トレイルランニングやマラソンなどのレース記事(レースブログ)を書いてみたいけど、どうしたら書けるのか分からないという方や、より面白いレース記事を書きたいと思っている経験者に向けての簡単な講座です。
この企画の発端を簡単に説明すると「レースブログの添削をしてほしい」という要望からです。
「添削すれば文章が分かりやすくなってPV数が上がる」という狙いは分かります。ですが、労力の割に大してPV数は上がりませんし、大抵は記事のテーマ、構成、情報の出し方など根本的な部分に問題があります。文章の問題ではありません。
そんな経緯があり、どうせなら対処療法の添削よりも、根本療法のレースブログの書き方をざっとまとめて公開しようと思い立ちました。
「ところでお前、偉そうに誰!?」と思う方が大半だと思うのでざっと自己紹介します。
私は泡沫ライター(本業はシナリオライター)で、トレイルランナーの選手としても目立った成績は残していません。しかし、レース記事を書くと1万~4万強のPV数があり(人気トレランYouTuberと同程度)、最近では招待選手としてウルトラトレイルのレースを走ったりしています。トップ選手やYouTuberの招待選手は多いですが、ライターの招待選手はかなり異色だと思います。
目次
超初心者編(書いたことがないひと向け)
とにかく書き上げることが重要なので、その方法を書いていきます。
完成記事がひとつでもあれば自信がつきますし、それを元に反省して上達できます。特に最後に行う推敲作業は文章力が飛躍的に向上します。
なにを書けば良いのか
書こうと思ったきっかけを書けばいいです。それは伝えたいことのはずです。例えば、レース中に熊と遭遇して死闘したなどの出来事でもいいですし、素晴らしいレースをしたのでそれを見てほしいという利己的なものでも全然構いません。
とにかく最初に書きたいことを羅列しておくだけでも効果的です。
パソコンやスマホの前で唸っていてもネタは出てきません。一番効果的なのは散歩したり、走ることです。有酸素運動をすると脳がまわります。ランナーはこれがやりやすいのはかなりのメリットです。
走るとおそろしくネタが浮かんできます。ネタはあるけどどう書けばいいのか悩んでいたことも突破口が見えたりします。帰ってきたら早速書きましょう。脳内麻薬が出まくってる状態で書いてるので大抵は使いものにならないのは悲しいですが、それでも少しくらいは残るはずです。
最初は文章を書くだけで大変です。苦手なことやだるいことを書く余裕なんてありません。好きなことだけ書きましょう。書きたいことなら自然と筆が乗ります。
なにより楽しんで書くことが重要です。
どう書けば良いのか
最初は時系列順で十分だと思います。よく見かけるのが「参戦記」です。
どんなレースか概要を書いてから、「準備編→レース編→振り返り」という読んでいると98%くらい眠くなる例のやつです(時系列順がダメと言っているわけではありません。だるくなる原因は他にあります)。
それでも最後まで書きやすいという最強の利点があります。基本の型といっても過言ではありません。
しかしこのフォーマットで、レース当日に起きて朝食の内容からすべて律儀に書いていると次第にやる気がなくなります。書きたくないことはガンガン省いて、最初に抽出しておいた書きたいことを時系列順に書いていきましょう。
いきなりブログに書かない
ブラウザでいきなり初稿を書きながら写真を貼っていたりすると滅茶苦茶時間がかかります。そうやって労力を裂いていると、その部分が冗長でも苦労したので削れなくなります。
パソコンのメモ帳とかスマホのメモアプリでいいので、最初にざっと文章だけで書きましょう。録音アプリに口述筆記でも全然いいです。
写真を記事のここに入れたいと思ったら「//写真」とか適当に書いておくだけでいいです。調べものも最後にしましょう。
最後にブラウザにまとめたら誤字脱字のチェックをし、さっさと公開しましょう。本当は推敲したほうがいいのですが(文章力が飛躍的に向上するので)、最初は書き上げただけで十分な成果です。自分を褒め称えましょう。
まとめ
とにかく1記事完成させて自信を付ける
好きなことを書く(それ以外は書かなくていい)
日課のランニング中にネタ出し
時系列順の参戦記が書きやすい。またこれは基本的な型として重要。
書くことのハードルを限界まで下げる
中級者編
一度でもレース記事を書き上げたことがある方が対象です。
最後まで読んでもらうためにはどうするかを書いていきます。そうすると自然とPV数も上がっていきます。
「備忘録として書いているだけ」とか「身内向けに書いているからPV上がらなくてもいい」と思っているひとは別に読まなくてもいいです。
ですが、既に読んでくれている方がより読みやすくなりますし、PV数が上がればレースなどで話しかけてくる方が現れたりと世界が広がるのは事実だと思います。ハードルが上がりすぎて書けなくなるのもまたデメリットなので、取り入れられそうなものは真似してみてください。
最低限の文章力を付ける
「本多勝一 / 日本語の作文技術」を読みましょう。これが一番手っ取り早いです。作文のルールが分かります。
https://publications.asahi.com/product/17593.html
日本語はめちゃくちゃ難しいです。自分はできていると自覚しているひとほど読んでほしいです。私なんて定期的に読んでもできていません……
題材選び
やはり攻略を主体にした記事が強いですし、なにより書きやすいです。
以前このインナーファクトのブログで書いた「三年で攻略する彩の国100マイル」は1年で4万PVを越えています。「ONTAKE100Kでサブ14する方法」はそれ以上のPV数です。
これはほとんど題材選びとタイトルの勝利です。単純に多くのトレイルランナーが目標、もしくは憧れる題材を選んだのでPV数が多いのだと思います。フルマラソンでサブ3するための記事がPVを稼ぎやすいのと同じ構造です。
自分の走力では攻略記事なんておこがましいと感じてしまう方がいると思いますが、それは違います。それでは極端にいえば、トップ選手しか攻略記事は書けなくなります。自分の立ち位置なりに需要は必ずあります。
例えば、「サンダルでサブ3」、「更年期障害に苦しんでたけどウルトラトレイルで完走した」、「ペーサー視点からの100マイルレース」などこれらは実際に読んだことのある記事ですが、どれもユニークな切り口で面白かったです。
自分が書いて筆が乗り、楽しめる記事を、読者に向けて開いて書きましょう。
そもそも攻略記事に固執しなくても案外立ち回れます。
以前、ハセツネでサブ10して攻略記事を書こうとしたことがあったのですが、途中で潰れてしまいました。
どうすればいいんだ……と悲観に暮れていたのですが、開き直っていかに悲惨だったのかを感情を吐露しまくった文章で綴ったら、意外にも好評で反響も多かったです。
時系列順を手放す
時系列順にレースの展開を書いていくとだるくなると前述しました。それは単純に無駄な記述が多くなりがちで、退屈になるからです。
攻略記事にすると、時系列順にレースを追わなくて済み、情報の密度が上がります。「三年で攻略する彩の国100マイル」は、完走するために役に立った練習法やスキルなどをひたすら書きました。これなら時系列順に書かなくても済みます。
攻略記事でも時系列順に書いてだるくなっている記事をよく見かけます。なにを伝えたいのか熟考しましょう。参戦記なのか攻略法なのか、どっちつかずになっていないでしょうか? 方向性を失った記事ほど読みにくいものはありません。
時系列順に書いてもなんとかなるけど……
時系列順はだるくなりがちと書きましたが、回避する方法はあります。前述したハセツネの記事「地獄のハセツネ黙示録」は攻略法よりも参戦記に近い記事になっています。
どうしてこの記事が好評だったかといえば、時系列順に出来事だけを書くのではなく、それに起因した感情をいちいち書いていたからだと思います。
スタートですぐ前にいた吉野大和選手(優勝者)のスタートダッシュが早すぎてあっという間に米粒のように見えなくなって圧倒されたとか、道中壮絶な脚攣りになって悶絶していたら百戦錬磨のエリートクラスの選手にぶっとんだ対策法を教えてもらって感嘆したなど、とにかく面白くなりそうなエピソードを抽出し、それに起因する私の感情を書きました。そこに筆者の個性が現れますし、読んでるひとの共感を得られれば親近感も湧きます。事象に対してのユニークな着眼点&自分の感情を書くのを意識しましょう。
感情を書くというのは、小説やエッセイなどではかなり有効なのですが、時系列順の参戦記でも相性が良い実感があります。
導入に気をつかう
冒頭でこの記事によってどんな情報を得られるか提示しましょう。タイトルですでに明示できてると強いです。なので、タイトルには気をつかうべきです。
最初が面白くないと読んでもらえません。冒頭は気をつかいましょう。なるべく読者の頭を使わせないように配慮し、なるべく早く役に立ちそうな情報を与えましょう。
「三年で攻略する彩の国100マイル」を例にすると、まずタイトルで彩の国100マイルの攻略法であることが明示されています。また、ただの付け焼き刃での攻略法ではなく、三年掛かりという骨太な攻略法であるという予感を与えています。
冒頭ではレースの概要をほんの数行で流し、いきなり攻略法を解説しています。実際のレース展開は最後におまけ程度にさらっとしか書いていません。
なぜそうするかと言えば単純なことで、読者が攻略法しか興味がないからです。
レースの概要などの事前情報が大事だと思っているのは筆者だけです。そもそも記事が面白いと思ってくれれば、読者はその情報を公式HPなどで調べますので問題はありません。
書き終わったら……削る!
ざっと書き終わったら、推敲する前に読み直しましょう。
このとき、すべての記憶を飛ばします。……というのも無理なので、なにも考えずにぼーっと読みます。そして、注意力がなくなった部分をチェックしておきます。
最後まで読み終わったらその部分を削りましょう。ばっさりいってしまって大丈夫です。なにせつまらない部分なので。削れば文章が短くなり、面白い部分がより引き立ち、読める記事になります。これができるようになると一気にレベルが上がります。
初心者編で初稿をざっとメモ帳などに書くことを進めたのは、削れなくなるからです。時間を費やすとどうしてももったいないと思って躊躇してしまいます。
ここでバッサリ削ってから推敲し、ブラウザに打ち込んで写真を貼ってレイアウトを考えるという手順が一番効率が良く、心が折れないと思います。
一番重要な推敲
最後にもう一度推敲しましょう。もっと良い表現方法はないか試行錯誤し、単語の意味をひとつひとつ検索しながら配置していきます。類語辞典も活用しましょう。推奨した教則本「日本語の作文技術」で得た技術をアウトプットしましょう。こういったことを繰り返すと文章力が飛躍的に上がります。次に書く記事はよりよくなるはずです。
レース記事の可能性とただの宣伝
ある日、人気トレラン系YouTuberのガチオさんのレース動画を観ていたら、再生回数が目に止まりました。その数、1万再生ほど。再生回数が多い大会では4万ほどでした。これは私の書くレース記事のPV数と似通っていたので驚きました。
それというのもトレラン界隈では「ブログの時代は終わった! これからはYouTubeの時代!」みたいな風潮だった気がするからです。
動画でガチオさんは招待選手になって元気に走っていました。
「……これもしかして僕もいけるのでは!?」と私もPV数、宣伝効果などの資料を用意し、興味があるレースの運営に営業すると、あっさりと招待選手になれました。
2024年はもう1レース招待していただき、記事も好評でした。2025年もこういった活動をしていきたいので関係者の方は招待よろしくお願いします。
動画の時代とはいっても、文字情報はまだ強いです。私自身、動画を見るのは面倒なのでまずはレース記事を探して読んでいます。私のような活字至上主義の人間は案外多いようです。
私のような根暗で四畳半の和室に這いつくばってひたすら執筆しているライターは、この先キラキラしたYouTuberに駆逐されるのみだと悲観していましたが、国民総YouTuberみたいな状況の今では却ってこちらがブルーオーシャンになっているのかもしれません。
皆さん、これを書きたいという熱意と筆一本で案外なんとかなります。動画と違って顔出さなくて良いし撮影もいらないし大変な編集作業もしなくて大丈夫です。
レース記事書きまくりましょう! 面白い記事が世に溢れ出ますように!
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