
2024年7月14~15日に開催されたONTAKE100走ってきました。前回に引き続き100km部門出場です。
今回の記事は少し変則的に、レースのざっとしたレポートと前回反響が大きかったウエストベルト+ハンドボトル装備(以下、ウエストハンドと記載)でのレースの挑み方について書いていきたいと思います。
目次
レース概要とレポート
2024年7月15日0時スタート 制限時間20時間
14時間以内完走で100マイル部門へのエントリーが認められる
総距離106km 累積高度2600m(前回:109km 累積2600m)
一部林道の崩落によるコース変更で前回に比べて距離が3km弱短縮しました。これによって20分ほどタイム短縮になると思います。サブ14を目指していた方にとっては大きな追い風になりました。それにしても、100kmを大きく越えているので、さらなる距離の短縮を望むところです。
今回はスタート時は曇り~時々霧雨、朝7時頃から本格的に雨が降り始め、突発的に5mm以上降っていました。スタートゴール地点の松原スポーツ公園では13時くらいには豪雨になっていました。
総じて涼しく、夜が明けてからの雨は寒いくらいで、レインをずっと着用していました。よって、水の消費量は少なかったです。
去年は夜が明けてから快晴になり、正午過ぎには灼熱と化した過酷なコンディションだったので、今年はかなり恵まれた天候になりました。
この天候が幸いして、完走率は73.7%に上がり、サブ14達成者も前年の96人から211人の約2倍になりました。
しかし出走者数も前回1136人から1241人と増えているので、その達成者の割合は6人に1人に留まっており、相変わらずサブ14は高難易度のままだと言えます。
この先、コース変更が無いことが前提ですが、今年はかなりのボーナスステージだったと思います。
私もこの恩恵を受けました。突っ込みすぎて序盤に肉離れを起こし、更に腹痛にも見舞われ、我慢のレースになったのですが、前回とほぼ同じ12時間で終えることができました。
ウエストベルト+ハンドボトルでサブ14に挑む
前年のONTAKEの記事「ONTAKE100Kでサブ14する方法」では、「ウルトラマラソンとして捉え、ウエストベルトにハンドボトル装備で走るべき!」と提案しました。この記事に対して「もう少し詳しく導入方法を教えてほしい」「練習方法を教えてほしい」などとSNSでの反応が大きかったです。
大まかに答えてはいたのですが、この記事で詳しくまとめていこうと思います。
レースの運び方、走り方、トレーニング法などは、前年の記事を参考にしてください。
ウエストベルト+ハンドボトルスタイルは偏見に晒されている……?
トレランレースで時々見かけるウエストベルト+ハンドボトル装備の尖ったひとたち。
ひとめで分かる癖の強さ。普通にザック背負えよ! 絶対に性格面倒くさそう。山を走ってるだけでも変人なのにそいつらの中でも更に面倒臭そう。あの軽装だと必携品も持ってないかもしれない。絶対にアウトローだ! うわー! 関わりたくない!
そんな印象を持たれているのではと被害妄想が炸裂していますが、きちんと必携品を持ってるし、レギュレーションもきちんと厳守しています(過去、違うレースで目をつけられて必携チェックを何度も受けていますが、一度も違反したことはありません)。
ウエストハンドの恩恵
どうしてそんな装備で走るかと言えば、単純に軽くするとタイムが縮まるからです。ウエストベルトに装備を収めることができれば背中が空きます。そうすると恐ろしく涼しくなって発汗量が少なくなり、水の摂取量も少なくなります。つまり消化器系のトラブルも少なくなるということです。

ONTAKE100Kを走る筆者
ウエストハンドのスタイルを身につけるために……
ウエストハンドでレースを走ってみたいという方に理由を聞くと「背中が空いて涼しくなるから」「軽くなるから」というのがほとんどです。
これは、ひとことで要約できます。
重さや暑さを軽減して「快適になりたい」ということです。
この「快適」を追求した結果がウエストハンドスタイルです。
このスタイルを試してみて合わないひとによく相談されるのが、「ハンドボトルが疲れる」「装備がウエストに収まらない」です。
これは技術的な問題よりも考え方の問題なことが多いです。
そして考え方が変わると自然と克服できてしまいます。どういうことかというと、先人がどうしてこのスタイルに行き着いているかを理解していないからです。きつい言い方をすれば、恩恵だけ手っ取り早く手に入れようとしています。根本的な考え方を変えたほうが早く身につくし、このさき走力も相乗して上がります。
日頃から快適を追求して行動(トレーニング)する
快適を追求して自然とウエストハンドのスタイルになっている、と先述しました。
私は近所をジョグするとき、真夏だとランパンに羽織れるボタンシャツだけで走っています。
暑いのですぐに脱ぎ、腰とランパンの間にシャツを挟んで上裸で走っています。理由は快適だからです。トレーニングの強度も上げられます。
タンクトップと比較にならないほど涼しいです。途中にコンビニやトイレに寄る場合はシャツを素早く羽織ります。これで社会的に問題は無いです。実際、上裸で警察に遭遇しても一度も職質に遭ったことはありません。
この上裸ランをしていると、レースにウエストハンドスタイルで挑んでいるときの周囲の視線が気にならなくなります。普段からもっと強烈な好奇の視線を浴びているからです。歪な道徳やルッキズムにいかに囚われているかにも気づける良い機会ともいえます。
これは上裸で走れ! と強制しているのではありません。
女性は無理だと思う方がほとんどだと思いますし(例えばブラトップや水着のみのへそ出しで走るなど工夫できます。海外の女性ランナーはよくやっています)、男性でも「お腹が出ているから恥ずかしい」などと周囲の目がどうしても気になる方もいます(本来そんなのまったく気にする必要は無いです)。自分にできる範囲で、快適に走るための工夫をしてみてはどうかと提案しています。
ジョグ中の水分は公園の水道で摂ります。水道がどこにあるか把握していればハンドボトルもいりません(レースでハンドボトルを使っているのは必然性があるからです。日頃のトレーニングで持つのは快適ではありません)
これはレース中の水分補給のトレーニングにもなります。どの程度の暑さや強度や走行距離で、どの程度の水分が必要になるか把握できるからです。街でのランなのでまず死なない安心感があり、結構攻められます。
山を走るときは水の補給がしづらいからハンドボトルと補給食を持ちます。レースでは低体温症などのリスクがありレインウェアなどの必携を持つ必要があるからウエストベルトを使います。
とにかく、常にできる限り「一番快適であることを心がける」と装備は自然と最小限になります。この行程を踏まえて、ウエストハンドに行き着くと、自分に合った様々な応用が効くようになります。

ウエストハンド率の高い関西勢との記念撮影(ウエストハンドがマジョリティ!?)
ウエストハンドの実戦的トレーニング方法
今まで書いたことを踏まえてウエストハンドの練習に移行できればいいのですが、「あー、めんどくせえ……宗教かよ……」という感想を持つ方がほとんどだと思います。
……悔しいですがその通りです。なんか政治的でもあります。でもマイノリティだからこそ声を挙げ、行動することが重要です。
面倒なことは置いといてとりあえず形からでもやってみる方法も書いておきます。
まず、ウエストハンドの利点と欠点をおおまかにまとめてみます。
・利点
軽い、涼しい
・欠点
手が塞がる、上手く走れない、お腹周りが窮屈
これらが実際にどの程度マイナスなのかプラスなのか実感することが重要です。欠点が実は大したことなかったりしますし、その逆もありえます。
どのくらい涼しいか実感してみる
まずザックを背負った状態で走ります。これが不快最大です。次にタンクトップで走ります。次に上裸になって走ります。これが快適さ最大です。
これでどれだけ快適になるのか実感できます。
レースではタンクトップにウエストベルトなんだから上裸になるのは必要ないと思いがちですが、快適の上限を知ることは重要です。いかにここに近づけるか目標ができますしイメージも湧くようになります。
次にウエストハンドで走ってみて、涼しいことによってどれくらい速くなるか、発汗量がどれだけ抑えられるか、心拍数がどれだけ下がるか、肩の負担が少ないか、など気になることを実感してみましょう。
これらは山で5時間以上、距離は50km以上は一度に走ってみたほうがいいです。ONTAKE100を想定するなら林道やロードの峠走でもいいと思います。
長時間続けていると効果やデメリットを実感しやすくなります。
ハンドボトルの腕振り
これが上手くいかないと、アドバイスを求められることが多いです。
一応具体的な方法はあります(もちろん、握らずに済むハンドボトルバンドを使用していることが大前提です。安くて簡素で丈夫なインナーファクトのボトルバンドは初心者から上級者までおすすめです)
まず、腕振りで手のひらが上を向いている方はハンドボトルに向いていると思います。ハンドボトルを持って腕振りをしていると自然とこの角度になるからです。
実際の振り方ですが、腕を大きく振ろうとしない――腕全体に力を入れて振らない――肘の先端だけに力を入れる――を意識すると疲れにくいと思います。これらは普段の腕振りでも同じです。要は基本ができていればなんでも応用が効くだけだったりします。
だらっと腕を提げて遠心力に任せるという方もいますが、私はこれだとかえって疲れてしまい、上手く走れません。
私としては、フォームを作るのが本質ではなく、50kmでも走ってみれば嫌でも最適化できると思っています。この相棒となったハンドボトルと嫌でも付き合っていかなければならないと思うと向き合い方も変わってきます。
この際に手を自由に使えないと不便だと思い込んでいたけど、練習していたら工夫を繰り返してどうにかなると分かったりもします。例えば、手の甲側にハンドボトルを移動させると(これはボトルバンドを使用しないと無理な動作です)、ものを一時的に持ったり、急な登りで腕押しもできると気づけたりします。転んでもボトルを先に地面に着けばクッションになってダメージが軽減できると実感できたりします。
一番有効なのが、あまり練習しなくてもレースで実戦投入してしまうことです。もう本当にこれでなんとかするしかなくなります。この方法はSNSに書き込んだのですが、実際に今回のONTAKE100でやってみて上手くいったという方がいました。
「100km走ってるのに腕の疲れがまったくないのが意外だった」と驚いてましたし、「これでウエストハンドという武器ができた」と喜んでいました。
このひとは、「獅子が我が子を崖に落としたら逞しく育っただけ」な可能性がかなり高いですが、一応成功例(生存例?)として紹介しました。
ウエストベルトの弊害
ウエストベルトに荷物を詰めすぎたり、サイズが合わずに締め付けが強いとお腹のトラブルになりがちです。
私は持ち物は最小限に、そしてウエストにあまりものを入れずに、ランパンのポケットを活用しています。
ウエストベルトを二重にしているひとがいますが、圧迫によりお腹のトラブルに結びつきやすいので非推奨です。単純に暑かったりもします。
話を聞いてみると、荷物をあまり減らしたくないけど背中を涼しくしたい、手が塞がるのも嫌という方が多い印象です。
トレードオフの話になるので難しいところですが、やはりお腹周りは詰め込みすぎず、ハンドボトルに慣れるのが最適解だと思います。
なんか見た目が美しくないな……と感じたら、その直感は正しく、やっぱり機能性が損なわれていることが多いです。
まとめ
とにかく自分なりの「快適」を目指しましょう。これが遠回りで漠然としているようで最短距離です。
ルッキズムや道徳などの社会のしがらみからも少し脱出できるかもしれません。
レースで使用した装備(抜粋)
フルメッシュウエストベルト
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冬に新型の防水タイプがでたのですが、今回は軽量で汗抜けもいい旧型を使用しました。バンジーコードも新型と比べると使いやすく、なにより丈夫なので信頼できます。
私は若干ゆるめのサイズを持っていて、前後荷物の量でフィット感を調整しています。
Nakedのジャストサイズが最強ですが、フィッティングがとにかく難しいです。長年使ってみて分かったのですが、2、3kgの体重増減があるだけで使用感がかなり変わります。
ハンドボトルバンド
https://shop.inner-fact.co.jp/?pid=152965433
構造が単純で丈夫なので信頼できます。ハードボトル用ですが、実はフラスクにも使えます。日常使いにもレースのサブにももってこいです。ひとつは持っていて間違いないです。
3000円以上する高級なボトルバンドは、確かに握りやすかったりするのですが、重かったり、余計なポケットが付いていたり、ヘビーユースしていると縫製が解けていったりして結局使わなくなっています。
Primeflex Water-repellent ランニングパンツ
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雨に打たれ続けた終盤はさすがに染みてきたのですが、小雨程度だと撥水性能が十分に役立ってくれました。よくAnswer4の3インチショーツも履いているのですが、今回はこのパンツで正解だったと思います。
このパンツは練習でも重宝しています。少し丈が長めの5インチなので練習に向かう行きの電車内でも使えて着替えの手間がありません。
ラミーソックス(5本指ミドル丈)+ガーニーグー
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後半、足元はずっとずぶ濡れでしたが、少し水溜りに入っていなければ、隙あらば乾いていく感触があり、笑ってしまいました。一度も塗り直していないのに足裏は相変わらずノーダメージで、豆もできる気配すらありません。大げさに言うと、ふやけすらほぼなく、レース前と変わりませんでした。
足裏ダメージなし記録更新です。これからも五本指ラミーソックスとガーニーグーの組み合わせは続けていきます。
レース装備
ウエストベルト:インナーファクト/フルメッシュウエストベルト
ヘッドウェア:インナーファクト / ネックゲイター、Salomon / S-Lab Speed Bob
ハイドレーション:Ultraspire/ハードボトル、インナーファクト / ソフトフラスコ
ハンドボトルバンド:インナーファクト/ボトルバンド
シャツ:インナーファクト / ひゃっほいタンクプロトタイプ
インナーパンツ:インナーファクト / インナーパンツ
パンツ:インナーファクト / Primeflex Water-repellent ランニングパンツ
シューズ:ASICS / トラブーコライト
ソックス:インナーファクト / ラミーソックス(5本指ミドル丈)
レインウェア:THE NORTH FACE / Strike Trail Hoodie
レインパンツ:OMM / Halo Pants
ライト:NEO 10R(頭)、Ultraspire / Lumen600(腰)
テーピング:インナーファクト / キネシオテープ
ウォッチ:COROS / VERTIX 2
ゼッケンベルト:ゴム紐xホチキス
ワセリン:ガーニーグー
クーポンコード
今回のレースで使用した下記のインナーファクト製品を5%オフで購入できます。
コードを使って購入していただくと一部筆者の収入になり、この先の記事執筆の応援になります。
クーポンコード:ontake2024
割引率:5%off
使用期限:2024年8月31日まで
対象商品
フルメッシュウエストベルト https://shop.inner-fact.co.jp/?pid=170725796
ハンドボトルバンド https://shop.inner-fact.co.jp/?pid=152965433
ソフトフラスコ ノーマル https://shop.inner-fact.co.jp/?pid=181652286
シームレスインナーパンツ https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2651562&csid=4…
ラミーソックス https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2431131&csid=0
Primeflex Water-repellent ランニングパンツ https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2651562&csid=10
ネックゲイター https://shop.inner-fact.co.jp/?pid=178996838
テーピング https://shop.inner-fact.co.jp/?mode=cate&cbid=2843801&csid=0…
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