『Backyard ultra』の説明書

どうも、だーまえと申します。
今回は「Backyard ultra」について解説していきます。

というのも日本国内で最もメジャーな「Backyard ultra」である”LAST SAMURAI STANDING”の2024年エントリーについて情報が出ましたが、その中に”シルバーチケット制度廃止”のアナウンスがありました。
代わりにブロンズチケットレースの位置づけになるということなのですが、この仕組みが少し複雑です。

私は主催者ではないのですが、昨年世界大会の『Big’s Backyard ultra』にも出場している手前、大まかな仕組みは理解しているつもりです。
ただ、初めてこの競技に触れる方からすればただでさえ常識はずれな競技に加え、ブロンズだのシルバーだの言われても頭に入ってこないのでは?

そこで今回この記事を通して「Backyard ultra」という競技と、チャンピオンシップスポーツとしての仕組みをお伝えします。

「Backyard ultra」のルール

まずはルールについての説明です。簡単にまとめると上記画像3つがポイントとなります。
これはご存じの方も多いと思うので、既知の方は読み飛ばしてください。
読み飛ばすかたはこちらから♪
少し補足していくと…

①1時間内に走る距離が決められている

60分以内に6706mの決められたコースを走らなければならない。走り終わってからの時間の使い方は自由で、主に補給、睡眠、トイレなどに充てられる。
例えば45分で走れば15分の休憩、55分で走ると5分の休憩。休憩時間を長くとるために早く走るか、体の消耗を抑えるためにゆっくり走って温存するか、選手ごとに作戦が違うのも面白いところ。
逆に速く走ったからと言って先に進むことはできない。1時間に6.7㎞、それ以上進めないというのが正しい。
スタートの3分前に3回、2分前に2回、1分前に1回、それぞれホイッスルが吹かれランナーは次の1時間の準備をする。
60分が経過した瞬間に、次の1時間がスタートし6.7㎞のランニングを遂行するために走り出す。
記録の数え方は『Yard』。裏庭で始めた競技なのでそれにちなんで。

②最後の一人が勝者

①で定められたルールを継続していき、最後の一人になるまで続ける「ラストマンスタンディング」という方式を取っている。
故に最後の一人以外はリタイア。途中棄権扱いとなる。例え300㎞、500㎞走っていようとも。(記録は残る)
一人になるまで続けなければいけないので、二人同時にリタイアとなった場合は勝者なしとなる。
ちなみに最後二人になったが、リタイアしてしまった者のことを敬意をこめてアシストと呼ぶ。

③サポート

1時間に一度同じ場所に帰って来て、次のスタートまで時間を過ごす競技特性からデポジットエリアを選手ごとに用意している。サポーターをつけることも可能。
次の周回までのアイドリングタイムに様々なサポートを受けることができる。
例えば食事の準備、マッサージ、装備の準備、洗濯の代行などなど…
会場によって使える設備は違えども、より長く競技を続けるために選手ごとに様々な工夫を凝らすのもこの競技の面白さの一つ。
私は過去に鍼灸師にサポートに入ってもらって、鍼治療を受けながら走った経験あり(笑)
ただスタートをしてからは一切のサポートは受けられない。物品の受け渡し、デポエリアへの帰還などは全て失格となる。実際世界大会でも忘れ物を取りにデポエリアへ帰ったために失格になった選手も。

詳しいルールは公式サイトをチェック!

詳細は公式サイトをご覧ください。会場ごとのルールもありますが、基本ルールは世界共通です。

参考までに競技の規模感をご紹介しますね。アメリカ本国の運営から昨年までの累計参加者数は2万人以上と発表がありました。
ちなみに日本はハードコアなイメージが強いためか、競技人口の割にレベルが相当高いです。興味深い…

2024年9月13日時点での世界ランキングは上記の通り。
TOP20の中に日本人選手が4人も入っています。アメリカ、ベルギー、オーストラリアと肩を並べる強豪国と言っても過言ではないでしょう。

「Backyard ultra」のレースヒエラルキー

さて、ここからが本題です。
冒頭で出てきた、ブロンズだのシルバーだののことです。
上の画像は大会の位置づけをピラミッドにしてみたものです。
参加条件を簡単に記載してますが後述で補足します。

少々乱暴な表現ですがオリンピックの構造がイメージに近いかもしれません。

「Big’s」と言われる世界大会が”オリンピック”

「ゴールデンチケットレース(通称:サテライト大会)」が”日本選手権”や”代表選考レース”

「シルバーチケットレース」が”関東大会”、”近畿大会”などのブロック大会

「ブロンズチケットレース」が”県大会”などの地方大会

トップの大会があって、そこに参加する権利を得るための下部の大会あるという感じですね。
それぞれを紹介していきます。

Big’s Backyard ultra

アメリカ・テネシー州のベルバックルという田舎町で開催されるBackyard ultraの世界大会
この競技の創始者である”Laz”の家にある裏庭と、農道(アスファルト)を組み合わせたコースを走ります。

特徴的なのが時間の経過とともにDAY Loop(トレイル)NIGHT Loop(ロード)の2パターンのコースを切り替えながらレースを進めていくということ。

2023年の参加者は77名、で世界中から集まってくるトップバックヤーダーのみで構成される。
優勝者には悪名高い「Barkley Marathons」への参加権とエントリー費の1.6$が送られます(笑)
Big’sに参加するためには以下の方法があります。

ROUTE-1:ゴールデンチケットレース(サテライト大会)で優勝する
上記は確実に出られる唯一の方法
特徴は、
・世界50ヶ国で実施されており、各国の代表1名を選出
・周回数に関係なく勝者はBig’sに参加可能
・ダブルノックアウトの場合、権利は放棄される

ROUTE-2:記録を伸ばしてAt-Largeリストからエントリーする
Big’sの参加者75名の内、50名がゴールデンチケットレースの優勝者で決まります。
残りの25名を周回数の多いものから順位並べたリストから選ぶのですが、このリストのことをAt-Largeリストと呼んでいます。

実際のAt-Largeリスト。1-50の部分に各国の代表者が入ってくる。2023 Roster | Backyard Ultra


他の選手の記録に左右されるため確実ではないが、記録を残せば国内で勝てなくても出場する権利が与えられるためエリートへの救済措置と言えます。

2023年と2025年のBig’sではゴールデンチケットレースが50ヶ国まで増加しています。
そのためAt-Largeリストからの選出が25枠まで減らされることが決まっています。
これにより参加ボーダーラインは75Yardに引き上げられました。(2023年は54Yard)
Lazとしてはより多くの国のアスリートにチャンスを与えたいとの声明をFBグループで発信していました。

ゴールデンチケットレース(サテライト大会)

2022年のサテライト大会集合写真:LAST SAMURAI STANDING WEB Photo by奥村友昭

このレースは様々な呼ばれ方をされていますが、正式名称は「Big Backyard Ultra World Team Championship」といいます。通称サテライト大会ですね。

このレースはBig’sの参加権利を確実に得られる唯一のレースです。
そして全世界50か国(2024年)で同時に開催され、各国の代表者15名の総周回数で争う国別対抗戦の様式を採用しています。

リアルタイムで各国のLive映像を繋ぐなどして場所が離れていても互いを意識させる仕組みもあり、観るスポーツとしても盛り上がりを見せています。

15名の選出はシルバーチケットレースの優勝者+At-Largeリスト。
2024年のサテライト大会を例に日本代表の選出を図で表すと以下の通りです。


実際2024年のサテライト大会に選ばれたメンバーは以下の通りです♪

3名が辞退したがそれでもAt-Largeリストの記録水準が高い。

ここでのポイントは「国別対抗で争うチーム戦」というところ。

通常のBackyard ultraでは個人戦の意識が強く、最後の一人になることが勝者の条件のため牽制し合ったりすることも珍しくないのですが、サテライト大会はチーム全員で周回数を伸ばしていかなければ他の国に勝てない仕様となっています。

チームとして記録を伸ばしていく一方、最後の二人になった際に一人しかBig’sの切符を手に入れられないため、決着を強いるシステムとなっています。

シルバーチケットレース

2022年のLast samurai standing島根大会の様子

このレースは先述の通りゴールデンチケットレースに参加するための権利を得られるレースです。
参加条件は各国のレースによって異なりますが、人気のレースはブロンズチケットレースでの優勝や一定水準の競技成績が求められるものも。

国によってシルバーチケットレースの数はマチマチですが、見た感じ3~6レースぐらいの国が多い印象です。

日本では長らくLast samurai standingがその役割を果たしてきましたが、2024年大会からブロンズ枠へ変更となると運営より発表がありました。
理由は以下の通りです。

・今後BULSS大会数を増やしたい。BULSS大会を増やすことで物理的に優勝者だけでは15名が選抜できなくなるため。

・純粋に強いものが残る仕組みづくりにしたい。

Backyard Ultra LAST SAMURAI STANDING(BULSS) シルバーチケット制度廃止について

これによりゴールデンチケットレースに参加する手段がAt-Largeリストからの参加のみになりました。つまり純粋な「周回数」のみが判断基準となります。

上記は日本国内の話で、海外では以前シルバーチケットレースが存在する国もあります。


これまでは大会ごとのサーフェス、環境要因などから自分の得意なフィールドを選んで戦って勝つことでサテライト大会に出場することが可能でした。
しかしこれからは記録が伸びなければ上のステージで戦えない、ということになります。

少なくとも2024年、2025年はシルバーチケットレースが存在しない状態で国内予選が行われるとのこと。
2026年以降国内のBackyard ultraレースがどのように変化するのか楽しみですね♪

ブロンズチケットレース

このレースはシルバーチケットレースに参加するための権利を得るためのレースとなります。
今年の変更でBULSSがブロンズチケットレースになりましたが、以前は存在しなかった位置づけですね。

ブロンズチケットレースに参加する条件は設けられておらず、エントリーの先着順となっています。
海外では100人単位で開催されるレースもあり、気軽にBackyard ultraを楽しんでいる様子も伺えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
この競技がしっかりと組織されたチャンピオンシップスポーツであるということが伝わっていれば幸いです。

最後に告知ですw
2024年10月にBackyard ultraのサテライト大会が開催されます。
日本チーム15名!強者が揃っています。
私はこのメンバーなら世界一も夢じゃないと本気で思っています。

ニッチなスポーツですが、日本人が世界に通用する競技です。
日本代表を背負うからには、チームの一員として優勝に貢献できるような走りを目指しています。

恐らく公式サイトからLive配信などのアナウンスがあると思います。
長丁場にはなりますが、ふと思い出したときに応援のほど宜しくお願い致します!
10月19日(土)21:00~ お見逃しなく!!

Last Samurai Standing(@lastsamuraistanding) • Instagram写真と動画

だーまえだーまえ

だーまえ

広島生まれ、広島育ち、広島在住の33歳会社員。 アウトドアアクティビティとサウナをこよなく愛する男です。 学生時代は陸上競技で短距離を、社会人になってからはマラソンを経てトレイルランに没頭。 現在はBackyard ultraに傾倒。夢はBarkley Marathonsを完走すること。

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