
日本で一番有名なトレランレース、日本山岳耐久レース(通称ハセツネ)走ってきました。
約8年振り(4回目)のハセツネは死ぬほどきつく、また滅茶苦茶楽しかったです。
概要
2024年10月13日13時スタート 制限時間24時間 当日の天候:快晴
総距離71.5km 累積標高約4500m
レース前に練習していたときは、「サブ10してその攻略法を記事にしよう」などと構想を練っていたのですが、ハセツネは無慈悲で、10時間20分とまさになんとかの皮算用になってしまいました。
その20分をどうして削れなかったのか、また反省点はどこにあるのか、レースの攻略法と共に書いていきたいと思います。
前述したように、私は過去4回ハセツネに出場しています。記録は2014年は約17時間、15年は約13時間、16年は約11時間。今回、24年は約10時間です。
走るたびに記録は伸びているわけですが、なにを変えて早くなっていったのかも書いていきますので、幅広い攻略法になると思います。
目次
過去を振り返る
2014年 17時間台
まだ走り始めたばかりで、約70kmを走るのは初めての経験でした。補給は呑気にバームクーヘンやドーナツなどを持ってきており、口内が乾いて全然飲み込めなかった記憶があります。ハセツネをピクニックと勘違いしていたようです。
長時間走れる体力がなく、1時間進むと10分休んでいました。これは今考えるとセルフエイドです。ハセツネはエイドがひとつしかありません。体力がないならこれは大正解だったかもしれません。
脚が貧弱ですぐに腸脛靱帯炎を発症していたため、ロキソニンを飲んで耐えていました。
今なら「すぐやめろ!」と忠告しています。現在ではまったく服用していません。また、ストックをだらだらとメリハリなくずーっと使っていました。これでは17時間かかって当然です。
2015年 13時間
とにかく脚力がないので、筋肉を付けるためにやたらロードバイクに乗って基礎筋力を付けました。これにより怪我が減り、腸脛靱帯炎を克服しました。
補給はジェルメインになり、バームクーヘンでむせることはなくなりました。
ゆるい登りなら走り、下りでストックを使わなくなり、走りにメリハリがつきました。
休憩は月夜見駐車場のエイド以外ではとらなくなりました。
2016年 11時間
前年に4時間も縮まったので、幻の無双感を感じて面白くなっていた時期です。11時間台を目指して試走しまくりました。これによりコースの理解度が上がりました。
走れるようになってきたため、ストックを持っているとタイムが逆に落ちるケースが増えました。よって、ストックを出す場所、仕舞う場所を選定しはじめます。
ストックを出す場所は――
三頭山前から登り切るまで
小河内峠~御前山を登り切るまで
鋸山~大岳山を登り切るまで
の三カ所に絞って他はザックに収納しました。またすぐに仕舞えるようにザックを工夫しました。
この年は寒いくらいだったので(濃霧は酷かったですが)好記録が続出しました。この年の11時間台は出来過ぎだったと思います。
2024年 サブ10を目指す
2016年以降ハセツネに出場しなかったのは、渋滞問題が一向に解決しないなどの運営の方針に辟易していたからです。他にも不満はかなりありました。あとは私がとにかく混雑を避ける性格というのもあります。
よって、同時期に開催されているKOUMI100やLAKE BIWA100などのレースに逃げていました。こちらは渋滞問題はなく、呑気に走れるので気質に合っていました。要望をすぐに改善してくれる運営のフレキシブルさも魅力でした。
今回エントリーした一因はそれらを改善しようとシステムを変えていたからです。スタート順は細かくブロック分けされ、ITRAポイントやフルマラソンのタイムで決まります。これによって無駄な渋滞やスタート前に長時間並ぶ時間が減りました。こういった運営の姿勢は評価したいです。
自分の実力を測る
ITRAポイントがある方は、このサイトを使ってどの程度のタイムで完走できるか測ってみましょう。かなり正確だと思います。
https://trailflow.jp/hasetsunecup_2024
私は10時間を数分越えるくらいでした。これなら頑張ればいけるのではとサブ10を目標に設定しました。
試走
やはり試走は重要でした。なにせ8年振りのコースなので、すっかり忘れていましたが、一度走るだけでも地形の記憶が甦りました。レース中は辛くて地面しか見てないと思いますが、とにかく1周はしておきましょう。もちろん分割して大丈夫です。
あとは水の消費量のチェックです。レース当日は大量の水分を運ぶことになるので少しでも負担を減らしたいところです。
前回よりもトレーニングを積んでいるので走力は明らかに向上しています。
私はストックの扱いに長けているほうです。ですが、走力的にストックはもういらないのかもしれませんし、出しどころ仕舞いどころも変わってくるはずです。そこを重点的にチェックしました。
ハセツネは3:3:4の法則があります。完走者のタイムの比率です。10時間完走だとすると、第一関門まで3時間、第二関門まで3時間、ゴールまで4時間に綺麗に収まります。
試走時にこのタイムにはあまりこだわらなくても大丈夫です。当日はレースなのでただ走ることに専念できますし、体調もきちんと整えています。なによりアドレナリンが出まくっています。20~30分くらいなら遅れていても問題はないでしょう。
レースレポート
スタートの罠
この日の最高気温は26度で、スタート地点の中学校の校庭はいい感じに茹だっていました。もし校長先生が長い演説を始めたら選手の誰かが倒れたと思います。
タイムを出すにはかなり厳しいコンディションで、モチベーションは早くも下がっていきます。念のため予備のフラスクに少し水を入れ、2L強でスタートしました。
エリートクラスはすかすかで、みな謙虚に「どうぞどうぞ」とダチョウ倶楽部のように譲り合っているので前のほうに並べます。まったくギスギスしてなくて、このレースは本当にあの殺伐とした「女と子どもはひっこんでろ」と唄われたハセツネなのだろうか? と疑ってしまいました。
こんな機会はないだろうから優勝経験者で優勝候補筆頭の吉野大和選手(今回マジで優勝した)のすぐ後ろからその全身をじっくり舐め回しながら「すげえ筋肉だ……どんな鍛え方したらこうなるんだ……」と驚愕していたらスタート時間が迫ってきました。
スタートすると、皆もの凄い勢いで飛び出していきます。吉野選手なんて5秒もするともう米粒みたいな大きさになっており、2時間くらいでゴールしそうな勢いです。
実は直前にサブ10常連の知人から「エリートクラスは速すぎるから引っ張られるな。渋滞もしないから自分のペースで行け」と忠告されていました。ですが、頭は真っ白になっていてキロ4分10秒で走っていました。振り返ってみると、女子最強の吉住さんと一緒に走っていた気もします(これが後の惨劇への伏線に……)
最初の大きな登りである今熊神社に差し掛かると、アドバイスを思い出して歩きに移行します。マジで渋滞は一切ありませんでした……
この先は気持ちが落ち着いてきて、自分のペースで走るのですが、心拍はLT2(フルマラソンの強度より高い)でした。せめてLT1に下げましょう。
第一関門の浅間峠に3時間弱で到着。このペースで行けばサブ10です。
体感としては2時間50分くらいの頑張りでした。それが3時間以内ギリギリです。「マジかよ!?」と叫びそうになりました。
余裕があれば三頭山までストックは出さないはずだったのですが、脚はすでに生まれたての子鹿になっており、日原峠前ですでに手に持っていました。この時点で藁にも縋りたい危機的状況は明らかに死亡フラグです。
その後の登りで両脚の内腿の強烈な攣りでまったく動けなくなり、ストックを両手に突いたまま10分以上悶絶します。内腿の筋肉はふっくら盛り上がり、ピクピクと痙攣しています。つい先日観たエイリアンの新作を思い出し、チェストバスターが飛び出してくるのではと恐怖に震えます。
落ち着くと、予備で持っていたレッドブルを一気飲みしてやる気を回復させます。
その後も登りのたびに攣りは頻発し、その都度脚が止まり、周囲のランナーに「こんな攣りは今まで経験したことがない!」と嘆いていると、「究極に攣りきるとそのあと大丈夫になるから! 怖がってないで思いっきり攣れ!」という脳筋極まってる根性論をいただき、「エリートクラスのやつら半端ねえ!」と少し感動して涙ぐんでしまいました。
そのまま攣りながら三頭山を登り切るとマジで脚が軽くなってきました。
ストックを収納して鞘口峠まで下っていきます。ちなみにストックを出したまま下って行った知人は転けて骨折し、リタイアしたのでここは本当にくれぐれも気をつけてください。
鞘口峠からストックを出して登っていきます。ある程度高度を上げて、そのまま第二関門の月夜見駐車場へ。水分はほんの少ししか残っていませんでした……
第二関門 月夜見駐車場
到着したら6時間20分でした。ハセツネ秋の痙攣祭り(ヤマザキ春のパンまつり風)に参加したおかげで20分のビハインドです。
ここは唯一のエイドで水かポカリを合計1.5Lだけもらえます。ニューハレの芥田さんにポカリ1Lと水500mlもらいます。ポカリ500mlは一気飲みです。これで攣りは完全に収まる!と願いながら……
ここで座っては駄目です。
明確な死亡フラグです。
滞在2分で下っていきます。
小河内峠付近でストックを出して、御前山までの長い登りを進んでいきます。ここはマジで辛いので全力でストックに頼ります。それでもまた攣りました。しかし20分の遅れを取り戻さなくてなりません。泣きながら登りますが、ストックで手が塞がっているので涙は拭えません。
マジで一生登ってる感覚になっていた御前山を登り切るとストックを仕舞って下り、鋸山を過ぎると再びストックを組み立てて最後の大ボス大岳山に挑みます。
試走時は、「結構ゆるやかな登りだからストックいらないかな~全走りしちゃおうかな~」などと余裕をかましていたことはすっかり忘却の彼方です。あれはきっと別人だったのでしょう。
大岳山まであと5kmほど。この登りを終えたら大きな登りはないので、「あと5kmでハセツネは終わる! あとたった5kmだ! 終わった! やったー!」と叫びながら登っていました。実際はあと15kmくらいあるので完全に狂っていたのだと思います。
大岳山を登り切るとストックを仕舞って危険な岩場を降ります。
その後は緩やかな下りが日の出山前まで続きます。ここは最初のロードを除けば全区間で一番スピードが出る爆走ポイントです。ここでタイムを稼ぐべきです。
一般的に日の出山からの下りが飛ばすポイントだと思われていますが、結構テクニカルだし登りも地味にあるので油断しているとキロ8分とか掛かります。
第三関門 長尾平
御岳山神社の手前です。ここで8時間40分以内ならなんとかサブ10に間に合いますが、8時間52分でした。この区間は滅茶苦茶頑張ったのに8分しか縮まっていません。これはもう無理だ……とスイッチが切れてしまいました。
その後、夜の御岳神社と商店街を抜けて(この景色が大好きでテンション上がります)日の出山への登りへ。問答無用でストックを組み立てて登ります。
山頂からの町並みの景色は絶景で、過去一綺麗でした。そういえばハセツネと言えば夜間の濃霧なのに、この日はずっと晴れていました。
再びストックを仕舞ってから下っていきます。攣りはマシになっていましたが、左足の腸脛靱帯が悲鳴を上げ始めていたので慎重に下ります。
もうサブ10は間に合わないと分かっていましたが、自分を責める気は一切起きず、最後のロードに出ると「よくやった! 痙攣祭りに耐えてよくやった!」と自分を労い、ウイニングランに切り替えてフィニッシュしました。
まとめ
普段は攻略法ばかりで、時系列に沿ったレースレポートはしないのですが、あまりに辛かったのでそれを伝えようとレポート感が強くなってしまいました。あまりに悲惨な記憶を呼び起こしたので感情が吹き出し、お見苦しい点が多々あったと思いますが許してください。
冷静に振り返るとやはり暑さは厳しく、タイムは出にくかったようで、去年に比べると10分から1時間は遅くなっていたようです(知人10人ほどから聞いた範囲ですが)。
路面が乾いていたのと、霧がなかったのは、プラスのポイントだったと思います。
今回、見事に跳ね返されましたが、壮絶に厳しくも本当に楽しい魔性の大会でした。
久々に出場したので運営の改善点もよく分かりました。
現時点では、もう絶対に出たくないですが、あと1週間くらいしたら考えが変わってるかもしれません。
役に立った装備
今回役に立ったギアの筆頭は間違いなく腰ライトのUltraspire / Lumen600でした。
私は目が極端に悪いのですが、足元がよく見えるので一度も転びませんでした。危険な下りでは一番明るい600ルーメンモードにするとマジで昼間です。おかげで途中で電池が切れましたが、交換の手間が少ないのでスムーズに行えました。霧が出ても地面との距離が近いのでよく見えます。
ちなみにイエローフィルターは大して役に立ちません。地面に光源を近づけましょう。濃霧が発生したらヘッドライトを手に持ち、ハンドライトにするといいです。
レース装備
ザック:ANSWER4 / FOCUS Light + Salomon / Custom Quiver
ストック:LEKI / ウルトラトレイル FX.ONE スーパーライト
ヘッドウェア:インナーファクト / ネックゲイター(2つに切ってヘッドバンドとして使用)
ハイドレーション:ANSWER4 / Purist Bottle、Salomon / ACTIVE HANDHELD、インナーファクト / ソフトフラスコ(予備で使用)
シャツ:MHW /タンク、インナーファクト / ウルトラライトシャツ(予備の防寒で使用)
インナーパンツ:インナーファクト / インナーパンツ
パンツ:Answer4 / 3Inch Short Pants
シューズ:ASICS / FUJITRABUCO LYTE
ソックス:インナーファクト / ラミーソックス5本指ミドル丈
レインウェア:THE NORTH FACE / Strike Trail Hoodie
ライト:Ledlenser / NEO 10R(頭)、Ultraspire / Lumen600(腰)
テーピング:インナーファクト / キネシオテープ
ウォッチ:COROS / VERTIX 2
ゼッケンベルト:ゴム紐xホチキス
ワセリン:ガーニーグー(当日レース前に使用)、テングバーム(前日使用)
食料:ハリボーグミ400kcal分、ジェルx2(KODA、SIS)、セブンイレブンわらび餅(レモンx1、黒糖x2)、パラチノース400kcal分、レッドブル
クーポンコード
今回のレースで使用した下記のインナーファクト製品を5%オフで購入できます。
コードを使って購入していただくと一部筆者の収入になり、この先の記事執筆の応援になります。
クーポンコード:enishi-hstn2024
割引率:5%off
使用期限:2024年11月30日まで
-対象商品-
ウルトラライトシャツ https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2651562&csid=12…
ソフトフラスコ https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2573309&csid=1…
シームレスインナーパンツ https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2651562&csid=4…
ラミーソックス https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2431131&csid=0…
ネックゲイター https://shop.inner-fact.co.jp/?pid=178996838
テーピング https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2843801&csid=0
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