超高速バトル!絶景の近江湖南アルプストレイルレース

昨年末に開催のレースレポです。
初めてのライティングで1カ月遅れの投稿となってしまいましたが、なにとぞ暖かい目でご覧いただければ幸いです。

絶景の中、急登を駆け上がり、下りをぶっ飛ばす。気分はまさにグレートレース!
近江湖南アルプストレイルレース完走しました。

年代別1位狙いだったので、総合3位でゴールできたのは、めっちゃ嬉しい。
24kmのショートレースで若い人たちに競り勝てたので
 「まだまだ伸びしろあるんちゃう」
と、50歳に向けての頑張る原動力と良い刺激になりました。

■前日まで
今回は何も節制せず、大会前日も日本酒を少々。12月は年末の挨拶回りでコーヒーを出されるので、ノンカフェインも断念しましたが、距離が短い分、スピードが落ちないようにウェイトコントロールだけは気を付けました。

■スタート
気温は低いが熱気ムンムン。シガウマラ族にどこまで戦えるか。とにかく初っ端から全力で挑んで、適わなければ撃沈するのみ。Aブロックゼッケンの選手たちは皆さん強そうだ。

スタートゲートは手作りの竹製、スタートの合図もホーンではなく運動会のピストル。地方ローカル大会の雰囲気の中、西村選手が存在するだけで、レースは全国レベルになる。

スタート位置はフロントロー2列目、先頭の西村選手に喰らいついていく。
と、思った矢先一気に離されて、あっという間に見えなくなった。

こんなに速いんか・・・

既に心拍はMAX、あかん、ペース落とそう。と思うのだが、抜かれたくないから落とせない。24キロくらい、このペースで押し切ってやる。
ちなみに、最初の3kmは438-436-355、足がもつれてロードなのにコケそうだ。
ロードの折り返しを過ぎ、いざトレイルへ。

■絶景トレイル
初の近江湖南アルプス。登って下りてきて、また登って下りてくる。ざっくりのイメージは関西のaroundシリーズに似ていると思ってたのだが、ドンピシャのイメージ通り。まずはちょっとした沢沿いを進む。まだ序盤なので濡れないよう慎重に、シングルトラックの登り緩斜面をリズムよく走る。岩やザレ場が多くなり、斜面の角度も急になるが、リズムは変えないように淡々と登りを消化する。気温は低いが、快晴の冬空。しかも前日の雨(雪?)で空気が澄んでおり、遠くの山まで見渡せる、絶好の登山日和。大勢のハイカーともすれ違う。


まさに絶景!(写真は大会HPより)

抜くときは後ろからしっかりと声をかけ、すれ違う時は立ち止まるように心がけ、それでも足は止めないようにいつものリズムを刻む。急斜面に差し掛かり、心拍数が上がる。このドキドキ感は山に恋をしている証拠だ。苦しいけど楽しい。トップ選手は既に見えなくなったが、前後には同じようなペースの選手数名と熾烈な順位争いを繰り広げている。心拍数がさらに上がる、この心臓が飛び出そうなくらいのドキドキは、周りの選手にも恋をしているのだろうか。

山頂付近に差し掛かると、琵琶湖の先に冠雪した山々が目に飛び込んだ。澄み切った空気を切り裂くように絶景が拡がる。山頂から稜線、そして下りに差し掛かり、心拍数は落ち着いてくる。オーバーペースで使い切った足は重いが、気分は軽い、顔がニヤけてきた。私は今、レースを存分に楽しんでいる。


苦しいのか楽しいのかニヤけてくる

■コースアウト
すれ違うハイカーやスタッフの方から5番目と6番目。といった具合に順位を教えてもらう。今日の目標は年代別1位なので周りの選手で自分よりオッサンがいないか気になるところだ。あと、絶対にロストは出来ない。このショートレースでロストすれば命取り。前後がバチバチに迫っているので山頂付近ではスマホで写真を撮る余裕すらなかった。

それでも補給は概ね成功していたと思う。初めてのコースだが、何となく登り、下りの気配を感じ、登りに差し掛かるポイントで上手くジェルを補給できた。今回の装備は500mlの水と、ジェル4本(+予備1本)、粉末のマグオン、塩分タブレット4個でジェル1本残したくらい。

一周目下りも終盤に差し掛かり、再び沢沿いの湿地帯トレイルが始まる。シングルトラックのコースでマーキングもしっかりされているので迷いようが無いのだが、後続選手との差が気になり、集中力が切れた瞬間、コースが急に泥濘になった。「あれっ、なんか違う」違和感はあるが、ペースは落としたくない。ヌカルミをズボズボ進むが、どんどん深くなる。「これは違う」振り返った時、すでに遅し、本コース上を4人の選手が通り過ぎていった。

しまった!

ロストとも呼べない、痛恨のコースアウト。汚れるはずのないコースで、私だけシューズが泥だらけだ。こうなったら、コース上の沢を避ける必要もない。何も気にせず、水の中をジャバジャバ進んでペースアップ、前方集団に追いついた。

■ファイナルラップ
エイドは2回ともスルーした。ロードの上りで1人をパスして、前には3人。コースアウトするまでは私が前にいたので抜けないはずはない。と、思いながらも明らかに自分より若い選手なので2周目でペースアップすることもあり得る。とにかく後方に食らいつき、隙あれば一気に抜き去ろう。足はもつのか。先ほどのロードの下りでふくらはぎに違和感があったが、行けるところまでいって、ダメなら撃沈。当初の作戦通り攻めるのみ。

前半の緩斜面登りを淡々と走り、急斜面に差し掛かった時、集団の先頭選手のペースが落ちた。先ほど抜いた選手が後ろから迫り、集団は5人、私は4番目なので前には3人。前の3人はペースが上がらない様子だ。

いける

「先行きます」と声をかけ、一気に3人をパス。その瞬間、ふくらはぎが悲鳴を上げるが、この悲鳴を周りに聞かせてはいけない。何事も無かったように平然とペースを上げ、後続を引き離そうとしたときに、マイア・ヒラサワのファイト・ウィズ・ラヴが聞こえてきた。

グレートレースの曲やん♪ありがとうございます!

マイア・ヒラサワの歌声がふくらはぎの悲鳴をかき消し、一気に山頂へ。そして再び絶景が拡がり、絶景の先には先行選手が見えた。

行けるところまで行く。

先行選手の足取りは軽そうだが、こちらも負けていない。追われる方より、追う方が強い。今季F1最終戦、アブダビグランプリのHONDAファイナルラップが頭に浮かぶ。気分はMAXだ。

先行ハミルトンのテールに付く、下りに差し掛かるが、こちらは翼の生えたレッドブル。先行選手とテールトゥーノーズで、猛スピードで駆け下りる。もはや自然落下スピードに近いのではないかというスピードで急登を下るが、意外と冷静で周りも見えている。登り選手が近づくと道を譲るために一旦停止。待ってる間はセーフティーカー導入の一時休止とばかり水分を補給し、再スタートに備える。頭は冷静だが気持ちは熱い。再びグリーンフラッグ、激しく競り合う、楽しくて仕方ない。どこまでもこの勝負が続けばいいのにと思うほど、やる気と元気がみなぎっていた。ハミルトンから「元気ですね、おいくつですか?」と聞かれたので、思わず「MAXです」と答えそうになったが、47歳という年齢を伝えると驚かれた。

2周目の下りは1周目の上りなので、後方スタートの選手たちとすれ違う時に、「3位と4位ですよ」と教えてくれた。3位?!、想定していなかった順位に戸惑う。

このまま4位でゴールすれば目標の年代別1位は確定だが、ハミルトンを抜けば総合3位になれる。残りは6キロくらいだろうか、マグオンの粉末を投入して、最後の上りで勝負をかける。ふくらはぎはいつ鳴き出してもおかしくない状態だ。今季トレラン最終戦、全てを出し切ってゴールしたい。登りで先行ハミルトンをプッシュする。

テールトゥーノーズでプッシュ

「お先どうぞ」急登に差し掛かった時、前を譲ってくれた。行くしかない。足ではなく全身の力を振り絞り、登る。これを登り切れば最後は下りを残すのみ。ここまで20kmの表示が見えた。残り4キロ、後続選手は自分より若く、スピードのある選手ばかりだろう、下りでも手を抜けない。あそこを曲がればゴールが見えてくる。これが最終コーナー、最終コーナー・・・最終・・・コーナーが来ない!緩やかだがほぼ平坦の林道、なかなか最終コーナーが見えてこない。

■ゴールへ
苦しい、もういい、よくやった、年代別1位でもいいじゃないか。脳内に天使のような悪魔のささやきが聞こえてきた。そのささやきをかき消すように走る。最後まで絶対に諦めない、「最後は根性」NHKグレートレースで放映された奥信濃100で西村選手はそう話していた。その西村選手はとっくにゴールしているだろう。破裂寸前のタイヤのようにふくらはぎがピキッ、ピキッと音を立てる、オランダ堰堤が見えた。今度こそ最終コーナーだ。後ろを振り返る、後続はいない。最後は根性、その言葉の通り逃げ切ってゴール。子供たちゴールテープを持って出迎えてくれた。ローカル大会ならではの最高の演出だ。

逃げ切ったー

汗も、涙も、鼻水も全てを出し尽くして3位でゴールできたご褒美は、西村選手と同じ表彰台に立てたこと、そしてカラカラになったカラダを潤すエビスビールだった。

ヱビスいただきましたー

絶景の近江湖南アルプスレース、地方ローカル大会だが、私の中でのグレートレースが幕を閉じた。ありがとう2021年!来年こそ本当のNHK出演を目指したいと思います。

河畑和宏河畑和宏

河畑和宏

脱メタボ目的で走り始めて、ひゃっほい氏のblogに多大な影響を受けたオッサンランナー。2019年UTMF→かとぶん→彩の国の3週連続100mileの翌週に美作ベルピールで優勝したのでbellと名付けてもらいました。フルベスト2'56"17。2019年のONTAKE100kで鏑木さんより先にゴールできたのが最高の思い出

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コメント

    • 平石 真太郎
    • 2022.01.25 10:05pm

    bellさんの諦めず前に進む心意気は見事です。しかも上位を争いながらもトレイル マナー厳守なところが正に男気!競り合いを楽しんでるから顔がニヤけてくるんですかね。上位を争っているランナーからまさか歳を聞かれるとは、その返しが「MAX」なのかいと初ライター記事とは思えない落ち着きを感じました。これからの記事も楽しみにしています!

    • 河畑和宏
      • 河畑和宏
      • 2022.01.25 11:13pm

      コメントありがとうございます!
      今年もニヤニヤしながらヱビスビール狙いますのでよろしくお願いします!

    • Kumainkobe
    • 2022.01.26 8:59am

    いつもヤマレコで楽しく拝見しています。引き込まれるような臨場感ある表現力と極限にまで迫るストイックな一面を、ユーモアで包んだような河畑さんのレコのファンです。小生は50代ですが還暦以降も、河畑さんをライバルと密かに思いつつ頑張ります。これからも楽しみにしていますね。

    • 河畑和宏
      • 河畑和宏
      • 2022.01.28 12:41pm

      Kumainkobeさん
      お褒めのコメントをいただき、ありがとうございます!
      いつも、身に余る思いでニヤニヤしながら拝見しています。
      これからも思いついたことしか発信できませんが、ご覧いただけてることを励みに頑張ります!

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