担は優しくなります。
ジェルを持っている人は食べながら登ることをおすすめします。

第2エイドまで4㎞で500mアップのシングルトラックが続きます。
急にペースを上げると体への負担が大きいので、渋滞がおこっても補給にあてるなど落ち着いてパワーウォークで登りましょう。
パワーウォークは足首をロックして膝から下の筋肉を休ませるイメージで登るとよいです。
肩から先を腕と思って上半身の力をつかって太ももを押すとグッと力が入って体が前に進みます。
走りからパワーウォークに切り替えた瞬間心拍数は少し上がります。
パワーウォークはより全身の運動になるからです。

歩きと走りをどこで切り替えるべきか、単純に「歩いたら速い」のであれば歩きますし、走ったほうが速いのであれば走ります。
しかし、心拍が上がりすぎる場合は歩きを入れて息を整えます。

私はこのレースでは心拍数が登りの目安145~155の間におさまっていれば走り、それ以上になるときは歩きます。

この長い登りを登り切ったらスタート地点の大エイドステーションに戻ってきます。
第1回大会で「坂本からの登りで後ろを離せたな。」とエイドステーションに入ったら、次々に後続のランナーがやってきました。
このあたりはみんなまだ元気なのですね。

順位を意識しすぎるとそうでなかったときの精神的ダメージが大きいです。
変な期待はせず自分のペースで淡々とレースを運ぶべきだなと思いました。

第2エイド(20㎞地点・延暦寺スタート/ゴール地点)~横高山(27㎞地点)
※23kmの部スタート、北コースのみとなります。

延暦寺会館前の大エイドは充実しています。
お店も出店されているので現金を持っている人はジェルを購入できるかもしれません。

確実に補給を済ませたら北コースへ。
8の字の上のコースへと走り出します。

過去の大会で優勝候補の選手が北コースへ入ってすぐに「棄権するわと」引き返してこられる姿がありました。
マメができてしまったとのこと。
日頃から使い慣れたシューズと靴下で臨むのはもちろんのこと、しっかりマメ対策としてワセリン系の塗り薬を塗っておくのは大事だと再確認しました。

私はテングバームや薬局で売っている白色ワセリンを使っています。
比叡山トレイルのコースは下りも登りも段差が大きく、特に段差が大きい下りの階段や石段では着地した衝撃が筋肉を傷めつけるだけでなく皮膚も傷つけます。
レース前の足裏ケア、大事ですね

北コースに出たら2㎞ほど神社仏閣を横に見ながら標高差なく気持ちよく走ります。
青龍寺を過ぎるとせりあい地蔵まで急な下りになります。
京都大原方面に向かってのこの下りは石がゴロゴロしていてねんざポイント。

小股にステップを刻んで下りましょう。
真っすぐに下るのが一番速いのですが、リスクも大きくなります。
私なら、急な下りは少しジグザグ気味に下ってスピードを抑えながら下ります。

大原への下りでは、次の横高山に登るつもりで下りましょう。
コースの最大のポイントはここだと思っています。

下りだけに集中していると、次に登りになったときにカウンターパンチのようにダメージをくらいます。
それを防ぐために、大原の下りで「横高山への登りのために脚をためておこう」と思えるかどうかは大切です。
それくらい、横高山の登りはパンチ力があり、めちゃくちゃキツいです。
「このコースで一番キツい」と覚悟していれば心構えがあって耐えられます。
これが「こんなキツいの聞いてないよ」となったら精神的にまいってしまいます。

下りきって地蔵前の給水所で水を補給し、3㎞で500mただひたすら急登を登ります。
「さあここから勝負だ」という心構えで登っていくと途中私設エイドがあり、シングルトラックの両サイドから応援してくれるので励まされます。
この後の急な登りを前に一休みできるのも嬉しいところです。

この登りを通して走れそうなところはありません。
少し走れそうなところは呼吸を整えたり、補給したりするのにつかったほうがよさそうです。

景色のない単調なコースなので、私はここではカフェインジェルなどこれまでとは違ったジェルを補給します。
一番お気に入りの味を用意しておいて気分をリフレッシュさせたり、好きなコーラを残しておいてここで飲んだりしながら進みました。

50マイルの部では2週目はせりあい地蔵まで下らずに、青龍寺からまっすぐ北へ標高差少な目に進めるので気持ち的には楽です。
これが2週目も横高山を登るとなるとまったく難易度が違ったレースになると思います。

横高山(27㎞地点)~第3エイド(37㎞・仰木)

横高山を登りきるとコースの最北部へむかって小さなアップダウンを繰り返します。
横高山からの登りで脚が売り切れてしまった場合は、ここから先は完走を目指して確実に進んでいく戦略となります。

しかし、まだ脚が残っている場合はここから先でタイムに大きく差がでます。
小さな下りの後の小さな登りを下ってきた惰性で登ってしまうのです。
常に走ることが前提になりますが、そうするとリズムもペースよくなり大幅なタイム短縮になります。

コースは林道中心の走れるレイアウトなので、脚が残っていればここで走るか歩きでもペースを上げられると大きく順位があがります。

ここまでくればみんなキツいです。
少しの登りでも多くの人が歩くと思います。
その分、まだ余力の残っている元気な人は精神的にも優位に立てるのではないでしょうか。

32㎞地点の大尾山から瀧寺給水所まで2㎞で300mほど下ります。
過去の大会でこの下りで脱水症状になりかけ、塩と予備でザックに入れているOS1のジェルを摂りました。
ペースを上げているので発汗量やエネルギー消費も多くなります。

下りの林道を登っていくと仰木第3エイドがあります。
滝寺給水所を過ぎると3~4㎞ほど林道の登りが続きます。
ここも同じくプッシュできればタイムを稼ぐことができます。
登り全部を走ることは厳しいと思いますが、登りのゆるいところは少しでも走れると最終的な記録はよいものになります。
仰木エイドを過ぎてからの下りでしっかりと走れるだけの筋力は残しておくことが必要ですが。

第3エイド(37㎞・仰木)~第4エイド(45㎞・横川駐車場)~ゴール(50㎞・延暦寺)

仰木第3エイドからは5㎞で300m下り(ロード)、3㎞で400m登り第4横川エイドへ。
その後3㎞で300m下り(林道)、最後延暦寺まで2㎞で350m登るコースです。

仰木からダウン→アップ→ダウン→アップです。
このロードの下りでも先ほどの横高山と同じく、次の登り返しをイメージしていけるとよいです。
この2本の登り返しで完全に止まってしまわぬよう、仰木第3エイドからの下りは気持ちよく下りつつ、最後の登りの覚悟を決めましょう。

走る筋肉と登りの歩く筋肉は使う部位が違うとは思いますが、どちらかが完全に疲れ切ってしまうと、もう一方も同様に動かなくなります。
ロードの走る筋肉はここでほぼ出し切ってもよいですが、最後の登りのために、完全には使い切らないようにわずかに残しておきましょう。

最後のゴールへの登りは登るごとに傾斜がキツくなります。
距離表示に書かれてある鏑木さんのメッセージを噛み締めつつ進みます。

ここで走れる人は相当ペースメイクがうまくいった人、あるいは登りが超絶に強い人だと思います。
登りに自信がある方は試しにこの最後の登りで走って登りきれるかどうかチャレンジしてみてください。
私の場合は、登り口に入ってすぐに歩きました。
歩いた方が速かったからです。

高度計を見て進むとゴールが近いことがわかります。
「ここまで来たら出し尽くそう!!」という方も出し尽くせます。
というのもゴールの直前はロードになるからです。
足元を気にせず走って出し尽くせます。

登り切った先がゴールです。
50マイルの場合はこの北コースをもう1周走ります。
50マイルを完走できる方は精神的にも肉体的にもタフな方だと思います。

レースにむけた練習

比叡山トレイルレース50㎞(or 50マイル)を攻略するとしたら、どのような練習をするでしょうか。

私ならレースまでの3か月を1か月ずつに分けます。

1か月目:脚づくりのために距離を踏む=質より量
2か月目:山に入る練習
3か月目:レースに向けた調整、実戦練習

1か月目は質にはあまりこだわらず、長く距離を踏んで持久力の基礎を作ります。
月間走行距離は300~500㎞。
できるならもっと距離を伸ばしてもいいと思います。
平日は10~15㎞jogで余裕があれば100×5の流しや80m坂ダッシュ×5で刺激を入れます。
土日のどちらかは山に入るか距離走をし、山練習なら3~5時間走、距離走なら20~40㎞走です。

2か月目は強度を上げます。
月間走行距離は300~500㎞。
平日は土日の疲労を抜きつつjogでつなぎ、前月と同じように余裕があれば流しや坂ダッシュを入れます。
休日に山練習ができるときは、700mアップの登り×3、タイムにこだわります。
ロードであれば距離走をビルドアップで行うか、距離走後に1~2㎞×1全力走を入れます。

最後の3か月目は疲労抜きがテーマです。
月間走行距離は250~350㎞です。
平日の距離を少なめにして睡眠時間やケアの時間にあてます。
休日は山の700mアップの登り×1を全力で、ロードなら20kmまでの距離をペース速めに設定します。
1週間前に山ポイント練習(700mアップ登り×1・全力の80%)を終えたらあとは5㎞のjogなどで完全に体がゆるまないようにします。

3か月間を通して言えることは、ケガをしないことです。
したとしても長期離脱にならないようにしたいところです。
そのため、違和感があったらすぐにトレーニングを中止します。
また、距離が踏めなくても強度を上げることで代用がきくので、練習は欲張らず気持ちよく終えられるくらいがちょうどよいと考えます。

さいごに

ここまでお読みいただきありがとうございました。
皆様が比叡山トレイルランニングレースで最高の結果を出す、その一助になれば幸いです。
ケガに気をつけて楽しんで。
いってらっしゃい。

末脚トレイルランナー末脚トレイルランナー

末脚トレイルランナー

末脚トレイルランナーです。できるだけ細かくトレイルランニングレースの攻略法を紹介していけたらと思います。 主な戦績:2019信越五岳100マイル優勝 2019UTMF8位 2018奥三河パワートレイル優勝 2018比叡山トレイルランニングレース50㎞の部優勝 ハセツネCUP7位(2015,2018)6位(2016)

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