国内最難関100mileレースと呼び声高い「トレニックワールド100mile in 彩の国」。
最難関と呼ばれる所以は、第1回大会の完走者が0だったことに始まり、毎年多くの挑戦者が辛酸を味わい散っていく、その完走率の低さにある。
それもそのはず、100mileの距離に対して累積獲得標高約10,000m。にもかかわらず35時間というタイトな制限時間。
更には5月中旬とはいえ、暑熱順化できていない体を埼玉の酷暑が蝕む年も少なくない。
様々な要因が重なり、最難関と呼ばれるに至ったわけなのだが…
2024年。その地位を脅かすレースが誕生する。
そのレースの名は「FTR 100mile」。
奇しくも同じ山域をコースに含む両レース。
開催時期こそ違えどほぼ同じコーススペックに対して32時間制限。
何故主催者(埼玉民)はこんなにも過酷にしたがるのか…
小一時間問い詰めたい…
今回の記事は、NEW国内最難関レースと名高き「FTR 100mile」を走ってきた私だーまえが、同じく過去完走経験のある彩の国100mileと比べてどうだったのか私見全開で比較検証をする内容となっています。
彩の国を走ったのはもう2年以上前の話なので少し記憶がおぼろげな部分もありますが悪しからず…
FTRと彩の国
ざっくりですが比較表を作ってみました。
前述した通りコースに関するスペックはかなり近いものがあります。
強いてあげるとすれば以下のような違いがあります。
◆FTR:ラウンド型で同じ場所を複数回通ることもあるコース
◆彩の国:ループ型で拠点を中心に3つのループからなるコース
これによりドロップバック、サポートの回数に差が出ている印象です。
当然サポート有りでドロップバックの回数が多いほうが自分で持つ荷物の削減に繋がるので完走しやすくなります。
次にコースを見てみましょう。コースを共有している部分がたびたび登場し、彩の国を走破して参加した身としては懐かしさを感じながら走ることができました。
この山域を走ったことがある方はご存じかと思いますが、里山ゆえの細かい分岐や脇道が沢山あります。
今回のFTRもそうでしたがマーキングは相当丁寧にされているので、大きなロストはありませんでした。
それでも疲労や不注意からロストしてしまう可能性もあるので、分岐が来たらGPX等でコースを確認するのが確実かと。
次に開催時期について。
ここが一番の差異かと。
平均気温、日の入り・日の出時間を比較しました。
◆2024年実績 | FTR100mile | 彩の国100mile |
最高気温 | 14.7℃ | 28℃ |
最低気温 | 11.1℃ | 9.6℃ |
日の出時間 | 6:20 | 4:34 |
日の入り時間 | 16:34 | 18:44 |
日中(日の出ている時間) | 10:14 | 14:10 |
秩父の気象情報を参考にしたため、必ずしもコース上で気温がこの通りであったわけではないですが、そこまで遠く外れていることはないでしょう。
今年のFTRは曇り模様で寒暖差が小さく、個人的にはかなり走りやすい気候でした。
一方で彩の国は気温が30℃近くまで上がったこともあり、SNSやPodcastで得た情報では熱中症やそれに起因する胃腸トラブルに悩まされた選手が多かった印象です。
日の出日の入りの時間はヘッドライトを使う時間に関係していきます。
日中と夜では進むスピードが違うと感じる選手も多いと思います。
FTRと彩の国、比較するとそれぞれの環境的な特徴があることがお判りいただけたかと。
完走レベル
最難関の100mileレースという話をここまでしてきたわけですが、どのぐらいの走力があれば完走できるかわかりやすい指標として「UTMB index」をもとに比較してみます。
◎2024年大会 | FTR100mile | 彩の国100mile |
優勝者INDEX | 758 | 738 |
最終ランナーINDEX | 591 | 550 |
完走者平均INDEX | 639 | 587 |
完走者INDEX中央値 | 637 | 572 |
完走人数(完走率) | 39/113(34.5%) | 71/309(23.0%) |
ちなみに彩の国100mileで32時間を切ったボーダーラインのランナーのリザルト上のINDEXは597でした。
当然ではありますが制限時間が短い分、FTRのほうが完走ギリギリラインのINDEXは高いですね。
完走率をみるとFTRのほうが高いですが、そもそも32時間制限でこのコースを走り切れるという腕に覚えのある人たちの中での結果ですので、物差しとしては不十分かと。
ちなみに100mileではないですが難関レースとして名高い「新城ダブル」で671、
「比叡山ITR50mile」で636という数値が完走ギリギリラインとなっています。(2024年実績)
UTMBのほかにもITRAでも自身のパフォーマンスを数値化したものが確認できますが、UTMBの方は登録のみ必要ですが無課金でレースごとのINDEXが確認できるのでおススメです。(貧乏性)
今後挑戦するレースが完走できるか、目標とするタイムを達成するのにどれぐらいの走力が必要なのか、目安としては非常にわかりやすい尺度だと思いますので参考にしてみてください。
事前準備
レースに向けての準備を簡単に振り返ります。
まずはトレーニング。
FTRに出場する1か月前にBackyardultraを走ることが決まっていたため、両立しながらのトレーニングとなりました。
とはいえ、重要視したのはトレイルランナーとしての能力を高めること。
そのためロードでの走り込みよりはトレイルでのトレーニングと峠走を中心に取り組みました。
具体的には…
◆平日:峠走20㎞ D+800mを週2回
◆週末:BtoB(50㎞ D+3200m/20~30㎞ D+1500~2000m)
上記をポイント練習に据えて8月下旬~10月上旬までレース特化で積み上げました。
特にトレイル練習は彩の国を走る前にも取り組んだギザギザトレイル(低山)を意識。
気持ちよく走れない区間が多いですが、本番の耐性を高めるのに役立ったと思います。
Backyardultraの後は2週間疲労抜きをし、1度だけしっかり目に40㎞のトレイル練習をいれたものの感覚の確認を目的としたもの。
1ヵ月ではパフォーマンスを上げるためのトレーニングは難しいと感じました…
次にレース計画。
今回は以下のようなプランで27時間切り、あわよくば26時間というイメージでした。
次に補給計画。
1時間に250~300kcalを摂取し続ける計画でした。
今回は強度がそこそこ高い想定だったので序盤からしっかりジェルを取りつつ、エイドの固形物も活用させてもらいうつもりでした。
というのもFTRはエイドが充実しているとの前評判。メニューを見てると食欲が刺激されます…
せっかく用意していただくので、メニューも楽しみながら走らせてもらうことに。
完走レポート
では、実際走ってみてどんなレースだったのか。
ここからは主観満載で「FTR100mile」の完走レポートをお届けします。
今回、自身で写真を撮る余裕が見事に0でしたが、SNSで声をかけたところ何人かの方からお写真をいただきました!
他にもオフィシャルでも写真を撮っていただいたので素材が沢山!
大会のイメージを画像と共にお届けします。
スタート~A6
当日は朝4時起き。スタートが6時なので結構ゆっくり目の起床。
起きてからは朝食、テーピング、着替えといつものルーティン。
会場の羊山公園へはサポートしていただいているINNER FACTの首藤さんの運転で15分ほどで到着。
外の空気が寒く感じたものの上着を羽織ればちょうど良いぐらい。
天気も大崩れしそうにないうえ、気温もちょうど良い絶好のトレラン日和だ!
5:30から招待選手の紹介をするとのことで、ステージへ。
当たり障りのないおもんない自己紹介で乗り切り、久しぶりの再会を楽しむ。
大石さんは3週間前にジャングルぐるぐるMAXの200㎞部門を勇逸完走した猛者!
実は前々職が一緒で、マラソンの選考会では顔を合わせていた仲。
お互いトレランにのめりこんでいることは知っていたけど、会場で会うのは久しぶり。
互いにエールを送り合う。
スタート直前、コーチングを受けているTomoさんと言葉を交わす。
天下分け目の師弟対決の火ぶたが切られる瞬間。内なる闘志を燃やす。
スタートは100㎞と100mileが同時にスタートすることもありペースが乱れると予想。
感覚を信じず、時計のペースと心拍数を頼りに進んでいく。
目標は27時間を切ること、あわよくば26時間を目指す。
公園を出る手前で河内選手と一緒になり、会話を楽しみつつ最初のトレイルへ。
トレイルの後すぐにロード、数キロ進みトレイルという感じだがまだまだ感覚を掴むためゆっくり丁寧を心がけながら進む。
今回のテーマは「冷静と丁寧」。
実は10月のBackyardultraで怪我をしてしまったこともあり再発が怖いためとにかく無理をしないことを大事にした。
なので登りは積極的に歩いていると後ろから聞き覚えのある声が。
超有名Podcast「Chicken on Tuesdays」のパーソナリティ、マサシさんとお仲間のペヤングさんだ!
相変わらずのイケメン。約2年ぶりの再会に軽口をたたきながら進んでいく。
あーだこーだ言ってるとあっという間にA1手前。実は前泊した宿の目の前をコースが通っており、ここで首藤さんの応援を受ける。かなりテンション高めで楽しかったな~
A1の国際釣り場では奥宮さんや、MCのトモティも来ており、少しだけ言葉を交わすもここはまだまだみんなハイスピードでエイドを出ていく。
焦るわけではないがエイドタイムの短縮は課題なのでさっと用事を済ませて出ていく。おそらく1分半ぐらい?
A2の正丸エイドまではパックで進んでいたこともあり辛さは感じないが、奥武蔵らしい細かなアップダウンが顔をのぞかせてくる。
そして自然と前の方に押し上げられている感じがするが、無理をしている感じもないのでそのままステイ。
全体的にかなり走りやすい整備されたコースだが、登りの角度と下りの足場でテクニカルな場面も。
苦手な人には堪えるのだろうが嫌いではない。
正丸エイドにつくころには100㎞の入賞ラインの選手と、100mileの一桁順位前後の選手というパックに様変わり。
まだまだ順位を意識はしないけれど、エイドワークはスピーディーに。
A3子の権現は計3回通る予定。全く同じルートを120㎞越えの状態でもう一回楽しめるハッピーな仕様。
finishしたらプロデューサーの奥宮さんにぶつけたい言葉を脳裏に刻む。
子の権現は彩の国でも通る場所なので懐かしいなぁなんて会話を周りの選手としつつ楽しく通過。
次の区間は下り基調で距離も短いのでほぼ補給なしで通過。
A4名栗河川広場は唯一のサポート可能エイド。
首藤さんに甘えてサポートをお願いしていたので、元気な姿を見せられるよう着実に進む。
受け取る予定だった補給食は半分ほど置いて行った。
エイドが充実しまくっていて手持ちがそこまで必要ないという判断。
改めてこの大会のエイドのクオリティには感心する。
エイドを出てすぐ後ろから声を掛けられる。
「Podcast聴いてます」
気恥ずかしい思いもしたが謝意を述べてお名前を聞くと、その方は水谷さんという。
事前にエントリーリストで有力な選手は調べていたのですぐに繋がる。
FUJI100でニューヒーロー賞を獲られた冠太君だ!
若手も若手、現役の大学院生。就活の話にバックヤードの話、あれこれ話しながら少しだけ一緒に進む。
前に出させてもらいのらりくらりとトレイルを進み、下りきったところでトモズピットメンバーから応援を受ける。
Tomoさんとほとんど差がないと知らされ胸が躍る。
ロードに出てTomoさんの背中を確認しA5ゆのたエイドで合流。
レース前「一緒に走れたらいいね」という言葉をかけてもらっていたので、追いついてここからという場面だが補給に手間取り差が開く。加えて信号待ちが長くあっという間に背中が遠くへ…
まだ序盤と落ち着かせつつおにぎりを頬張る。
この信号待ちでマサシさんと再合流。会話をしつつも探り合いw
トレイルに入ったところで先行させてもらい、順調に進むつもりだったがなにやら出力が安定しない。
少しオーバーペース気味の自覚はあったが発汗が多く少しお腹が冷える。
着替えようか逡巡するも、登りでの発熱を考慮しステイ。
手で胃を揉みながらだましだまし進む。
結局ここでの出力は安定せず、メンタルがかなり落ち込んだ…
正直辞めたくなる瞬間だった。
別に足が痛いとかではないけれど、体の具合的にうまく走れないんじゃないかというネガティブな考えがずっと付きまとっていた。
ここは思い切って手持ちの着替えに変えても良かったかな後から反省した。
2回目の子の権現にはちーちゃんやトモズピットメンバーもいて賑やかなお出迎え。
満面の笑みで仁王像を通過w
ここで牛丼と味噌汁をかきこみ3分ほどでエイドアウト。
ここから次のA7長念寺までは下り基調なのだが、120㎞以降また同じルートを通るので、サーフェスを覚えることを意識しつつ進む。
ここで前後に誰もいないことが不安になり、ロストを疑う。(間違って高山方面に行ってないか)
何度かジオグラフィカを出したりしながら進むと、分岐に人がいてくれて安心。
ここ以外にも危険箇所や、100mileと100Kの分岐には必ず人がいてくれたので致命的なロストは避けられるはず。
いやはや運営の方々には改めて感謝…
トレイルから出るとロード→プチトレイル→ロードの組み合わせを走り長念寺へ。
その手前で首藤さんの応援。
正直にさっき辞めたくなっと告白し、言葉とは裏腹な足取りでエイドへ向かう。
A7~A10
ここから中盤戦。
前半で脚を使いすぎると地獄のような時間が長くなると見越して抑えていたつもりだが、答え合わせの時間になる。
エイドでは少し前にマイルの選手が出たと聞かされ、さくっと補給。
元気な姿で帰ってきますと大見えを切り出発。
ここからは日が沈み夜間パートへ。
予めヘッデンは出していたのでトレイルの中で戸惑うことなく進んでいると、前にいた間野さんをキャッチ。
少しの間一緒に話しながら進ませてもらう。
年齢が近いこともあり、共通の知人の話題を展開しながら楽しく走らせてもらった。
トレイルの後のロードで先に行ってくださいということで、先行させてもらったが落ち込み始めるタイミングを回避できたのは大きかった。
A8の飯能中央公園は全行程の半分、80㎞を通過してすぐに出てくるエイドでドロップバックもある。
ここで行うのは着替えと、補給の入れ替え、PRローションを塗ること。
ドロップバッグを受け取ったところで腕に巻く反射材(通過証明)の説明をちゃんぷ。さんから聞く。
立派な身体つきに丁寧な言葉遣い。かっこいいなぁと思いつつ準備へ移る。
段取りしつつ、カレーを勧められたのでありがたくいただく。
カレーに一枚お肉が乗っていて絶品!今回いただいたエイドメニューで一番おいしかった!
しかもヨーグルトももらえるとのことでこちらもペロリ。
そうこうしていると間野さんと冠太くんがエイドに到着。
意識していないと言えばウソになる。早めに身支度し出発。
出てすぐの信号で西岡さんが誘導のボラをされていて元気をもらい、長めのロードを走りだす。
ここで雨が降ってきたので、着替えたばかりということを考慮してレインを羽織る。
走ると蒸れる感じもしたが、全身が冷えるよりはマシ。
ここのロードは長かったが距離を稼げていると思うと気が楽だ。
トレイルに入ると登りの先にヘッデンが見える。
少し進んでいくと3位の菊嶋さんに追いついた。去年の大文字100でご一緒した時以来の並走。
あの時は周回レースで1周差がついていたので、厳密には並走ではないw
少し話をしつつ進んだが、ペースが合わず解散。互いの健闘を祈りエールを送る。
このレースの過酷さ、後で何が起こるかわからない…
登りきると先程も通った長念寺エイドへ向かっていくロードへ合流し、100㎞の選手たちの集団が表れた。
声を掛けつつ前へ行かせてもらいながら、2位のTomoさんを追う。
長念寺の手前で再度首藤さんに応援をもらい、順位の再確認と後ろが団子状態なので前を狙って走る旨を伝える。
「引けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ!」
2回目の長念寺エイドではメディカルチェックが行われており、体調について問われるもモーマンタイ!
補給と給水をして2分ほどでエイドアウト。
登山口まで歩きながら補給をしていると、少し遠いが後ろから足音が。
100㎞の選手?いやペース的にそれはない…
恐らくmileの選手だろう。
振返るとそのまま会話になってしまうかもしれない、今は順位がかかっている。
ここで弱みは見せたくない。
無理にペースを上げるわけではないが緩めることなく集中してトレイルを走る。
A9~A10高山エイド区間は鬼門ともいえる距離・累積。
ここを先行して終えられれば残りの区間でもリズムに乗れる。
後ろのプレッシャーを常に感じながら、容赦なく続くアップダウンを進む。
ただ後ろの足音以外にも敵がいた。
さっきからおならが出ていない…
圧迫される下腹部。
ガスが行き場を失って明らかに痛みが増していた。
ここでガスピタンを摂取。
結果的には効果が表れることはなかった…
下りは何とかなるが登りでお腹に力が入らない、入れると痛む。
だんだんと死神の足音が近づいてくる。
ついに完全に追いつかれ、横に並ばれる。
顔を見ると冠太くんではないか。
100mileではいつも抑えめに入って前を拾っていく展開ばかり。
明らかな失速以外で後ろに抜かれる経験はない。
クレバーな走り。そう思わずにはいられない。
追いつかれたタイミングで会話をする。
冠太くん「表彰って何位までですっけ?」
だーまえ「3位までで、年代別は1位のみですね。」
冠太くんが何かを察する間が流れたwww
真剣勝負の場で情けは無用!!
お互い自分のペースで進もうと告げる。
しばらくは視界に入る位置で進んでいたが、お腹のガスがいい加減限界に。
ガスが出そうな気配がしたが、止まらないとうまく出せそうにない。
ペースを緩めたり、試行錯誤もむなしくガスは行き場を無くし膨張する一方。
止まってお腹に力を入れる。
少しディレイしておならがでる。
だがすっきりには程遠い。奥底に潜んでいる。
後にこのプチ成功体験が後に裏目に出る。
少し進むんではガス抜きを何度か繰り返した後、下りに入ったところでおならが挙手する。
おなら「そろそろ出たいです。」
肛門「よし、通れ。」
そんなやり取りがあったかは知らないが、おならではない第3者が後ろに控えていようとは夢にも思わない。
先程同様停止して力を籠めると、聞き覚えの無い音が響き渡る。
「あれ、これ漏れたくない?」
明らかに水分を含んだ音がした。確実に気体ではないものが出たはず。
問題は固形か、液体かだ。
とっさにケツに手を当てる。
大丈夫、標高?は増えていない。
そもそも大丈夫ではないが、この際固形でなければなんでもいい。
不幸中の幸いを噛みしめながら走り始めるが惨めな気持ちに襲われる。
漏らしたのか、漏らしてないかの自問自答。
いや、固形じゃないから漏らしてない。セーフじゃろ。
この時ほど自己肯定感が高い瞬間を、私は知らない。
ほどなくしてトレイル脇の公衆トイレを見つけ、奇跡としか言いようがないがちゃんと紙もあったので後処理をし、失った尊厳を取り戻すために走り出す。
冠太君は遥か彼方。
後ほど区間タイムを見るとここで15分以上差をつけられていた。
ここが分かれ目、勝負の…
とは言え脚はまだ元気。
メンタルは落ち込んだが、エイドでリフレッシュを図る。
ついでにストッパ(下痢止め)を摂取する。判断が遅いと後悔…
A10~Finish
終盤、身も心もボロボロの中どうやって戦ったのか。
心の浮き沈みをつらつらと…
高山エイドでは100㎞の選手が辛そうな表情で補給をしている。
mileの選手は自分一人。このエイドは140㎞手前でもう一度通過する予定。
次もタフな区間になりそうなのでしっかり目に固形物を補給。
お腹の状態はマシになっていた。
ここで先月行われたバックヤードウルトラのサテライト大会でお会いしたBBさんに再会。
写真を撮ってもらいご満悦。
やはり知り合いに会うと元気をもらえる。
エイドを出る際にこのままfinishに向かいたいなぁと泣き言をいうと、
「そんなこと言わないの!」と𠮟咤激励をもらう。
あぁ、自分が出たいと言って走っているレースでなんて情けないことをいってしまったんだろう…
自己嫌悪に陥る。
その言葉を心に刻み、次は元気な姿でここに戻って来よう。
そう思い彩の国でも登った関八州へ向かう。
ここから正丸駅エイドまでは果てしなく遠かった…
途中からA1~A2で通った区間と合流するのだが、最初に通った時との感じ方のギャップにメンタルを持って行かれる。
ここでトレイルサーチ(速報)を確認。
前のエイド時点での前と後続との差を確認。
まずい、後続との差が詰まっている。
トイレトラブルが響いているかもしれないが、言い訳している場合ではない。
「冷静と丁寧」を思い出し自分が出せる一番いいパフォーマンスの発揮に集中した。
際限なく訪れるアップダウンで集中力を切らさず無理なく継続できるペースを探りつつ、できるだけ早く動き続ける。
順位争いを諦めたらこの瞬間は楽だろう。
けれど、自分を誇れるか?
胸を張って帰れるか?
ひとつ前のレースでうまくいかなかった苦しみを抱えていたので、それを払拭したいという思いもあり決してペースは速くないが今できるベストを心がけた。
苦しみながら到着した正丸駅エイド。
しっかり補給をする。次の子の権現までは5㎞で1時間ほどで到着できる算段。
エイドの皆さんに少し温まっていけば促される…
めっちゃ座りたい!!w
けれど順位争いしているのでと断る。
本当はストーブに当たりながら温かい飲み物をゆっくりと飲みたい。
後ろ髪をギュンギュンに引かれながらエイドを出る。
次の子の権現までは淡々と進んでいく。
ロードとトレイルの一気登り。
ロードが思ったよりも走れていないが仕方ないと割り切る。
登り始めてからはあっという間に子の権現へ。
トレイルのスピードはそこまで落ちていないかもしれない。
3回目の子の権現。
長丁場の運営に感謝し、しっかりと補給させてもらう。
次の区間が2つ目の鬼門。
ここをうまくまとめられるかで順位が決まると感じていた。
エイドを出る前にヘッデンの電池を変える。
エイドを出発する前に頭を下げてお礼を言い、核心部へ出発。
覚悟はしていたがここからの区間は長かった。
最早嫌がらせとも思えるアップダウン。
finishして奥宮さんにラリアットを喰らわせたい一心で進む。
ここにきて疲労からか眠気もやってくる。
1回目のトメルミン投下!効き目はそこそこ。
ここでもう一度トレイルサーチ確認。
前との差は開いたが後ろとの差は広げられている。
そう、辛いのだ、皆。
この区間を乗り越えればあとは比較的イージー(そんなことはない)!
踏ん張りどころだと気を引き締める。
割愛するが高山エイド手前で猛烈な便意に襲われる事態もあったが、神社の階段激登りの手前のトイレに救われ事なきを得る。
2回目の高山エイドを笑顔で通過し、いよいよ最終盤。
登りを進むペースも落ちてきたがなんとかこらえながら最後のエイド、県民の森へ。
景気づけにトメルミンとメダリストのカフェイン入りジェルを投入。
一気に目が覚める!
苅場坂に出たところでMCのトモティが応援に来てくれていた!
広島のよしみで忖度エールをもらい、フィニッシュで会おうと約束する。
辛い時間帯だったので本当に助かった…
この辺りで日が昇ってきた。目標の26時間台でのfinishは何とかなりそう。
後は順位だ。
県民の森へ降りる下りで立哨スタッフの方から思わぬ言葉を聞く。
矢嶋さんが10分弱の距離にいることと、かなり疲れている様子だと。
3位、行けるかも?
はやる気持ちを抑えられず下りのペースを上げたとたんに大転倒。
スタッフさんに心配される…
初心忘れるべからず… 冷静に、丁寧に。
最終エイドに飛び込んで駆け込みコーラ2杯。
残りの距離は全力で駆け抜けようと決め、30秒もせず飛び出す。
エイドのスタッフさんからも間に合うよ!と声をかけていただき俄然やる気が出る。
トレイルに入り登りの階段があるのだが全部走る。
さっきまでの疲労感が嘘のように。
そこからの下りはまさに猪突猛進。
100㎞の選手がいるのでところどころ緩めながらだが、今レース最速の下り。
直線で一気に下れるトレイル。気持ちのいいトレイル。
100㎞の選手が気を遣って道を開けてくれるように前方の選手にも声をかけてくださって、申し訳なくなる。
辛いのはみんな一緒のはずなのに…
そうこうしていると下りもひと段落というところで補給しながら歩いてる選手が。
矢嶋さんだ。
シングルトラックの為後ろから走ってきた自分の為に道を開けてくださった。
「ありがとうございます。先行かせてもらいます。」
とだけ言葉を交わす。
我ながら大人気ない…
100mileの最終盤での順位変動なので、もっと会話したかった気もするがここで緩めると気持ちが切れそうな気配もした。
そこからも下り基調は続くのでペースを落とさず走った。可能な限り走った。
そしてスタート時に走ったロード部分に合流するのだが、ここで異変が。
下りを一気に飛ばしたつけだろう、胃がシェイクされて本日初の嘔吐。
水を飲もうとするもそれも受け付けない。
当然ジェルも無理。
まぁここまでくればなにも取れなくても行けると切り替えるも、5度の嘔吐。
最後は何も出ない。
まさかまさか、最後にここまでやられるとは…
だが後ろから迫られているかもしれない恐怖から歩かずに走り続けた。
辛いけど心地よい、これだから100mileはやめられない。
ようやく見えた羊山公園のフィニッシュゲートとそこに待つ知り合いの面々。
最後まで戦い抜いてよかった。
26時間09分23秒 総合3位でのfinish
走り終えてどうだったのか
当初考えていたよりも随分長々と書いてしまいました…
やっぱり100mileを走るとレースへの感情移入が他とは異なりますね…
最後にまとめです。
両レースを走ってみての超個人的な感想です。
- FTR100mileの方が足場の難しい区間が多いものの、ロード区間も多いのでトータルでかかるレースタイムは大きく変わらない
- なので純粋に制限時間が短いFTRの方が完走に求められるレベルは高くなるのは必然
- 気象条件、特に気温によってはトラブルに見舞われる可能性が高まるので、どちらのレースも経験値は必須
- アップダウン耐性が重要!特に下りへの耐性。丁寧に下る能力が大事。
- 試走ができるなら絶対にした方がいい!!
- エイドは両大会とも国内トップクラスの充実度。ただリアルフードを受け付けなくなると非常に辛い。
- 暑さが苦手な人は彩の国よりも制限が厳しいけれど涼しい(寒い)FTR100mileおススメです。
表彰式の際に奥宮さんが次回100mileを開催するかは未定と言われていました。
運営の大変さを思うと勝手なことは言えませんが、最高の挑戦場に間違いないと思います。
私も今回のレースで成長できたと感じていますし、周りの人の声を聞いてもポジティブな意見ばかりです。
機会があれば是非参加して欲しいと思える大会です。
もしくは来るべき時に備えて100㎞部門へ挑戦するのも手かと。
だーまえの見立てではFTR100㎞を20時間切れなければ、100mileの完走は難しいかと。
この記事が大会選び、挑戦の手助けになれば幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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